ギター講師系Youtuberには商品紹介や自らのオンラインサロンへの勧誘を頻繁に行う者がいる。まぁ、それは彼らにとってライフワークの一部であるが、やり口が非常に狡猾で悪質なのだ。ギターの初心者や、エンジョイ勢と呼ばれるコンプレックスを抱えた人たちの心理をたくみに操り、商品を売りつけるのである。今回は、その注意喚起をしたい。

 


1.エンジョイ勢とは?


 まず、「エンジョイ勢」と呼ばれる者達について説明しよう。彼らエンジョイ勢のアイデンティティは「ギターは楽しむことが重要。上手い必要は無い、プロじゃあるまいし」というものである。彼らは上達を目的としないので、多くは演奏のレベルが低い傾向にある。

 

 

 まぁ、言いたいことは分かる。が、ギターに限らず、趣味というのはレベルが高い方が、楽しみの幅は圧倒的に広がる。よく、エンジョイ勢の対向の存在として、勉強や練習に熱心な人間は「ガチ勢」と呼ばれるが、演奏レベルが高い傾向にある「ガチ勢」の方が「エンジョイ勢」よりも、確実にギターをエンジョイ出来ているのである。

 

 

 そうなってくると、比較的エンジョイできていないエンジョイ勢の「エンジョイ」とはなんなのか?という話になるのだが、エンジョイという言葉自体そのものに深い意味は無い。もとはゲーマー用語を拝借しているだけで、カジュアル層、ライト層と言う認識で問題ない。

 


2.エンジョイ勢の心理


 しかし、実際問題「エンジョイ勢」という言葉は、あまりいい意味で使われない。前述の通り、彼らはギターが下手で比較的楽しめていない部類なので、ポジティブな要素が少ないのである。そのため、評価の場に身を置きながら、「下手の評価」を回避したいがために自らを「エンジョイ勢」を名乗ることが殆どだ。つまり、「演奏が下手」なのを「エンジョイ」という体の良いオブラートに包んでいるのである。

 

 

 そう、エンジョイ勢を名乗る多くの人間は「演奏が下手」であることに、いくばくかのコンプレックスを持っているのだ。技術的に難があれば、もっと練習して上手くなって、いい演奏をリスナーに届けたい!自分を示したい!と努力するだろう。しかし、エンジョイ勢はそれが上手くいかないので、「下手でも楽しめればいい!趣味なんだから!」という、もっともらしい言い訳をして、自分を正当化しているのである。

 

 

 考えてもみてほしい。本来、下手か上手かなど、流派でもないただの結果でしかなく、自分自身を○○勢などあえてカテゴライズする必要など全くないのである。それをわざわざ、自ら言ってしまってるあたり、技術に対して一番こだわっているのは自分自身であるというのが丸出しなのだ。

 

 

 一般的に、趣味でありながら進捗がない(上手くならない)のはつまらない物である。エンジョイ勢とて、心の奥底では「もっと上手く弾けたらいいのに」と思っているはずだ。このため、エンジョイ勢を自称する者は、自分が演奏するという行為の「その先にあるもの」と真摯に向きあうべきである。

 

 

本当の本当は、どうなりたいのか?

 

演者として、評価の場にでてきたのだろう?

 

自分の演奏を人に聴いてほしいと思っているだろう?

 

 

 外の世界に出れば、評価の話になるのは当然であり、リスナーからしたら、プロもアマも、ガチ勢もエンジョイ勢も関係ないのである。評価の場に身を置こうとすることが、どういうことなのか?自分自身と、腹を割って、じっくり考えて、話すべきなのだ。その中で、「上手くなりたい」、「上手くなくてもいい」という心の矛盾はしっかりと解消しなくてはならない。というのも、そんなエンジョイ勢の心の隙間を突いて、騙そうとしているギター系Youtuber(詐欺師)が存在するからである。

 


3.エンジョイ勢を騙す、ギター系Youtuber


 ここからが本題である。このエンジョイ勢の「ギターは楽しければ、上手くなくてもいい」という、すり替えの主張に、同調するように近づくのがギター講師系Youtuber(詐欺師)である。ギターは「楽しいことが重要なんだ!」「上手くなくてもいいんだ!」と、技術的にコンプレックスのある初心者(エンジョイ勢)の 「技術的な挫折」という「自己実現の失敗」から目を背けさせ、甘い言葉で誘い出すのである。こいつら詐欺師の実態は以前、解説した通りだ。 

 

 

 冒頭でも言ったように、そんな詐欺師の中には、自らのチャンネルで頻繁に商品紹介をする者がいる。「これを買えばギターを弾く時間が増えて上手くなるよ!」、「すごく良い音!」などと宣うのだ。いつも「上手くなくてもいい」と謳っているのに、「上手くなる」などと上達の話を持ち出したり、「いい音」のような良し悪しの尺度を都合の良いように持ち出すのである。こんな分かりやすい二枚舌の詐欺師に引っかかるやつが存在すると思うか?それが存在するのだ。これがエンジョイ勢である。

 

 

 「上手い必要は無い!」がスローガンのはずのエンジョイ勢は、何の疑問もなく商品紹介動画にくぎ付けである。この矛盾した行動は、彼らが心の奥底に「上手くなりたい」という願望があるからに他ならない。そう、彼らは大きい矛盾を孕んだまま生きているので、詐欺師が提示する、大きい矛盾にも全然気付かないのである。

 

 

 エンジョイ勢は努力による上達こそ諦めているが、コンプレックスは依然としてなくならない。詐欺師が商品を宣伝し、「もっとギターがいい音に!上手くなる!」なんて期待を抱かせたら、商品を買ってしまうのである。こんなのは「楽に痩せられますよ~」と怪しいダイエット商品を売りつけている手法と全く同じコンプレックス商法のトリックである。

 


4.初心者やエンジョイ勢を狙う理由


 ギター講師系Youtuber(詐欺師)が何故、初心者やエンジョイ勢を狙い撃ちしているのかというのにも、ハッキリした理由がある。まず、知識をつけて擦れてしまった中級者以上の連中を相手にするよりも、右も左も分からない初心者やエンジョイ勢に対して、利益を誘導するほうが容易いというのが一つある。そして単に騙しやすいわけではない。量的にも潤沢なのだ。

 

 

 「ギターを始めてから、9割の人間は1年でギターを辞めてしまう。」という統計データをFenderが公開している。そう、初心者市場は毎年大量に湧いては消えていく、非常に代謝の良い市場なのだ。これはマーケティングの情報としてギター界隈では有名な話である。

 

 

 そして、辞めてしまう9割の多くは技術的な問題で、挫折していると考えるのが自然だろう。上達による楽しさを得られない層と考えると、この9割の多くはエンジョイ勢の素質を持っているはずである。このことからも、詐欺師にとって初心者市場(エンジョイ勢市場)はかなり潤沢な狩場であることは分かるだろう。「初心者向け講師」をうたう詐欺師が蔓延るはずである。

 

 

 このような挫折する初心者(エンジョイ勢)に対し、まっとうなギター講師ならば上達によって楽しさを示し、次なるステップへ導くものだろう。が、このギター講師系Youtuber(詐欺師)は違う。詐欺師はド下手糞なので、満足に上達させることはできない。そのため、「ギターが楽しくなる!機材・グッズを紹介!」である。

 

 

 そして、詐欺師に乗せられて、騙し騙しギターを続けた初心者(エンジョイ勢)に残るのは、詐欺師に言われるとおりに購入した機材と、少しも使いこなせず上達しないド下手糞な自分である。しかし、彼らエンジョイ勢がド下手糞なままでも詐欺師は全然困らない。

 

 

 というのも、詐欺師が発信する情報というのは中級者以上には通用しないからである。そのため、むしろ初心者(エンジョイ勢)ができるだけ長い間上手くならない方が都合がいい。また、詐欺師のターゲットは毎年大量に湧き出てくる、初心者(エンジョイ勢)といったな?そう、今までついてきたエンジョイ勢が失望し、いなくなったとしても、もう次の獲物が控えているのだ。食えなくなって腐った獲物など、眼中にないのである。

 

 

 そう、詐欺師が吐く「楽しければいい、上手くなくてもいい」という甘い言葉の真の意味は「搾り取りたいから上達しないでね。」という暗示なのである。こいつら詐欺師は、エンジョイ勢の思考を妨げ、自分の紹介した機材を買わせるための洗脳を行っているのだ。

 

 

 こいつら詐欺師にはYoutubeのチャンネル登録者数が多い特徴がある。商品紹介動画の公開後、何の悪びれもなく、「僕が商品紹介したらamazonで売り切れました!」なんて成果をツイートしている者もいる。これは楽器メーカに対し、私はこれだけ売る影響力が在りますけど?というアピールしているのである。メーカに媚びる気満々で、次は情報弱者に何を売りつけようか?を画策しているのだ。

 

 

 そう、こいつら詐欺師にとって、エンジョイ勢の「ギターの楽しさ」なんて最初からどうでもいいのである。全ては「物を売るため」、「金を稼ぐため」だ。それもそのはず、彼らの肩書である「ギター講師系Youtuber」は副業ではなく、本業である。十分に教則出来なけりゃ、モノを売らなければおまんま食い上げである。別に商品が良いと思ってなくても、金さえもらえればガンガン紹介するのは至極当然なのだ。

 

 

 「ギターを楽しくしたい!」などと宣っているギター系Youtuberには本当に警戒しなくてはならない。こいつらはエンジョイ勢をおだてて、偽りの楽しさを演出し、物を買わせることしか考えていない詐欺師なのである。こいつら詐欺師には一言も耳を傾けてはいけない。気を付けよう。

 

 

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