むかし描いた絵本の続きですニコニコ

改めて全文を載せ、

文字が小さすぎますので絵外にも

文字を書きました。

 

 

 

 

………………………✂️………………………

 

 

 

 

注文の    多い    料理店 あらすじ

リンク先の中段あたり。

 

 

 

 

 

 

 

故・宮沢賢治氏に敬意を表して

 

注文の少ない料理店

 

 

 

 人間を捕らえて食おうとした山猫の一族は

二人の若い紳士の白熊のような犬たちに

一網打尽にされました。

 

残ったのは五匹のみでした。

 

二匹のたくましい山猫と

山猫の大親分でいる雌猫と

そして産まれたばかりの

雌山猫の孫が二匹だけでした。

 

五匹は何とか今日の餌でもと

森をうろうろとしておりました。

 

 

 

それはだいぶの山奥でした。

先陣を切ってきた大親分である雌山猫も、

ちょっとまごついて引き下がってしまいました。

 

それにあんまり山がもの凄いので

そのたくましい山猫が二匹いっしょに

めまいを起こしてしばらく唸って、

泡を吐いて死んでしまいました。

 

「これでもう私たちを守ってくれる者はいない」

 

 

 

大親分は二匹の死骸に

枯葉を乗せ、じっと祈っておりました。

 

その時ふと後ろを見ますと

立派な西洋作りの家がありました。

そして玄関には

 

RESTAURANT

西洋料理店

IN THE FOREST HOUSE

森の家軒

 

という札が出ていました。

お親分である雌山猫は大きなため息をつきました。

 

それはこれから起こる事が

容易に想像できたからです。

 

 

 

大親分の雌山猫は店の前にある

大きな切り株の上に立って二匹の孫猫に言いました。

 

「にゃあ。にゃあ。お前たちは

まだ人語が理解できないだろうから言っておく

 

この先、私は無事ではいられない。

これは私が人間に負けた結果であって

 

お前たちは決して人間を憎んではならない。

そこのところをよく覚えておくのだよ」

 

 

 

大親分である雌山猫と孫猫の三匹は

そのレストランのドアをゆっくりと開けました。

 

ドアにはもう『本日貸切』の札がついていました。

 

中に入るとたくましい西洋人のコックが

フライパンを片手に壁に寄りかかって、

こっちをじっと見ていました。

 

 

「にゃあ。にゃあ。私どもは今日の飯にもありつけません。どうかお恵みを」

 

たくましい西洋人のコックは言いました。

「もちろん。助けてやろう。

その子猫どもの面倒はみてやる。

だが人を食おうとしたお前は助けるわけにはいかん」

 

「わかっていますとも。

私はどうなろうが構いません。

この子らの面倒を見てやってください」

 

 

 

「よかろう。私は楽器が好きだ。

お前には三味線になってもらおう。

その代わりその子猫どもの面倒は一生見てやる」

 

「ありがとうございます。

さ、私を楽器にしてくださいまし」

 

小さな孫猫二匹を残したまま大親分である雌山猫は

奥の部屋へと入って行きました。

 

 

 

それから5年後。

 

たくましい西洋人のコックは客のいない時には

酒を飲んでレストラントの前の切り株に座り

楽器を弾くことがありました。

 

ヴァイオリン。チェロ。フルート。

 

 

森は静かです。

でも三味線を弾くと………。

 

二匹の山猫を中心に森中の獣たちが集まり

いつまでも、いつまでも、

その音色を聴いておりました。

 

 

 

 

(おわり)

 

 

 

しばらく不定期になります。

またよろしくお願いします。

 

 

 

散文ですニコニコ

 

 

 

 

………………………✂️………………………

 

 

 

 

 

私は私らしくあるために

私らしく考えた

 

 

貴様には個性がない

美貌もない

運もない

 

 

いやはや何とも

私らしいではないか

 

 

 

 

私は私らしくあるために

私自身を解剖した

 

 

貴様の個性は劣等感だ

しかし見てくれはそこそこ

悪運もある

 

 

何とも私らしいではないか

 

 

 

 

結局私らしさを考えること自体が私らしくあることであり

それを放棄する時が命の瀬戸際

 

 

 

 

だけど さぁてぇ レディースエーンジェントルメン

 

 

蛇らしく考え、蛇を行う蛇🐍をどう思うかい

それは愚の骨頂 何も考えなくても蛇は蛇

 

 

我々は我々を考える時に最も愚かになる

そしてそれを文字にする事はもっと愚か

 

 

字は歩き

命は乾き

残るは塵

 

 

始まらないと言う名の幸福

安堵

正義らしきもの

 

 

 

 

そこには私がないだろう

 

 

 

 

しかしほら

 

 

 

 

 

 

やはり私の勝ちだ

とても私らしい

 

 

 

 

  

 

目次へ

 

 

「赤刈」を読んでくださった方ありがとうございました。

 

本作は以前書いた1話読切のホラーを短編化したものです。

 

最初はT字路にある六地蔵の一体に、悪霊が取り憑いたみたいな話だったんですが、

いつの間にか妖怪の仕業からの日本神話の神の恋まで行っちゃいました。

 

自分はいつもハッピーエンドが多めですので今回はバッドエンドにしてみました。


今回は関連図ではなく時系列図を書いて進めました。

人死にすぎでは



だいぶ頭まとまりましたが各話の長さがまちまちになってしまいましたね。


またよろしくお願いします。

お付き合い頂きありがとうございました。

 

 

 

 

合成アプリでパシャ

あらかわいい

 

 

 

 

 

「何よ!!何が目的なの!!!!」

 

 

 

すると神木の根、苔むした石に切れ目が走り、文字となった。

 

 

 

さ く や

 

 

 

「さくや??何さくやって?………妹の佐久夜毘売(さくやびめ)のこと?」

 

塗何苔(ぬりなこけ)がゼエゼエとした声で返した。

(ゆり子の所にいる咲夜だ。石長比売(イワナガヒメ)の依代(よりしろ)となる)

 

 

「なに??依代って?」

(咲夜は佐久夜毘売(さくやびめ)の子孫だ。石長比売(イワナガヒメ)様が転生される器だ)

 

 

「………醜くて瓊瓊杵尊(ニニギ)元を追い返されたから、妹の子孫に転生して仕返しをするのね」

(11人死ぬ)

 

 

「それはあと、私とゆり子と咲夜ちゃんね………」

 

 

緑の鬼さん言いよった♪

赤の鬼さん食べよった♪

青の鬼さん叱られる

 

禊を持っても入られぬ

命を持っても追い返し

 

 

 

 

咲いた夜にはやり直し

 

 

 

 

 

やり直し

 

 

 

 

 

これは………最初っから罠だ。私をここに導くための………。

 

 

私かっ!!私なのか!!私が真也さんの死に疑問を持ったから………。

修也さんの話にのったから………。

修也さんは死んだ!!

 

館山がインリンを呼び出して………。

二人は死んで………。

 

堺ゆり子のところに咲夜がいた!!

 

 

こいつらの狙いは最初から咲夜だった………。

 

 

私か、私か、私が三人を殺したのか!!

ああ、何で気づかなかった、なんで頭を突っ込んだ………。

 

 

T字路の遺体だけ腹を割かれていた。

あれは私を釣るためだ!!

 

 

なんで気づかなかった………。

嗚呼

 

 

真也さん修也さん、館山さん、インリン………。

私が殺した………。

 

 

だけど今、咲夜を捧げないと母と姪も死ぬ!!

私はもう悪魔にでも何にでもなろう。

 

 

ゆり子からの電話だ。

 

 

ミッチー??大丈夫?

うん………大丈夫。

 

 

良かった、電話って誰からだったの?

うん………。気にしなくていい、ねえ、ゆり子、今そこにいる子って誰。

 

 

だから咲夜ちゃんといって、親戚の子供。

………特別な子でしょ?

………。

 

 

もう隠さないで、その子はあなたたちの一族が守らねばならぬ運命の子でしょ。

………いや、私も、深くは知らない、でも何があっても守れって………。

 

 

インリンを殺してでも?

………。そういうわけじゃなかった。

 

 

ゆり子。よく聞いて。

………うん。

 

 

その子が助かるためには、

………うん。

 

 

私たちの命がいるの。

………うん、うん。

 

 

今からこっちに来て。咲夜はそこにいて大丈夫。ご先祖様が守ってくれる様、仏壇の前に座らせておいて………。

うん………今部屋をでたよ。親戚にも咲夜のことを話しておいた。

あ!!………ああ、聞こえた。

 

 

マンションの植え込みの苔からだね。なんて?

みがわり、だって。

 

 

気にしなくていい、塗何苔(ぬりなこけ)とはもう話がついてる。

 

 

それよりうん、どこまで行けばいい?

………「駅ワカル」のアプリある?

 

 

立ち上げたよ。

 

言うね、静岡県の三島駅。

 

うん、うん、

 

 

「検索」押してみて

 

 

あ。

今タップしたとこ赤い!!
赤いよ!?
ぁあぁあああああぁ

 

 

 

 

(よくやった。ゆり子は死んだ。咲夜を引っ張る)

 

 

小学生の咲夜は仏壇から塗何苔(ぬりなこけ)によってここへ引っ張られた。

咲夜は何もかも察し、あきらめて受け入れているように見えた。

 

 

石長比売(イワナガヒメ)、依代が届きました。正真正銘の佐久夜毘売(さくやびめ)の子孫です)

 

神木の下の苔むした石からおびただしいほどの苔が生え、咲夜をすっぽりと包んだ。

 

 

そしてしばらく鈍く光った後、苔がポロポロと落ち体の透き通った少女が現れた。

そして口を開いた。

 

 

「ちと小さいな」

(まだ年はもいかぬ少女です)

 

 

「共に育つだろう。女、ご苦労であった」

「これで母親と姪は」

 

 

「知らん、儂は生かせとも殺せとも言っておらん」

(彼らは赤を手放した様です)

 

 

「え?死んだの………?」

そこへ割れた大石から苔むした六本足の大馬が現れ、石長比売(イワナガヒメ)を乗せた。

 

 

「人は神のために生きよ。それこそがお前らを尊くする。さて、邇邇藝命(ニニギ)よ。其方はどこにおる?」

石長比売(イワナガヒメ)と六本足の馬は星空へと駈けて行った。

 

 

「11人死んだ………くぅうううううぅうぅぅ………。みんな死んじゃった、私が殺した………ぁあぁあ」

 

 

塗何苔(ぬりなこけ)が言う。

(人間には俺も神も殺せない。俺と子を作るか?子はその力で石長比売(イワナガヒメ)に一太刀与えうるかも知れぬぞ)

 

 

 

 

 

 

 

 

この化け物どもめがっ………!

 

 

 

私は赤いピアスに手をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(終わり)

 

  

目次へ

 

 

 

 

「そいつはどんな妖怪なの??」

【妖怪じゃない………神ですわ】

 

 

「神って………」

 

 

【コケムスメとは日本神話における神、石長比売(イワナガヒメ)のことですわ。

 

岩石を司り、健康長寿のご利益があるといいます。

 

しかし天皇家の祖先である天照大御神(アマテラス)の孫、瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が地上に降りたとき、

 

父である大山津見神は美しい妹の木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤヒメ)と一緒に嫁へやったのですが、

 

瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)は石長比売(イワナガヒメ)を醜いと言い、彼女だけを大山津見神に送り返しましたの】

 

 

「ひどい話」

【その結果、子孫である天皇家は短命、といっても現代の人間の寿命になったと言われていますわ】

 

 

「その神が私たちに何の用なの」

【わからない………塗南苔(ぬりなこけ)を捕まえて聞くしかありませんわね】

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

神社への石段は闇に包まれていた。

月以外なんの明かりもなかった。

波の音が近く聞こえた。磯の香りがする。

 

 

「これって普通の神社よね??誰もいないし暗い」

【塗何苔(ぬりなこけ)が結界でも貼ったのかもしれませんわね】

 

 

急な石段を登っていると、奥の社からゼーハーゼーハーと今にも止まりそうな吐息が聞こえてきた。

私は見上げてギョッとした。

 

 

象よりも大きい、馬鹿でかい灰色の男がいた。

大男かとは思っていたが、その倍以上はある。

顔や尻は出っ張っている。目はギョロリと飛び出していた。

 

 

黄色い腰布を巻いていたが、先っぽは魚のようにとんがっている。

よく聞こえるがゼエゼエとした声で私に言った。

 

 

(こい)

「どこへ?」

 

 

(こい)

………こいつが8人殺したか!!!

 

 

本殿への急な石段はそれ以上登らず、私は少し逸れた雑木林に連れて行かれた。

 

 

そこにはしめ縄をした大きな神木があった。根には苔むした石を抱えていた。

塗何苔(ぬりなこけ)はその右に鎮座し、首を垂れた。

 

 

私はすぐに神木へガソリンを撒き、ライターを手に取った。

「もう誰を殺すのもやめなさい」

 

 

塗何苔(ぬりなこけ)が首を垂れたまま言う。

(人では神を殺せない)

 

 

そうするとみるみるガソリンが地面に染み込んでいって、何も香りがしなくなった。

そしてライターを持つ私の手が苔むしだした。

ひどい激痛が走った。

 

 

いきなりスマホが鳴った。

SNSではなく電話回線の方が鳴った。

 

 

「母からだ………電話だ………ゆり子、一旦切る」

私は右手の苔を払いながら電話に出た。

 

 

【道代?】

「………母さん??」

 

 

【うん、あなたねえ、前に真也さんが変な声聞いたって言ってたじゃない】

「うん………??」

 

 

【私もいま変な声聞こえた気がして。みちよ、ってさ。それで電話してみた】

「あ母さん………今何してるの?」

 

 

【姪の勇気をおんぶしてるわよ】

「………何か赤いものに触った?」

 

 

【ん………?抱っこ紐は赤いわよ】

「お母さん、よく聞いて、私から連絡あるまで、勇気ちゃんを離さないで」

 

 

【もうお風呂だよ】

「………離さないで!!」

【どうしたのお前………】

 

 

「赤いものから離れないで………絶対に、絶対おんぶ紐とらないで」

【あなた大丈夫??】

 

 

私は電話を切り鼻を啜って狼狽した。

何だこれは?何が起きている?

 

 

「………どうしたらいいの。私の命を捧げればいいの?」

塗何苔(ぬりなこけ)は黙って首を垂れたまま。

 

 

 

 

「何よ!!何が目的なの!!!!」

 

 

 

 

すると神木の根、苔むした石に切れ目が走り、文字となった。

 

 

 

 

 

さ く や

 

 

 

 

 

 

(終話へ)

 

 

  

目次へ

 

 

 

 

私は東京から静岡県の南伊豆まで車を走らせていた。

夏も終わりに近づいた林道は一寸先が闇だった。

 

いったい塗南苔(ぬりなこけ)の呪いで何人死んだんだろうか?

 

 

犠牲者A男

犠牲者B女

犠牲者C男

吉岡川乃

 

小野寺真也

小野寺修也

館山恭一郎

インリン

 

 

………8人死んだ。

あと3人死ぬ。

 

だけど私とゆり子を入れても10人………1人足りない………??

 

 

私はドリンクホルダーにスマホを突っ込んで話していた。

 

「ゆり子、聞こえる?ゆり子?」

【………聞こえますわ。ただ、疲れました】

 

 

「インリンのことはよくわかる………でも今ここで手を抜いたら私たちも殺されて、塗南苔(ぬりなこけ)の思い通りになるのよ」

【貴方にツインレイって言ってもわからないでしょうね………私とインリンは魂の片割れでしたの】

 

 

「だからっ!今それを考えてたら負けなの!!」

【何が負けなのよ!!!何が勝ちなの!!!???】

 

 

「いや………そういうわけじゃないけど。ところで今あなたのところにいる女性は誰?」

【女性………いや、親戚の女の子ですわ。まだ小学六年生。両親が海外に行っているから預かっているの】

 

 

「そか。その子を入れると11人だけど………でも無関係か」

【その子を入れると??なんなのあなたさっきから!?】

 

 

「いや、そうじゃないよ。私は、私とあなたとそこの子を助けたいだけ。それが勝ち、だよ」

【………今向かっているのは雲見浅間神社。更背辻(きぜつじ)の石像が塗南苔(ぬりなこけ)の本体じゃないとすれば、あと考えられるのはそこですわ】

 

 

 

【祀られているのはコケムスメ………】

「そいつはどんな妖怪なの??」

 

 

 

【妖怪じゃない………神ですわ】

 

 

 

 

(つづく)

 

 

 

  

目次へ

 

 

 

 

インリンは列車の下敷きとなり、どんな姿勢になっているのか、人間の形を保っているのか、何もわからなくなった。

もう助けるとかいうレベルではない。

列車は停止し、先頭から駅員が降りてくるのが見えた。

 

 

しかし私は逃げなければならない。真也さん、修也さん、館山、インリンの事故死?において私は重要参考人だ。

座して待てば確実に捕まる。そして必ず呪いを受ける。

そうすると死を待つだけの身となる。赤ペン捺印ひとつで死ぬ。

 

 

私は東京方面に車を走らせた。

 

 

【ミッチーさん、もう手を引いた方が】

「何言ってるの!インリンもやられたのよ!塗南苔は11人まで殺すと言ってるし」

 

 

【でも………私の勘ですけども、ぬりなこけは何らかの手先だと思いますわ】

 

「誰!」

 

 

………はっきりしないですが】

「誰?そいつも妖怪なの??そいつと塗南苔はどこにいるの!?」

 

 

【多分………静岡県南伊豆。行ってどうしますの??】

 

 

「目的を聞く………あ、ほら聞こえた」

【なんですって?】

 

 

『来い』だってさ。さーてもう赤いものは触れられない。あれを手にいれるまではね」

 

 

【どこに向かうの?】

「新宿の小田急百貨店」

 

 

【小田急??】

 

 

 

午後の新宿小田急百貨店1F

フロア全体にアクセサリー、コスメ、ブティックが並び沢山のジュエリーがガラス戸の中に置かれてある。

香水の香りがあちらこちらからしたが、品質の高いものからなのか混じり合っても不快には感じなかった。人間はここぞっと言う時、視覚も嗅覚も上がるのだと思った。

 

 

 

【貴金属を買うの?】

 

 

「そう。以前、真也さんが選んでくれたピアス。正直私はダサいと思っちゃって、それ以上おねだりしなかったの。そうそうこれ。すみませーん、これください、つけて帰りまーす」

 

「在庫の分を消毒いたしますね。アレルギー等は大丈夫でしょうか」

 

 

 

「全然大丈夫です。ほら、ねえ、カメラ映像だすよ、見てみ。ゆり子」

 

【わ………あー!!これって。もしかして!!】

 

 

 

「そう、耳の穴への挿入部分も赤でできてる。真っ赤なピアスなの。これをつけると………ほら私いま、赤に触れた。だからこの赤いピアスを外したら私は死ぬ。だけど、外さなかったら………

 

image

 

 

 

【ぬりなこけの呪いに関しては無効!無敵!】

 

 

 

………そう!(やられっぱなしでいられるかっ)」

 

 

 

 

 

(つづく)

 

 

  

目次へ

 

 

 

 

明け方。私たちは静岡県某市にある更背辻(きぜつじ)に着いた。

 

そこは畑に囲まれた二車線の道路に、登り下りの線路がかかる十字路だった。

 

三方は畑、一方は森林だったが学校のグラウンドほどしかなく、こじんまりとした森だった。その奥には古い家々が山の麓に小さく並んでいた。

 

 

「これだねっ」

そう言ってインリンは線路脇のバスケットボール大の石を指差した。

 

 

「人間の顔に見えるね。ここは文字かな………元?っ」

堺ゆり子がSNSを通してスピーカーの奥から言った。

【元文でしょうね。江戸中期の元号です】

 

 

「その頃からあったのね………。なんで今更呪いを?てか、塗南苔の本体?なのに全然苔むしてないね」

「この線路ができたせいで日当たりが良くなりすぎたんだっ」

 

 

「それで復讐を?遠く離れた東京都まで?」

「この路線は東京まで繋がってるっ」

 

 

「森に返して自由にさせてやろう。また苔むすように。じゃあ掘り起こすねっ」

「これで収まるのかな」

 

 

「わからない。でも少なくとも燃やすものは無っ」

「供養か………」

 

 

私たちは森にはいった。

朝日が立ち込める、幻想的な森だった。

昼にもなれば木漏れ日があるのだろう。

 

 

「ここが良いだろう。苔ばかりだ」

「ぬりなこけさん。これで静まってください」

 

 

「車に戻ろう。警察にも出頭しなきゃいけない」

「………てか。インリン、普通に話せるんだね」

 

 

「天然のふりしてる方が色々と都合がいい。ゆり子、塗ちゃんの石を苔むせるところに埋め直したよ。焼くとこなんてないくらい不憫なものだったよ」

【それが今のベストだと思います】

 

 

「今からボクとミッチーは出頭する。迎えにくる準備だけはしといて………あ」

【伊織?】

 

 

「………聞こえてしまった。ゆり子、すまん。今までありがとう。愛してる。咲夜ちゃん。そこにいる?咲夜ちゃん!」

【は、はい!】

 

 

「ゆり子を頼むよ。今は咲夜ちゃんにしかお願いできない」

【はい………】

 

 

「………咲夜って誰???」

【え?え?どうしたの伊織】

「愛してる」

 

 

そう言って伊織は通話を切った。

「声を聞いたの??」

「さあて………。27、だとよ。何だ27って」

 

 

「さあ………。まさかここで27人死ぬってこと??」

「まあそうだろうな。でもどこで………」

 

 

カンカンカン………。

 

 

「あれしかないわな」

 

そういって伊織は全速力で走り出した。

向かう先は………更背辻(きぜつじ)の踏切。

線路上には赤い石があった。

 

 

「ゆり子を頼んだよっ………」

 

 

インリンは線路上に飛び込んで赤い石掴んだ瞬間、黒い塊となった。

 

 

 

あと3

 

 

 

(つづく)

 

  

目次へ

 

 

 

 

こんな田んぼの真ん中の停留所で待ち合わせ?

消え入りそうな街灯。後は真っ暗。

カエルの声しか聞こえない。

 

 

そこへインリンは白の軽自動車でやってきた。

「乗ってーっ」

 

 

妙にふらふらとする運転をしながら、インリンは前を見据えて聞いてきた。

 

 

「タテちゃんは苦しんだ?」

「ううん。眠るようにして死んだ」

 

 

「死に顔は?」

「見れなかった」

 

 

「そっか。あ、ちなみにこの白の軽自動車、なるべく赤がないものを選んだけど、シートベルトの差し込み口は全車共通、赤だからね!!声聞いた後は気をつけてね」

「はい」

 

 

「さて、これからの予定」

「うん!」

 

 

「何だか腹括ったような顔だねっ。まあ次はボクかミッチーだもんねぇ」

「どこにいくの?」

 

 

「神奈川県にある更背辻(きぜつじ)という十字路」

「何があるの」

 

 

「苔の本体」

「………??ガソリン漏れてない??」

 

 

「漏れてないよ。積んでるだけ」

「何するの」

 

 

「正体を突き止めた。やっぱり妖怪だ。後はゆり子から聞いて」

インリンはそう言ってスマホからSNS通話に繋ぎ音声をスピーカーにした。

 

 「ゆりにゃ♥️噂のミッチーだよ」

【初めまして。聞こえマスですか?】

「はい。綺麗にきこえます」

 

 

【伊織と主従関係にあります堺ゆり子と申します。よろしくお願いイタしますわ】

「初めまして。犬立道代と言います。私は4人目の犠牲者、小野寺真………」

 

 

【率直に申しまして今あなた方を攻撃しかけているのは、幕末に描かれた妖怪絵巻(百妖図)に描かれている妖怪、塗南苔(ぬりなこけ)かと思われます。

 

なぜこの者が攻撃してくるのかは分かりません。考えられるのは犠牲者の1人が何らかの禁忌を犯した結果、関係者全員がまとめて◯されるのかも知れませんわ】

 

 

 

「その場合11人だとボクとゆり子とミッチーを入れても1人足りないんだけどねっ」

 

 

【塗南苔(ぬりなこけ)は(百妖図)に画と名こそありますが、他の妖怪とは違い説明文がありません。ただ名には苔とつきます】

「そうそう」

 

 

【ですが、1776年に鳥山石燕によって描かれた(画図百鬼夜行)には塗仏(ぬりぼとけ)という妖怪が描かれており、これが塗南苔(ぬりなこけ)と同一の妖怪だという話もあります。

 

ただし、見た目が全然違います。塗南苔はぎょろっとした目を持つ石色の妖怪ですが、塗仏の体は黒く、目が飛び出しています】

 

 

 

 

「塗仏(ぬりぼとけ)はどんな妖怪なの」

【仏壇から出てくるとか………そんな程度の情報です】

 

 

【しかし古い民謡から分かったのですが、塗南苔(ぬりなこけ)は江戸後期の一時、道祖神として扱われていたことあるらしいとわかりましたわ)

「道祖神て?」

 

 

【村を厄災から守るため、村の入り口にた建てられた像のことです。かなり多種多様なものがあったそうです。

 

有名なのは夫婦像。塗南苔(ぬりなこけ)も苔の精霊として一時は静岡で祀られていたようです】

 

 

「T字路の六地蔵さんの祟りかと思ってた」

「まさかっ。彼らは人間を守る。修也ちゃんが土砂崩れに巻き込まれた時、ミッチーとタテちゃんは六地蔵に守られたんじゃないのっ?」

 

 

【うん………でどんな童謡だったの?」

(昭和12年に録音されたものがありますわ。歌詞はこれ】

 

 

 

きぜ つじ わき の うたまかせ♪

 

みどり の おにさん いいよった

まっか の おにさん たべよった

あーお の おにさん しかられる

 

みそぎ を もっても はいられぬ

いのち を もっても おいかえし

 

さいた よる に は やりなおし

 

やりなおし………

 

 

 

【冒頭ではっきりと更背辻(きぜつじ)と歌っていますわ。歌任せってのはこの歌だけでその場所を特定できるということですわね】

 

 

「うんっ。そのあと前半、

緑の鬼さん言い寄った……………塗南苔による死の宣告。

 

真っ赤な兄さん食べよった………赤を触ると死ぬ呪い。

 

青の鬼さん叱られる……………死んだ人間かっ。ここまではいいっ。

 

後は何だ………?

 

禊(みそぎ)が?入れない?………禊は水浴して身を清める行為。なぜ入れないんだろうっ?

 

命を持っても追い返される?

どこから追い出されるのっ?

 

裂いた夜?やっぱり腹が掻っ捌かれるのか………?この辺はさっぱりわからないっ」

 

 

「やりなおし、やりなおし………ここだけは明確に繰り返しているね」

【後半はさっぱりわからないですわね】

 

 

「まあ………何にしろもうすぐ更背辻。ガソリンとマッチで苔を全て燃やすっ」

 

 

 

(つづく)