先日、Epiphoneのギターが1,889円の破格でAmazonマーケットプレイスに販売されていることがTwitterで取り上げられた。もう見るからに犯罪・詐欺の臭いがプンプンで怪しすぎである。そして、そんな代物をタメシビキで知られるプロモーター(販売促進員)の山口和也が発信してしまったことから、物議を醸すこととなった。

 

 

 それだけではない。山口和也はツイート後、方々から批判があったため、しれっとツイートを削除して証拠隠滅。逃げてしまったのである。これは犯罪に関わる初動対応として非常にマズい。今回は逃げてしまった山口和也の代わりに、本件の顛末の説明と、詐欺サイトの注意喚起を行う。

 


1. 山口和也の失態


 私は発端となったツイートをリアルタイムで見ていない。知ったのはツイートが削除された後、Twitterギター界隈がザワツイていたのを察知した時点である。事実関係を把握するため、Google cacheから削除されたツイートを取得した。発端のツイートではないが、状況を把握するには十分なものである。

 

 画像から見て分かる通り、山口和也は犯罪・詐欺業者の可能性を認知しながら、商品ページを発信していたのである。時系列で示すと、以下の通りだ。

 

 ・山口和也がマケプレで犯罪・詐欺業者の可能性があると認知しながら商品ページを発信した。

 ・山口和也のフォロワーが出品者の怪しさを指摘。

 ・山口和也が自己責任である旨を強調し引用リツイート。

 ・方々から「犯罪被害を助長している」と批判が増えてきたため、炎上する前にツイートを削除。

 ・その後も謝罪や情報を訂正することなく、本件についてはダンマリ。

 


2.犯罪・詐欺被害への誘導


  まず、Epiphoneは低価格ギターブランドではあるが、さすがに1,889円は安過ぎである。常識的に考えれば、小売が1,889円で販売していれば、それ以下の価格でメーカが卸していることになるが、現実的にありえない。というか、Epiphoneがどうとか、偽物がどうとかいう次元ではない。どうすりゃ1,889円の売値で利益のでるギターを作れるのか?というレベルである。

 

 

 また、出品者の情報を見てみると、中国人業者であり、他に出品している製品も全て1,889円である。もう怪しくない要素がない。山口和也も業界の人間である。これが犯罪・詐欺の可能性があることは当然承知している。承知しながら、山口はこのページを発信してしまった。こうした怪しい商品ページへの誘導は犯罪・詐欺の片棒を担ぎ、犯罪組織への利益供与を助長する行為である。

 

 

 本件は山口自身に悪気があったわけではないだろう。仲間内での軽薄な悪ノリを公でやってしまったというところだ。彼はインフルエンサーであり、プロモーターという信用を売っている人間である。今回は彼のファンやフォロワーの中のネットリテラシーの低い人間への配慮がまったく欠けていたと言えるだろう。

 


3.犯罪・詐欺被害の事例


 こうした犯罪・詐欺ページでの購入リスクとして何が挙げられるか?今のところ被害者の情報は確認していないが、このように明らかに怪しい出品者から安いギターを購入した際には、商品が届かなかったり、偽物が届いたりすることがある。楽天やAmazonのようなECサイトによっては、返金保証もあるのでお金は取り戻せる場合も多いが、絶対に取り返せないものがある。それは個人情報である。

 

 

 通常、ECサイトで出品者の手に渡る個人情報というのは、氏名・住所・電話番号くらいである。たったこれだけの情報では、金融機関からお金を引き出すのも難しい。しかし、これらの個人情報が詐欺出品者の情報として登録されて悪用される事例があるのだ。これにより、いつの間にか詐欺師の濡れ衣をかぶせられ、大量のクレーム電話が押し寄せ、訴訟を起こされてしまうというものだ。そんなことに使われるなど、たまったものではない。

 

 

 山口和也は「購入は自己責任」としているが、犯罪被害者はこのようなリスクを承知しているだろうか?「返金保証があるし大丈夫」等とたかをくくっている者すらいるだろう。甘すぎである。そう、犯罪被害者はリスクを認識できないから被害者になるのであって、リテラシーの低い多くの人間に、ましてや犯罪に関わることに「購入は自己責任で」等と言ってはいけないのである。犯罪者・詐欺師には抜けた髪の毛一本でも渡してはいけないのだ。

 


4.危険な情報の未訂正


 本件の一番の問題はツイートを消して、逃げてしまったことである。インフルエンサーであり、プロモーターという大衆向けに発信する立場でありながら、犯罪・詐欺のある可能性のページに誘導したあとも情報も訂正せずにダンマリだ。繰り返しとなるが、こうした怪しい商品ページへの誘導は犯罪・詐欺の片棒を担ぎ、犯罪組織への利益供与を助長する行為となる。

 

 

 別に今回に限った話ではない。今後、山口が犯罪・詐欺ページへ意図せず誘導することとなってしまうのは、あり得る話である。その度にこの対応で済ますのは非常にマズい。発信した情報は独り歩きし、犯罪被害は広まるばかりである。そのため、本来はツイートを消してダンマリを決め込むのでなく、情報を訂正して被害を食い止めるようにしなくてはならない。今からでも遅くない。これは腐りきった楽器業界のいくばくかの信用を取り戻すチャンスである。山口には、これを機に犯罪や詐欺の注意喚起を行ってほしい。

 


5.山口和也の行動原理


 彼はYouTubeでのプロモーターを生業としている。そして、ギターイノベーション大学(オンラインサロン)の元締めの一人である。そんな人間が何故?どういう行動原理で失態を起こしてしまったのか?これは山口和也の日々のツイートから垣間見れる。

 

 

 例えば、山口はインフルエンサーであるため、アンチの存在も一定数存在する。最近では「服がダサい」だとか、「ギターの上にものを置くな」だとか、本当にどうでもいい糞リプ(糞のようなツイート返信)を受けることがある。このようにアホでも分かる理不尽な糞リプは、山口は決まって引用リツイートで晒上げる。これにより、大勢のフォロワーをけしかけ、自らの手を汚さずに間接的に処理する。まぁ、糞リプの応酬は自業自得ではあるのだが、インフルエンサーがやれば結果的にネットリンチである。これは褒められたものではない。こうなることは簡単に予測できることであり、山口の行為は確信犯的であると言える。

 

 

 一方、本件はで犯罪・詐欺ページに誘導してしまう発信を行った。批判が加熱しはじめ、炎上しそうになってくると、ツイートを削除して証拠隠滅。誤って発信したツイートの謝罪、情報訂正、自身のファン、フォロワーへの配慮など一切なしである。服がダサいとか、ギターの上に何乗せたとか本当にどうでもいいからこっちをしっかりフォローせいという話である。

 

 

 このような山口和也の言動から、彼の行動原理、物事の判断で最優先されるものは「勝ち・負け」であることが分かる。勝てるからネットリンチに持ち込み、負けるから証拠隠滅し保身に走る。そして、「ネットリンチは回避する」、「詐欺サイトに誘導してはいけない」、「誤った情報は訂正する」という、本来優先されるべき社会的な良識、善悪の観念が欠落しているのである。

 

 

 今回は勝算がなかったので、早々に幕引きを図り、リスクヘッジしたつもりになっているだろうが、これは「信用」を売っているプロモーターとして、一番やってはいけない悪手だ。誠実さがまるでない。この行為は「自分が責任を取らなければ他人はどうなってもいい」と同義である。だから犯罪・詐欺ページへ、軽々しく「購入は自己責任で」なんて言葉も出てくる。彼にとってフォロワーやファンはその程度の存在と評価されても仕方ないのである。

 


 6.犯罪・詐欺ページの特徴


 前述の通り、Amazon、楽天、Yahoo等の大手ECサイトだからといって安心というわけではない。そこで出品している業者の審査なぞ、ザルもいいところである。以下のようなサイト・商品ページには注意しよう。

 

・出品者が中国人 。

・実店舗が存在しない。

・相場を大きく下回る価格。

・違和感のある日本語とフォント。

・やたら評価の高いレビューが多い。

・レビューがカタコト。

 

 まず、サイバー犯罪数筆頭国である中国の業者は日本人の行動心理をお見通しである。日本人はレビュー数が多いと安心して購入するということを知っている。レビューの多さ、レビュアーの情報は全くあてにならないので、これは全く信用してはいけない。少しでも違和感があったら避けるのが無難である。

 

 

 日々、サイバー犯罪は巧妙化している。今まで悪用が難しかった個人情報が、今後どのように悪用されるのか全く予想できない。怪しいサイト、商品ページを見抜く力をつけるとともに、そういったサイトはTwitterで拡散しないこと、拡散してしまった場合は情報を訂正することが重要である。

 

 

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