「何よ!!何が目的なの!!!!」

 

 

 

すると神木の根、苔むした石に切れ目が走り、文字となった。

 

 

 

さ く や

 

 

 

「さくや??何さくやって?………妹の佐久夜毘売(さくやびめ)のこと?」

 

塗何苔(ぬりなこけ)がゼエゼエとした声で返した。

(ゆり子の所にいる咲夜だ。石長比売(イワナガヒメ)の依代(よりしろ)となる)

 

 

「なに??依代って?」

(咲夜は佐久夜毘売(さくやびめ)の子孫だ。石長比売(イワナガヒメ)様が転生される器だ)

 

 

「………醜くて瓊瓊杵尊(ニニギ)元を追い返されたから、妹の子孫に転生して仕返しをするのね」

(11人死ぬ)

 

 

「それはあと、私とゆり子と咲夜ちゃんね………」

 

 

緑の鬼さん言いよった♪

赤の鬼さん食べよった♪

青の鬼さん叱られる

 

禊を持っても入られぬ

命を持っても追い返し

 

 

 

 

咲いた夜にはやり直し

 

 

 

 

 

やり直し

 

 

 

 

 

これは………最初っから罠だ。私をここに導くための………。

 

 

私かっ!!私なのか!!私が真也さんの死に疑問を持ったから………。

修也さんの話にのったから………。

修也さんは死んだ!!

 

館山がインリンを呼び出して………。

二人は死んで………。

 

堺ゆり子のところに咲夜がいた!!

 

 

こいつらの狙いは最初から咲夜だった………。

 

 

私か、私か、私が三人を殺したのか!!

ああ、何で気づかなかった、なんで頭を突っ込んだ………。

 

 

T字路の遺体だけ腹を割かれていた。

あれは私を釣るためだ!!

 

 

なんで気づかなかった………。

嗚呼

 

 

真也さん修也さん、館山さん、インリン………。

私が殺した………。

 

 

だけど今、咲夜を捧げないと母と姪も死ぬ!!

私はもう悪魔にでも何にでもなろう。

 

 

ゆり子からの電話だ。

 

 

ミッチー??大丈夫?

うん………大丈夫。

 

 

良かった、電話って誰からだったの?

うん………。気にしなくていい、ねえ、ゆり子、今そこにいる子って誰。

 

 

だから咲夜ちゃんといって、親戚の子供。

………特別な子でしょ?

………。

 

 

もう隠さないで、その子はあなたたちの一族が守らねばならぬ運命の子でしょ。

………いや、私も、深くは知らない、でも何があっても守れって………。

 

 

インリンを殺してでも?

………。そういうわけじゃなかった。

 

 

ゆり子。よく聞いて。

………うん。

 

 

その子が助かるためには、

………うん。

 

 

私たちの命がいるの。

………うん、うん。

 

 

今からこっちに来て。咲夜はそこにいて大丈夫。ご先祖様が守ってくれる様、仏壇の前に座らせておいて………。

うん………今部屋をでたよ。親戚にも咲夜のことを話しておいた。

あ!!………ああ、聞こえた。

 

 

マンションの植え込みの苔からだね。なんて?

みがわり、だって。

 

 

気にしなくていい、塗何苔(ぬりなこけ)とはもう話がついてる。

 

 

それよりうん、どこまで行けばいい?

………「駅ワカル」のアプリある?

 

 

立ち上げたよ。

 

言うね、静岡県の三島駅。

 

うん、うん、

 

 

「検索」押してみて

 

 

あ。

今タップしたとこ赤い!!
赤いよ!?
ぁあぁあああああぁ

 

 

 

 

(よくやった。ゆり子は死んだ。咲夜を引っ張る)

 

 

小学生の咲夜は仏壇から塗何苔(ぬりなこけ)によってここへ引っ張られた。

咲夜は何もかも察し、あきらめて受け入れているように見えた。

 

 

石長比売(イワナガヒメ)、依代が届きました。正真正銘の佐久夜毘売(さくやびめ)の子孫です)

 

神木の下の苔むした石からおびただしいほどの苔が生え、咲夜をすっぽりと包んだ。

 

 

そしてしばらく鈍く光った後、苔がポロポロと落ち体の透き通った少女が現れた。

そして口を開いた。

 

 

「ちと小さいな」

(まだ年はもいかぬ少女です)

 

 

「共に育つだろう。女、ご苦労であった」

「これで母親と姪は」

 

 

「知らん、儂は生かせとも殺せとも言っておらん」

(彼らは赤を手放した様です)

 

 

「え?死んだの………?」

そこへ割れた大石から苔むした六本足の大馬が現れ、石長比売(イワナガヒメ)を乗せた。

 

 

「人は神のために生きよ。それこそがお前らを尊くする。さて、邇邇藝命(ニニギ)よ。其方はどこにおる?」

石長比売(イワナガヒメ)と六本足の馬は星空へと駈けて行った。

 

 

「11人死んだ………くぅうううううぅうぅぅ………。みんな死んじゃった、私が殺した………ぁあぁあ」

 

 

塗何苔(ぬりなこけ)が言う。

(人間には俺も神も殺せない。俺と子を作るか?子はその力で石長比売(イワナガヒメ)に一太刀与えうるかも知れぬぞ)

 

 

 

 

 

 

 

 

この化け物どもめがっ………!

 

 

 

私は赤いピアスに手をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(終わり)