直木賞作家・出久根達郎さんの掌編、短編をまとめた本。

以前、群ようこさんの対談でおみかけしてから、出久根さんの人間をみつめるまなざしにほっこりしてしまい、いつか小説を読むのを楽しみにしていました。

亡くなった妻の口癖が、いつしか娘に移ったこと。

水汲みにいくとき事故に遭わないように、妻から真っ赤なポリタンクを持たされているおっさん。

はじめて携帯で話してみたら、妻の声が十歳は若返って聞こえて、びっくりしたこと。

遠く離れて暮らす、読み書きを習わなかった母からの手紙がほしくて、往復葉書に○か×かだけを書いて返信するよう頼む息子。

ただそれだけのことなのに、出久根さんにかかれば、永六助さんのラジオあたりで読まれるような、人間くさくてちょっといい話にくるりと早変わり。名人芸をみた、という感じがする。

次は出久根さんの出世作、『本のお口よごしですが』と、直木賞受賞作『佃島ふたり書房』を読んでみたい。

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