楽器業界にはヴィンテージギターの信仰、崇拝というものが存在する。原理主義的な定義で言えば50~60年代までのものを指すが、近年は定義が変化し、70〜80年代のモノもそう呼ばれ始めている。時が進めばヴィンテージの定義も変わるのも理解できるが、仕様(木材、工法、パーツ)が異なる時代のギターを同じくくりのように扱かうホラ吹きも多くいる。これは完全なミスリードであり、詐欺師の所業だ。

 

 

 価値の見直しだとかかこつけ、売り手に都合のいいように価値が操作される。そして消費者は「これは価値のあるものなんだ」と騙され、盲信的に崇拝するのである。これは楽器業界(犯罪集団)が消費者を騙す常套手段である。今回はヴィンテージギター崇拝の正体とウソについて解説しよう。


1.ヴィンテージギター崇拝の正体


 率直に言えば、ヴィンテージギターにしか出せない音というのは存在する。これらは倍音量が多いのに、鮮明で聞き取りやすく分解に優れているという共通の特徴がある。ヴィンテージは音が大きい、元気がいい、なんて言われるが、聞き取れる倍音量が多いというのが本当のところだ。そして、この音は現代のギターでは再現できない。逆に言うとヴィンテージギターも現代のギターを再現できない。そう、これらは本来優劣などないものなのだ。
 
 
 しかし、そのヴィンテージを絶対(ホンモノ)として崇拝するのがヴィンテージ信仰だ。彼ら崇拝者に現代楽器や、現代音楽はニセモノであり、良さを語ることはできない。これは彼らがは楽器業界によって洗脳され、良し悪しについて正常な判断が出来なくなっている結果である。

2.ヴィンテージギター崇拝は壮大なコスプレである


 先述の通り、ホンモノ(ヴィンテージ)、ニセモノ(現代)という崇拝者の価値観が存在する。簡単な話、原理主義なのだ。そして、この価値観の根幹にあるものが、当時のミュージシャンの音である「再現性」であるという主張だ。
 
 
 しかし、この再現性を極めるという行為は、突き詰める程に破綻してしまうのである。考えても見てほしい、まず、エレキギターは単体で鳴らすことはできない楽器だ。突き詰めれば付随するアンプやら録音機材も含めた全ての機材を当時のモノにしなくてはならない。まぁ、これには金を積めばいいので、大した問題ではない。
 
 
 解決できない問題は、どんなに機材を買いそろえても、弾いているお前自身はどう足掻いてもニセモノであるという事実だ。「楽器には奏者がいて、突き詰めれば完全な再現など不可能」というもっとも基本的な部分を見落としているのである。コロッケは野口五郎になれないのである。
 

 そう、このヴィンテージ市場(犯罪の温床)の根幹にある「再現性」は、この壮大なコスプレ茶番劇にどれだけ金を使わせるか?という楽器業界(詐欺集団)の思惑の上に築かれたものなのである。崇拝者(被害者)は突き詰める程に救われることはない。これは彼ら自身がニセモノという大前提に気づいていないからだ。
 
 
  そして、この再現性を詰めるという行為が、ミュージシャンの「大衆に自分達の音楽を聴かせる」という本懐から遠ざかってしまうのである。以前も話したが、自分に足りないものを機材で埋めようとする弱い心(コンプレックス)を楽器業界(犯罪集団)はムサぼり続けているのだ。
 

3.そもそもヴィンテージギターは当時の音なのか?


 そもそもの話をしよう。そもそもの話だ。まず、アコースティックギターは長期間弾きこめば音質が変化するように、ソリッドギターも同様に弾きこむほどに音質が変化する。これはピックアップなどの電気系統だけではなく、木部や塗装が劣化するためだ(諸説ある)。まぁ細かい話はどうでも良い。とにかく弾けば弾くほど音が変わるのである。
 
 
 しかし、当時のギタリストが使っているギターは、むしろ”新品”に近く、ヴィンテージに経年変化は現れていないはずである。しかも、これでレコーディングも行っている。そして30年後、彼らの音楽を紡いだギターは「ヴィンテージ」と呼ばれ、「再現性」と「経年の音質変化」を崇拝される。この「再現性」と「経年の音質変化」が明らかに矛盾しているにも関わらずだ。
 
 
 100年モノのヴィンテージワインも、100年前に飲めばフレッシュワインであるという至極当たり前の論理が破綻しているのである。そのため、ヴィンテージという概念そのものが、現在進行形で変わり続ける新しい価値観であり、時を経ることで再現性からは遠くなっていく。ということに注意しなくてはならない。
 

4.まとめ


 若い世代でヴィンテージギターに憧れを持ってる場合、それ以上は幻想を抱かないほうがいい。ヴィンテージギターは素晴らしいものも多いが、あくまでミュージシャンのための道具であり、ましてやコスプレの道具ではない。古い機材に強く執着したとき、ミュージシャンとしての道が閉ざされ、行き着く先は偏屈コスプレイヤーである。注意しよう。
 
 
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