社会学者・岸政彦さんの短編集で、第156回芥川賞候補作。
一枚に見えるレンズが、少しずつ少しずつ重なったままずれていって、何枚ものレンズを通して見える景色が、同じだったり違ったりして、短くて鮮やかな手品を見たような小説でした。
違うのは働く場所や住む場所、出身、恋人。同じなのはカップめんやビニール傘といった文化的・経済的な貧しさと、それでも失われない、人間の最後の思いやりとやさしさ。
自分たちのせいではない絶望を背負うしかなかった、無数の若者達の毎日に淡々と筆をあてていく、こういう手触りの作品、すごーく好きだなぁ。
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