日本の国民的作家・夏目漱石の初期の作品。有名な冒頭は知っていたけど、通読しての感想は、「何このヘンな小説!」。


というのも、ストーリーというほどのもんはほぼなし。主人公の絵かきが、山奥の温泉にやってきて、人の世のいきづらさにペッとつばを吐き、ぐちぐち文句をいいながら、詩情とは、絵心とは何かをとくとくと説き、そして絵を…描かない(笑)。一枚も描かない!!いつかくんだろうと思ったら、描かないまま終了。でもそこが、斜に構えまくっててところどころ笑っちゃうんだけど。「坊ちゃん」に似たユーモアもあるし。


この小説、今ではあまり見ない言葉や、中国・イギリス・海外の偉人の引用などが怒涛のように詰め込まれ、新潮文庫だと注解の数がなんと330個!!私の理解力でどれだけ読めてるか、正直わからないんだけど、でも冒頭の「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。兎角に人の世は住みにくい」からはじまる最初の段落は、何度も読み返したいくらい言葉の果汁が濃厚。


この世界観って、ちょっと「方丈記」っぽいですよね。こんな住みにくい浮世を、多少なりとも住みやすくしてくれるもの、それこそが芸術である、と。詩を読まない人の、絵を描かない人の、つまり凡人の心にもふっと生まれる、なにかを美しいと思う気持ち。それを大切にしていこうじゃないの。それはわかったからはよ絵を描け(笑)。


 

 

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