更年期を女性らしく生き抜く(18)
予防的なホルモン補充療法は骨粗鬆症を防止する
更年期を経て老年期に入ると全身の骨の脆弱化、筋力の低下、姿勢の変化から通常の日常生活でも骨折することが多くなり、その治癒にも時間がかかることが知られています。今回は閉経後の女性の骨折についての話です。
骨折の種類と原因、症状
老年期に多い骨折には、①脊椎圧迫骨折、②前腕骨遠位端骨折、③上腕骨頸部骨折、④大腿骨頸部骨折、と肋骨骨折があります。
脊椎圧迫骨折とは、尻もちをつく、不用意に重い物を持った時に背骨の脊椎が圧迫骨折を生じる骨折のことで、ほとんどが腰の上部の腰椎の圧迫骨折です(第一腰椎が中心)。腰が抜けたと表現され、複数の腰椎の圧迫骨折は老年期の寝たきりの原因にもなります。
前腕骨遠位端骨折は転んで手のひらをつくと、手をついた方の手首に激痛が走り、手首の関節がフオークの背状に変形する骨折です。
上腕骨頸部骨折は転んで肘をつくと、肘の上方の肩に激痛が走り、腕が上がらなくなる骨折です。
大腿骨頸部骨折は転倒して腰部を打撲した時に起こり、脚のつけ根が痛くて立てなくなり、この骨折も老年期の寝たきりの原因になります。
肋骨骨折は骨折時に鈍痛がある程度で日常生活に支障が起こるほどの症状はないものの、しばしばみられる骨折ですが、臨床上はほとんど経過観察で、治療を行うことはありません。
エストロゲンの役割
エストロゲンの受容体は皮膚、筋肉、関節、骨などに広く分布してそれぞれの組織の機能を調節していますが、更年期を迎えたころからエストロゲンが低下するとエストロゲンに支えられていた多くの組織で機能低下が生じます。
筋力の低下は体力の低下をもたらし、関節の機能障害が合わさると、結果的に姿勢が悪くなります。また、エストロゲンの低下は骨粗鬆症を発症し、姿勢バランスの悪い日常生活は転倒の可能性と骨折の頻度を増加させます。
予防的なホルモン補充療法の役割
老年期の骨折の危険因子は骨粗鬆症と転倒であることを考えると、ホルモン補充療法は骨粗鬆症や筋力の低下を予防する治療になります。更年期や老年期のエストロゲン投与はその投与経路や投与量を問わず、すべての薬剤で骨量を増加させ、骨折を予防する効果が知られています。
また、エストロゲンには関節保護作用、運動機能改善作用、筋肉量低下抑制作用、姿勢バランスをよくする効果があることが知られており、骨折が起こり得る状況からの回避と骨折の予防になります。
骨粗鬆症とそれに伴う骨折は誰もが経験する可能性がある閉経期から老年期の女性の病気です。ホルモン補充療法はこの時期の生活の水準と質、生命の質そのものを向上させるための予防的な武器になるかもしれません。