更年期を女性らしく生き抜く(19-2)
良性発作性頭位めまい症:耳の骨粗鬆症とめまいとエストロゲン(2)
悪性頭位めまいが隠れているかも
めまいの症状が似ている疾患に悪性頭位めまい症があります。悪性頭位めまい症は小脳の出血や梗塞、腫瘍などが原因によるめまいで、治療しないで放置すると生命にも危険が生じます。
一見良性発作性頭位めまい症と似たような症状を呈しますが、良性発作性頭位めまい症では、めまいを起こしやすい頭の位置を繰り返し取ることで症状がむしろ軽くなることが特徴です。
また、眼振といって、めまいが起きている時に眼が揺れる状態が観察されますが、その揺れ方で良性か悪性かある程度判断できます。悪性頭位めまい症では頭痛も伴うことが多く、眼振がしっかりでるわりには症状は弱い、などの特徴もいわれています。
しかし、良性発作性頭位めまい症でも頭痛や吐き気が強くでる場合もありますので、その場合は画像診断が欠かせません。CTでは小脳の病変はわかりづらいことがあるため、MRIによる確認が必要です。
良性発作性頭位めまい症は自然に治ることが多い
良性発作性頭位めまい症は特別治療をしなくても数日から2週間程度で軽快することが多いですが、中には難治性で1ヶ月以上症状が続く場合もあります。頭をわざとめまいのする方向へ動かすことがとても有効です。
耳鼻咽喉科の診察で目の動きが確認できた場合には、理論的に邪魔にならない場所へ耳石を移動させるように頭を動かす処置を行うことがあります。手技を開発した医師の名前からエプリー法などと呼ばれていますが、エプリー法を行わなくても、めまいのする側に何度も寝返りをうったりすることで同様の効果を得られます。
エプリー法である程度は治る
良性発作性頭位めまい症は60〜70代の女性に多い
良性発作性頭位めまい症は60〜70代の女性に多いという特徴があり、良性発作性頭位めまい症の原因は加齢と低下するエストロゲンとの関係が考えられています。閉経後のエストロゲン分泌低下がカルシウム代謝に影響し、脆くなった耳石がはがれやすくなるのではないかと言われています。
将来はこの病気の新しい治療法が
多くの機能調節を司るエストロゲンが更年期や老年期で低下し、耳石器の骨粗鬆症を発症させ、耳の機能にも関与している可能性があります。現時点では良性発作性頭位めまい症の治療にホルモン補充療法を使用することはありません。
しかし、ホルモン補充療法を行い、耳石器の骨粗鬆症の発症を遅らせることや耳石器を鍛えることは良性発作性頭位めまい症の発症予防になることが予測することが出来ます。将来、ホルモン補充療法がこの病気の予防になる可能性があり、今後研究が進むことを期待しています。