2020年は、三島由紀夫没後50年。三島は割腹自殺の1年前、東大全共闘の依頼に応え、東大駒場900番教室での討論会へ登場していた。その討論会の記録映像と、関係者・識者のインタビュー。


三島は1960年代から政治的発言や政治色の強い小説を発表し、私的民兵組織「盾の会」を結成。おりしも同年、安田講堂事件が起きていて、いつまた暴動がおこるかと緊迫した状況で、三島は警察の警護も断り、ひとりで壇上に上がった。


天皇主義の三島と、左翼思想の東大全共闘。対立以外に何があるっていうこの組み合わせ。ところが観ていると、知性とユーモアの応酬、緊張感がありながらも、ときに会場は爆笑に包まれてすらいた。い、意外…!!


ハッキリ言って、登壇者がみんな頭良すぎて対話の半分ぐらい意味がわかんないんだけど(笑)、「言葉の有効性」を信じてる人たちが集まっている、というのはひしひしと感じた。真逆の思想、それでもお互いの理解と受容への道をあの手この手で探っていくスリリングさ。


それで三島が、ぜんぜんエラソーじゃないのがよかった。三島由紀夫って当時、一挙手一投足が注目される、押しも押されぬ文学界の巨匠だったはずなのに、まだ年若い学生たちを前に、「君たちの熱情を信じている!」って何度も言うんですよ。「君たちの話、ちゃんと聞いていますよ」っていう態度を、1ミリも崩さない。お互いの思想は相いれないけれども、リスペクトだけは忘れないでいよう、と。こういう討論会って、久しく見なくなった。


もしもあのとき、三島と東大全共闘のあいだに、言葉を介した和解のようなものが生まれていたら、三島の1年後はもっと違った形になっていたかもしれないなあ、と思う。

 

 


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