韓国人作家、チョ・ナムジュさんのベストセラー小説。信頼してる斎藤真理子さんが訳してるし、TBSラジオのアトロクやsession22でも紹介されて、今回読むのをとっても楽しみにしていた。

 

私は生物学的には男性なんですが、読んでいて、「男性」には安易な共感を許しません、という、徹底的な姿勢がすごくよかった。この物語のなかで、どんなに主人公を理解しようと、寄り添おうとしても、男性というだけで、その声はかき消され、権利自体が無効化されてしまうような……。そして、この疎外感はそのまま韓国で、もしくは日本で、世界中で、女性たちが、女性というだけで強いられてきた体験なのだと思う。ザ・ミラーリング!

 

ジヨンの母親が、女の子を産んでしまったことを謝罪する場面とか……、もう本当に、読んでてつらい。

 

この本によると、1980年代、韓国では「家族計画」という名のもとに、出産前に胎児が女の子だとわかると堕胎する、ということが容認され、90年代初めには、出生性比のアンバランスが頂点に達していた。

 

……という話を、ちょうど中国在住の台湾人と会ったので話したら、こう返ってきた。

 

「中国でも同じ問題が起こって、出産前の性別判定は禁止された。それでも男児のほうが喜ばれるのは変わらないから、妊婦は血液を採取して香港やマレーシアへ秘密裡に送って胎児の性別判定をしてもらい、信頼性も定かではない結果を見て堕胎する」

 

こんなことになってたら、この差別、もう生まれるよりもずっと前からさかのぼってやり直さなきゃいけないじゃん。でもそれは絶対に叶わない。そして、叶わなくしてきたのは男性全員。この絶望点から、それでも始めるとしたら、まずは何がてきるのか。


と、いうことを考えるきっかけになるはずなので、もっとたくさん読まれてほしい!

 

 

 

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●拙著でてます