インリンは列車の下敷きとなり、どんな姿勢になっているのか、人間の形を保っているのか、何もわからなくなった。
もう助けるとかいうレベルではない。
列車は停止し、先頭から駅員が降りてくるのが見えた。
しかし私は逃げなければならない。真也さん、修也さん、館山、インリンの事故死?において私は重要参考人だ。
座して待てば確実に捕まる。そして必ず呪いを受ける。
そうすると死を待つだけの身となる。赤ペン捺印ひとつで死ぬ。
私は東京方面に車を走らせた。
【ミッチーさん、もう手を引いた方が】
「何言ってるの!インリンもやられたのよ!塗南苔は11人まで殺すと言ってるし」
【でも………私の勘ですけども、ぬりなこけは何らかの手先だと思いますわ】
「誰!」
【………はっきりしないですが】
「誰?そいつも妖怪なの??そいつと塗南苔はどこにいるの!?」
【多分………静岡県南伊豆。行ってどうしますの??】
「目的を聞く………あ、ほら聞こえた」
【なんですって?】
『来い』だってさ。さーてもう赤いものは触れられない。あれを手にいれるまではね」
【どこに向かうの?】
「新宿の小田急百貨店」
【小田急??】
午後の新宿小田急百貨店1F。
フロア全体にアクセサリー、コスメ、ブティックが並び沢山のジュエリーがガラス戸の中に置かれてある。
香水の香りがあちらこちらからしたが、品質の高いものからなのか混じり合っても不快には感じなかった。人間はここぞっと言う時、視覚も嗅覚も上がるのだと思った。
【貴金属を買うの?】
「そう。以前、真也さんが選んでくれたピアス。正直私はダサいと思っちゃって、それ以上おねだりしなかったの。そうそうこれ。すみませーん、これください、つけて帰りまーす」
「在庫の分を消毒いたしますね。アレルギー等は大丈夫でしょうか」
「全然大丈夫です。ほら、ねえ、カメラ映像だすよ、見てみ。ゆり子」
【わ………あー!!これって。もしかして!!】
「そう、耳の穴への挿入部分も赤でできてる。真っ赤なピアスなの。これをつけると………ほら私いま、赤に触れた。だからこの赤いピアスを外したら私は死ぬ。だけど、外さなかったら………」
【ぬりなこけの呪いに関しては無効!無敵!】
「………そう!(やられっぱなしでいられるかっ)」
(つづく)