韓国の作家、キム・エランのデビュー短編集。

はじめのほんの数行を読んだだけで、「この作品世界は絶対にだいじょうぶ、おもしろい」と信頼させられてしまうことがある。これは、そういう圧倒的な小説のひとつ。

主人公の私は、母と2人暮らし。父は、母と私を捨てたのではなく、ランニングに出かけているのだ、と想像することにした。父は福岡をすぎ、ボルネオ島を経て、ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルのトイレに立ちより、グアダラマ山脈を越えて、走り続けるーー。

途方もなく長いランニングのあとで、私が父を許すとき、想像上の父に、私はあることをする。

グッとくる言葉の津波のような本でした。私はとりあえず「グッとくる」ところに付箋をはり、あとから読み返しながら「この文章のなにがグッときたのか」を考えながらまた読むのが好きなんですが、その付箋の数が史上最高レベル。

キム・エラン、要チェックです。