私は東京から静岡県の南伊豆まで車を走らせていた。
夏も終わりに近づいた林道は一寸先が闇だった。
いったい塗南苔(ぬりなこけ)の呪いで何人死んだんだろうか?
犠牲者A男
犠牲者B女
犠牲者C男
吉岡川乃
小野寺真也
小野寺修也
館山恭一郎
インリン
………8人死んだ。
あと3人死ぬ。
だけど私とゆり子を入れても10人………1人足りない………??
私はドリンクホルダーにスマホを突っ込んで話していた。
「ゆり子、聞こえる?ゆり子?」
【………聞こえますわ。ただ、疲れました】
「インリンのことはよくわかる………でも今ここで手を抜いたら私たちも殺されて、塗南苔(ぬりなこけ)の思い通りになるのよ」
【貴方にツインレイって言ってもわからないでしょうね………私とインリンは魂の片割れでしたの】
「だからっ!今それを考えてたら負けなの!!」
【何が負けなのよ!!!何が勝ちなの!!!???】
「いや………そういうわけじゃないけど。ところで今あなたのところにいる女性は誰?」
【女性………いや、親戚の女の子ですわ。まだ小学六年生。両親が海外に行っているから預かっているの】
「そか。その子を入れると11人だけど………でも無関係か」
【その子を入れると??なんなのあなたさっきから!?】
「いや、そうじゃないよ。私は、私とあなたとそこの子を助けたいだけ。それが勝ち、だよ」
【………今向かっているのは雲見浅間神社。更背辻(きぜつじ)の石像が塗南苔(ぬりなこけ)の本体じゃないとすれば、あと考えられるのはそこですわ】
【祀られているのはコケムスメ………】
「そいつはどんな妖怪なの??」
【妖怪じゃない………神ですわ】
(つづく)