更年期を深く考える(17) | マーブル先生奮闘記

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マーブル先生の独り言。2024年1月1日の能登半島地震後の復興をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

更年期を女性らしく生き抜く(16)

ホルモン補充療法の実際 

 

女性の卵巣エストロゲンの活躍は40年続いていた

 更年期障害の病態は加齢による卵巣機能の低下、特に卵巣のエストロゲンの分泌低下が引き起こす全身のエストロゲンに活性を依存する器官の機能障害と考えることが出来ます。性成熟期にエストロゲンは女性の生殖器の発達や機能に関与し、妊娠の成立・維持に重要な役割を果たしてきました。

 また、エストロゲンは産婦人科領域以外でも骨、血管、筋肉、消化器、皮膚などの多くの臓器や組織の維持や機能発現に主体的な役割を果たし、糖や脂質代謝の調節にまで関与していることも知られています。したがって更年期障害を治療するためには失われた卵巣エストロゲンを補充することは理にかなった方法です。

 

治療に使用されるホルモン剤は多彩

 更年期障害の治療のためのホルモン補充療法に使用されるホルモン剤には、エストロゲン製剤(卵胞ホルモン製剤)6種類、8品目とプロゲステロン製剤(黄体ホルモン製剤)2種類、両者を合剤にした2種類の配合錠があります。

 医療者は訴えや症状に応じてこれらのホルモン薬剤を使い分けます。更年期障害の治療は本来低下したエストロゲンを補充すればいいのですが、エストロゲン単独では子宮内膜がんの発症の可能性があるため、子宮内膜を保護する目的でプロゲステロン製剤を併用して使用します(子宮を摘出した女性にプロゲステロン製剤は必要ありません)。

 また、プロゲステロン製剤の単独使用は低下したエストロゲン分泌をさらに抑制するためエストロゲンを上昇させるという更年期障害の治療には不向きです(性成熟期の過多月経や月経困難症にはプロゲステロン単独使用が存在します)。

 

中でもエストロゲン製剤は多い

 エストロゲン製剤の種類が多い理由は経口剤、経皮剤などの投与経路の違う薬剤があるためです。また、経腟的に投与するエストロゲン製剤もあり、それぞれ長所・短所があるため更年期障害の症状に応じて使い分けることが大切です。

 更年期障害の症状は長い間継続することが多く、エストロゲン剤を長期間使用することがあり、ホルモン剤は身体に安全なものであることが大切です。また、更年期障害が発症する年齢は多くの臓器のがんの発症年齢であり、生活習慣病や動脈硬化・冠動脈疾患も発症する可能性があります。

 更年期障害の治療時には訴えから症状をよく見極め、女性の背景に潜む疾患の発症の有無を慎重に観察する必要があり、可能な限り少ない薬剤、少量の投与量が必要です。

以上のことから、更年期障害を取り扱う医療者は更年期の女性のホームドクターであり、老年期への道案内人なのかもしれません。