産婦人科の一工夫
-LEPやピルの飲む方法について-
月経困難症、過多月経、子宮内膜症の治療、避妊のために処方される薬剤には経口のステロイドホルモン剤が使用されます。使用する薬剤はLEP(Low dose estrogen and progesteroneの略語です。低用量の合成されたエストロゲンとプロゲステロンを含有する薬剤のことで、ピルも同様の薬剤を使用しています)と呼ばれ、ピルもほぼ同様のホルモン製剤が使用されています。両者の服用のコツは、服用方法を正しく守ることが大切で、服用方法を守ると薬剤の効果を最大限に発揮されます。
LEPやピルは合成のステロイドを含有した薬剤ですが、服用すると胃で溶解し、十二指腸や小腸で吸収されます。胃の中や腸内の環境を一定の状態にすることや、服用時間を一定にすると、血中内のステロイドホルモン濃度を一定にすることが可能になります(血中薬剤濃度の安定化)。
LEPやピルのホルモン含量は、LEPやピルを服用していないときの卵巣ホルモン濃度の3割程度です。この低濃度でLEPやピルは女性の月経周期を支配することが出来るのです。以上のことから、服用開始は月経開始3~5日目がいいと思われます(月経周期が進むと卵胞ホルモン濃度が上昇し、低用量のLEPやピルではその後の月経周期のコントロールは不可能になります)。
月経周期が不規則な女性は産婦人科外来を受診して、子宮内膜の厚み(5㎜以下)、もしくは卵胞発育(主席卵胞の直径が7㎜以下)を測定すれば、何時からLEPやピルを開始するかが判明します。
以下のことを守ってLEPやピルを服用しましょう
① 一日一錠を決まった時間に服用すること
② 食後の時間も一定にして服用すること
③ 空腹では服用しない
④ アラームを使用し、一定の時間に服用することを習慣づけること
⑤ 水分摂取を怠らないこと
⑥ 持ち歩くような薬剤ではないので、夕食後に服用することが望ましい
⑦ 長時間の激しい運動は行わない(この時も水分摂取を)
⑧ 少量の出血があっても服用を続けること
⑨ 薬剤シートには日付を入れ、休薬期間は折り曲げて対処する
⑩ 月経量はかなり減少し、月経痛も大幅に少なくなります
⑪ 一定の間隔で決められた採血を行うこと
激しい頭痛、胸痛、腹痛、めまい、ろれつが回らない、ふくらはぎがむくむ、痛いなどの症状が出現したら服薬を中止し、医療機関に電話をして指示を仰ぐことが大切です(稀な症状ですが、これらの症状は深部静脈血栓塞栓症の初期症状のことがあります)。
どんな時でも落ち着いて行動することが大切です。また、LEPやピルはステロイドホルモン剤です。人に譲ったりすることをせず医師の管理下で服用することが大切です。気軽に飲む薬ではないことを自覚してほしいものです。
なお、周術期(外科的手術を行う場合)は手術の4週間前、術後2週間はLEPやピルの服用は禁忌です。