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One of 泡沫書評ブログ

世の中にいったいいくつの書評ブログがあるのでしょうか。
すでに多くの方が書いているにもかかわらず、なぜ書評を続けるのか。
それは、クダラナイ内容でも、自分の言葉で書くことに意味があると思うからです。

逆説の日本史 16 江戸名君編~水戸黄門と朱子学の謎~/井沢 元彦
¥1,680
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新刊が出ていたのでさっそく購入。買ったばかりでまだ未読なのだが、いい機会なのでちょっと井沢さんについて書いてみる。ちょっと長くなってしまったのだが、これでも一応だいぶ編集したつもりなので、できれば最後まで読んでほしいw


「右翼系」の作家


今まで恥ずかしかったので触れないようにしていたが、じつは、わたしはかれに相当影響を受けている。最初に知ったのはよしりん(小林よしのり氏)が、ゴー宣で朝日新聞とバトルしている際に出した「朝日新聞の正義 」という本だった。ほとんど活字を読まなかったわたしはこの本で完全に「覚醒」した。以来、渡部昇一氏、谷沢永一氏、そして西部邁(すすむ)氏など、いわゆる「右翼」系の言論人の毒にあてられてしまった。(池田先生の恩師が西部さんだった とは驚きだがwww)


話がそれたが、そんな経緯があってわたしは完全な井沢信者になってしまった。当然SAPIOは欠かさず買い、ノンフィクションだけでなく小説も買い、果てはなんと、かれのデビュー作 まで古本屋で探して手に入れた。そんな筋金入りの井沢信者であるわたしだからこそ、かれの書評をする権利があるだろうw


梅原猛の影響


日本における歴史観は色々あると思うが、戦前は「皇国史観」というやつだった。戦後は「マルクス史観」とか「岩波史観」とかある(あった)と思うが、今の読者になじみがあるのは「網野史観」や「司馬史観」というものではないだろうか。まあこのようなかたちで、一口に歴史といっても研究者の数だけ視点があるから、なかなか一筋縄ではいかないものである。


さて、そういう「史観」だが、かくいう井沢さん場合は、梅原猛氏に大きな影響を受けている。「怨霊」や「言霊」といった、日本古来のメタ言語的なエトスをキーワードに歴史を読み説いている。いわば「梅原史観」の延長と言っていいだろう。わたしは信者なので説得力はないと思うが、井沢さんの場合は梅原さんのように「詩的」でない分、梅原さん以上に説得的な気がする。


学会の定説に対する”逆説”


井沢さんの魅力は、権威におもねらないところだろう。かれが自ら評する通り、早稲田出身でTBSの政治部記者だったこともあり、常に在野の視点で歴史を紐解いている。もちろん個人の仕事であるから、思い込みはある。しかし、基本的には、「どうあるべきか」というイデオロギッシュな見方はなく、「何が真実か」という観点で研究を続けていると思う。そんな感じでやっていると、必然的に学会に対して挑戦的な「逆説」ばかり発表する、ということになる。これが「逆説」のゆえんだろう。


これは単にあまのじゃくなだけではないと思うかれのすごいところは、「気づき」があることだろう。ふつう、歴史をやろうと思っても、素人にはまず無理だ。なぜならプロは一次史料を読みこまなければならず、また多くの論文も読まなければならない。「新説」には、そういう基本的な仕事をした上での気づきが必要となる。だから素人は専門家にケチを付けることはできても、対案を出すことはできない。しかし、かれはその難しい仕事をやっている。(しかも、週刊連載である)


稀な「通史」


「通史」というのは、文字通り、ひとつながりの歴史のことを指す。通常、われわれが学校で習うのは「○○時代」とかいうような、ぶつ切りの時代にフォーカスを当てているものだ。井沢さんがよく指摘しているように、こうした専門分化が進むと、「木を見て森を見ず」状態になって、専門家が逆に隘路にはまってしまうことが多い。これを防ぐためには、全体を俯瞰することが必要なのだが、なぜか日本の歴史学会においては「通史」というジャンルがないらしい(わたしが知らないだけかもしれないので、詳しくはめいめいで調べてくれたまえ)。よくある「日本の歴史」とかのシリーズは、だいたいが各時代の専門家による分冊であり、これは通史とは言わない。


したがって、日本では「通史」というともっぱら作家の手によって書かれることが多い。一番親しみやすいのが司馬遼太郎で、かれはいわば「司馬史観」というものをもって歴史の流れを描いているのだ。だから多くのファンが居るのだろう。わたしが知っている限りでは、「清張通史 」というのがあるが、これも作家の手によるものだ。しかし、こういうのは残念ながら、学問的な裏付けに欠けることが多いとの評が多い。作家は想像力がある分、「洞察」と「妄想」とが紙一重なのだろう。


しかし、井沢さんの場合は、その辺を相当意識していると思われ、かなりの量の史料を読みこんでいると思われる。プロを批判するのだから、理論武装に余念がないということだろう。ファンの贔屓目かもしれないが、かなり慎重に色々研究されている。


小説は下手w


ちょっとホメすぎたので、バランスを取ろうw かれは江戸川乱歩賞でデビューしたので、一応ジャンルとしては推理作家にあたる。記憶が正しければ、推理作家協会にも名を連ねていたと思う。また、過去にはライトノベルみたいなもの を書いていたり、ドラゴンバスターのノベライズ などもやっていたりと、結構柔軟に小説を書いているのだ。しかし、話題になるのはやはり歴史ノンフィクションだし、よく知らない人は、かれが小説を書いているなどとは知らないだろう。


これには理由がある。かれの小説は、なんというか、面白くないのである。歴史推理モノがほとんどで、登場人物が「取ってつけた」ような人ばかりなのだ。ストーリも、基本的には「逆説の日本史」で主張してるような話を説明したいだけなので、進行が非常にまどろっこしいし、会話もぎこちない。小説は向いてないと思う。体力に余裕がないなら、小説を書くのはやめて、ノンフィクションに精力を集中させてほしいと思う。


ライフワーク


このように多忙を極める井沢さんだが、これに加えてときどき書き下ろしを発表したりもする。実に多忙だ。どうやらそうした多忙が原因で目を患っているらしく、以前に一度長期の療養に入っていたこともあった。


かれがこのシリーズを始めたのは今から15年以上前になる。かれ自身も、そろそろ還暦を迎えるころだろう。自身がライフワークの一つと位置付ける本シリーズだが、16巻でようやく江戸時代が中盤を越えることになる。遅々として進まないという感覚である。(週刊連載なのに・・・) ファンとして思うのは「頼むから、途中で死なないでくれ」ということに尽きる。これから先、まだ明治維新もあるし、二次大戦もある。何より最もエネルギーを使うであろう戦前戦後のイデオロギー闘争がある。一番大変な時期に、おじいちゃんになってしまうのだ。本当に体が心配である。


井沢さんに求められるのは、何よりもまずこのシリーズを完結させることだろう。それまで、絶対に倒れないでほしい。ライフワークというのは「未完」で終わることが多いが、かれのプロ意識はそんな安っぽくないと信じている。最後まで読者の期待に応えてこそプロなのだから。尊敬する梅原さんも陳さんもまだご存命だから、井沢さんもまだまだ死ねないはずだ。


井沢さんへ贈るメッセージ


万に一つもないと思うが、もし廻り廻って本人がこの書評にたどりついたとしたら、わたしは次の言葉をかれに送りたい。「目に悪いから、こんなの読んでないで、続き書いてください」と。


井沢本の紹介


以上、わたしの拙い井沢評を読んで興味をもたれた方には、以下の本をお勧めしたい。


世界の宗教と戦争講座 (徳間文庫)/井沢 元彦

¥620
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非常に分かりやすい宗教講座。橋爪さんの本橋爪さんの師匠の本 と読み比べてみたら面白いかも。まさに入門編。

「言霊(コトダマ)の国」解体新書 (小学館文庫)/井沢 元彦

¥540
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こちらは初期の主著。かれの代名詞でもある「言霊」について書かれている。



穢れと茶碗―日本人は、なぜ軍隊が嫌いか (ノン・ポシェット)/井沢 元彦

¥590
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これも割と初期の主著。出版社がマイナーなのが時代を感じさせる。わたしはハードカバーでもっていたはずなのだが、引越しのときにどこかになくしてしまった。


古寺歩きのツボ―仏像・建築・庭園を味わう (角川oneテーマ21)/井沢 元彦

¥760
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こちらはちょっと異色の新書。高校の時から寺社巡りが趣味というオジンくさい著者の説く寺巡りの方法。マニアック。
凡人起業―「カリスマ経営者」は見習うな! (新潮新書)/多田 正幸
¥714
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神戸のオジサンが書いた非常に庶民的な本。さいきん、「セルフ・コンフィデンス・バイアスw」の強いエリートたちばかりの本を読んでいたので、こういう庶民的な本を読むと非常に安心する。


しかし、読者は見誤ってはいけない。著者は周到に謙虚な姿勢で自らを「凡人」と称すが、実際は大阪大学を卒業し、丸紅に入社、そのまま脱サラするも一度目の起業に失敗し、友人と学習塾を経営した後に再び会社勤めをし、今は税理士として独立しているという、とても「凡人」とは思えない「非凡」な半生を過ごしている。だいたい、丸紅に入るあたりが既に凡人とは程遠い。こういう人を「凡人」というなら、一体わたしなどは明日から何と称せばいいのか。「凡人未満」か、「愚人」とでも言わなければならないだろう。


確かに、著者には先日紹介した楽天の三木谷さんや、我らがホリエモン、ユニクロの柳井さんのような「変態的」な才能はないだろう。ああいう人たちは違いがありすぎて、いちいち嫉妬する気も起きない。しかし、こういういかにも手が届きそうな人は、逆に嫉妬してしまう。「何だかんだ言ったところで、結構バイタリティに溢れて、結局独立に成功してるんじゃないか」と。


まあそういう意味では、これから起業を志す人にとっては非常に役に立つ生、というより、等身大の情報が満載であることは間違いないだろう。著者も断っている通り、初めから楽天みたいな会社を興そうという人は本書を読んでも得るものはないだろうし、逆に、そういう「変態的」な人はこういう庶民的な本を読んだりしないのではないか。これは、本当にサラリーマン以外の生き方を模索している「凡人」が、同じように自らを「凡人」と称する「非凡な人」の足跡を追うことのできる稀有な本だ。


合わせてこちらも読んでみた。こちらはベストセラーだから、読んだ人は多いのではないか。わたしは「サバイバル」だけを読んでみたが、示唆に富む内容だった。


週末起業 (ちくま新書)/藤井 孝一
¥735
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週末起業チュートリアル (ちくま新書)/藤井 孝一
¥714
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週末起業サバイバル (ちくま新書 811)/藤井 孝一
¥735
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モンスター社員続出で右往左往する現場


これはプレジデント誌の「部課長の基本」シリーズというものだそうだ。ひたすら社畜礼賛記事のオンパレードで、読んでて気色悪い。ちゃんと読んでないので失礼は承知で言えば、団塊世代の体育会系マッチョイズムが満載で、読まなくても内容が予想できる。こういうのを読んで「そうそう、そうなんだよ!」という連中がどんどん減れば、日本経済ももう少しまともになって、生産性が上がるかもしれない。


ネタみたいな内容で面白いので、引用してみよう。


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商社で働く小林百合子さん(仮名)は、入社1年目の男性の後輩に「明日中にこのレポートをまとめて、メールで私のところに送っておいてね。次の日のお昼の会議の資料として使うから」と頼んだ。「わかりました」と元気のいい答えが返ってきたので、小林さんは安心して任せていた。


しかし、翌日の夕方になってもレポートのメールは入ってこない。本人のデスクに目を向けると、資料をかたわらに置いて一生懸命にキーボードを打っている。「新人とはいえ、半日もあれば十分に終わる仕事なのに」。取引先との会食の約束の時間が迫ってくるのにつれて、小林さんの不満は募っていった。結局、タイムアウトとなり、仕方なく小林さんは職場を飛び出した。


翌朝、メールチェックをした小林さんは驚いた。確かにレポートのメールは入っていた。しかし、その時刻は何と「23時59分」。新人君を呼び出して「ちょっと遅いんじゃないの。もう少し早くから取りかかれば、夕方には十分できたでしょう」と小言をいうと、「でも指示のあった昨日中には送ったはずです」と答える始末。当人は涼しい顔だ。自分の行為が相手にどのような影響を及ぼすかまで、どうやらこの新人君は頭が働かないようである。

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夕方までに送ってほしければ、「明日の夕方まで」と指示すればよいのである。ただそれだけのことで、それ以上でもそれ以下でもない。だいたい近くに座っているならフォローするべきであろう。なぜ後になってからわざわざ「空気を読め」と理不尽なことを言うのか。自分の希望を相手にどのように伝えればよいのか、どうやらこの小林百合子(仮名)さんは頭が回らないようである。




家康は「成長した秀頼」がゆるせなかった


こういうのも歴史をよく知らない後世の妄想で具合が悪くなる。


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このとき成長した秀頼を見た家康は、「この男を生かしておいてはまずい」と直感。豊臣家を滅ぼすため、大坂の陣を起こすのだ。


もし秀頼が愚昧だと家康が思っていたら、あるいは豊臣家が滅ぼされることはなかったかもしれない。また秀次が存命していれば、豊臣家が滅ぼされることはなかったかもしれない。

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意味がわからない。


家康は、秀頼が優秀だろうと愚鈍だろうと豊臣家を滅ぼそうとしたに決まっている。近代以前では、権力は二つあってはならないからだ。秀頼がどういう能力をもっていようが、豊臣家の遺臣なんだから誰かが担ぐに決まっているだろう。だから家康は秀頼の死を求めたのであって、それ以外の理由はほとんど考えられない。


こういうオッサン向けの雑誌だと、常識的な歴史の流れすらも現代サラリーマン理論に援用しようとするから、非常に気色悪い。わたしは歴史が好きなのだが、戦国時代と幕末があまり好きになれないのもこのあたりに理由がある。



まあ、こういうのはコラムであってメインの記事ではないはずだから、マシな記事もたくさんあるのだろう。釣られてしまって恥ずかしい限りだ・・・。

成功の法則92ヶ条/三木谷 浩史
¥1,680
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この手のビジネス書では、初めてハードカバーで買った。成功した人の自伝は読んでウンザリ見てガッカリなことがほとんどなので、新刊で買うなんてあり得ない。が、三木谷さんは例の薬事法改悪の件で厚労省に盾ついた のが結構カッコよかったこともあり、つい買ってしまった。


内容は、まあ、こんな感じかな、というところである。本当に、良くも悪くも、王道のビジネス本である。92カ条、ひたすら彼の成功哲学が書かれている。そのどれもが、大切なことというのはよくわかるのだが、残念ながらお行儀が良すぎて、正直にいえば、内容が頭に残ってない。感銘を受けるところもあまりなかった。なんというか、少し、ずれている気がする。陶酔しているような部分も多々ある。詩的な表現も多い。先日読んだ、柳井さんの本に比べてもスピード感が足りない感じが否めない。


しかしこれは、三木谷さんが劣っているということではない。彼は、興銀のエリートでありながらMBAを取って辞め、起業し、今現在その事業を成功させているというスーパーマンだ。一見、「エリート」街道まっしぐらのようだが、本当の「エリート」は、わざわざ興銀を辞めて起業したりしないだろう。そういう意味でも、ただのエリートではなく、アントレプレナーとしての馬力も備えている稀有な人材である。楽天は創業12年(2009年12月期)で既に売上高2,500億円超の見通し であり、成長率で言えばファーストリテイリングと同じくらいか、それ以上だろう。大企業といっていい。大成功の事例である。


しかし、それなのに、考え方が少しオッサンくさく感じてしまうのだ。説教くさいのも、昭和っぽい香りがする。これはどうしてなのだろうか? 誤解してもらいたくないが、オッサンくさいから悪いというのではない。そうではなくて、今をときめくECサイトのパイオニアとして、しかも現役でもっともノっている年齢だと思うこの時期に、なぜこんな引退後の老人みたいな感じがするのが不思議なのだ。わたしがずれているのだろうか。

ホリエモン×ひろゆき 語りつくした本音の12時間 「なんかヘンだよね・・・」/堀江 貴文
¥1,000
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うーん、最近流行りモンばっかり追いかけているような気がする。とくに、ホリエモンと池田先生には影響を受けっぱなしで、われながら赤面する。なんかひさびさに見つけた理想の先輩に、夢中になっている中二みたいだw


この本は、まあ、内容はおなじみの二人だし、1,000円ちょうどだから、買ってもいいんじゃないでしょうか。立ち読みでも読める分量ですが。


ニコニコ生放送とかで二人の掛け合いを見たりするし、この本を読んで改めて思うんだけど、やっぱりこの二人は同じように見えるけど、全然違う。それこそ水と油くらい違うんじゃないだろうか。二人とも天才だけど、やっぱりホリエモンのほうが一枚上の天才という感じ。ホリエモンはなんでか知らんけど、妙に義侠心にあふれてる。で、合理的になんでも言うから、誤解されやすい、と。


一方のひろゆきは、いわばニートの星w たらたら好きなように生きながら、ファイナンシャル・フリーダムを勝ち得るという、ニートの夢を実現する神。本当はまじめな子なのに、わざと不真面目にやってる感じがする。いつも思うんだけど、どうやって金を稼いでるんだろう?


まあ、そんな感じで、「ロスジェネ世代」のヒーローには違いないわけです。


ところが、痛いニュースではホリエモンは非常に不評 w これでもかというくらい酷評されている。書き込みしている人らも若いだろうに、どうして価値観がこんな老人みたいなんだろうか。たかがAVのイベント出たくらいで・・・と思うが、こういうのはもう、はじめっからホリエモンが嫌いなんだろう。反射的に拒否反応が出るみたいな。わたしもモリタクとか亀井さんとかに対してはそうだから、気持ちはよくわかる。でも、既得権を持つ老人が嫌うのはわかるんだけど、こういう人たちはホリエモンの何がイヤなんだろうか。もはや理屈じゃないんだろうな。

希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学/池田 信夫
¥1,680
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もう、何度も読み返してしまって、完全に池田信者になってしまった。こういう一面的な賛同や称賛は良くないのだが、どう考えても、現代社会の処方箋という意味では、この本ほど簡潔かつ分かりやすい本はいまだかつてなかったのだからしょうがない。経済学部の学生でこれを読んでない人がいたら、モグリと読んであげよう。


アマゾンのレビューも徐々に増えてきていい感じだ。アマゾンのレビューを書く人は本当にすごいと思う。素人とは思えない。本書を簡潔に俯瞰しつつ、池田さんに注文もつけるという離れ業を、ほんの数百字でさらりと書いてしまうのだから、プロか、セミプロではないのか。とくに3つ目のレビューア Cropley さんの意見にはわが意を得たり、という気分だ。わたしの場合は Cropley さんのようにイラっとすることはなかったが、池田さんのブログは断片的すぎるところがよくないとは思っていた。「経世済民」を旗印としている割には、あまり庶民のことをおもんぱかっていないし、レビューアの一人が言うような「セルフ・コンフィデンス・バイアス(自分が正しいと思う傾向)」が強すぎる気もする。


池田さんの場合、こういうところがアンチを増やす原因なわけだが、個人的には、こういう「事実は事実であり、それ以上でもそれ以下でもない」という身も蓋もない感じが好きだったりする。かれの場合はどう見ても政治家志向ではないし、別に人望を集めることが目的ではないから、嫌われようがなんだろうが知ったことか、事実はこうなんだからしょうがないだろう、という勢いを感じる。


しかし、売れているらしい。会社の近くのくまざわ書店でも、ビジネス書で1位になっていた。



池田ウォッチャーは、ヒマだったらこの動画でも見てほしい。

藤沢Kazuさんがまとめていたので、リンクしてみます。


金融日記


左側にいる白髪の老人は、井尻千男 というよくわからないおじいちゃんですが、保守系論壇人ということで結構需要があるらしい(だから桜チャンネルのコメンテータなんだろう)。なんというか、議論を深めようとする気ゼロです。パネラとして失格です。しかし、池田先生も時間がなくてしゃべりにくそうですが、もう少しサービスすれば良いのに・・・。

なぜ投資のプロはサルに負けるのか?― あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方/藤沢 数希
¥1,680
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藤沢Kazuさんの本は「純朴なw」わたしのような金融弱者にはきつすぎる。かれの場合、持ち前の率直さで本当に身も蓋もない言い方で、いたいけな金融弱者につらい現実を突きつけてくれる。「ファイナンシャル・インテリジェンスのない馬鹿は賢い人から搾取されるだけだ」・・・この本を読んでもまだ、競馬や宝くじを買おうという気になる人はいないだろう。


(しかし、あとがきで、みんながファイナンシャル・インテリジェントな行動を取ると「合成の誤謬」により経済が衰退する・・・なんていう皮肉を忘れないKazuさんが素敵だ。こういうことをシニカルに言うから、敵を作るんだよw Kazuさんもどっかでコメントされてたけど、絶対、わざとやってるね。)


世にあるカツマー本やら何やら、この手のファイナンシャルリテラシ系本は腐るほどあるが、わたしはこの藤沢Kazuさんの本から入ったので、ちっぽけな自尊心が大いに傷ついたものだ。他のひとはもう少しやわらかく書いているが、Kazuさんは「本当に心からやさしい」人なのだろう。いちいち事実を捻じ曲げて大衆に迎合したりしないし、オブラートに包んでごまかしたりない。そういう意味では少々「馬鹿」には読むのがきつい本だが、多くのレビュアが言うようなランダムウォーカーの原著(訳書も含む)やらを読むよりはわかりやすいと思う。たぶん本格的に投資をしようという人は、当然ランダムウォーカーを読むべきなのだろうが、わたしのような初心者はまずKazuさんの本から入った方がいいのではないだろうか。ただし、変にプライドが高くて、謙虚さが足りない人は読んでいて頭にくるかもしれない。カルシウムを十分取った上で、時間と余裕のたっぷりあるときに読むことをお勧めする。


ちなみに「金融日記 」だが、最近、更新頻度が下がってきたような気がする。コメントが荒れすぎるから、面倒になったのだろうか?

貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する/橘 玲

¥1,680

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きっかけは、「金融日記 」で藤沢Kazuさんが紹介していたから。電車内の広告でも宣伝されていたので見かけた方もいるだろう。その道では知らない人はいない(当たり前だ)、ファイナンシャル・リテラシの伝道師(?)こと橘玲(たちばなあきら)氏の人生設計指南本である。ろじぱらワタナベさんも読んでいる ようだ。この本は出たその日ぐらいに買って、すぐ読んだ。


確定申告をしたことがない、というような根っからのサラリーマンは、本書を読めば衝撃を受けるだろう。言うまでもなく、わたしも相当ビビった。


これは「マイクロ法人」という方法を使った節税のすすめである。一時期流行ったというから、リテラシの高い人には「よくある節税対策」という感じなのだろうが、当然、わたしは初めて聞いた方法だ。しかし、これは日本ではやりたくても出来ない類のものだ。今やっている業務と同じことをしながら、法人格を手に入れて、家族に給与支払いをしたり、費用を損金処理するなどして、社会保険料を安くあげ、税金をゼロに近づけて可処分所得を増やそうという試みなのだが、これをやるには、今、勤務している会社が同じ条件で「わが社」に発注してくれないといけない。これがいかに荒唐無稽な話であるかは、いまさら説明するまでもないだろう。


アマゾンのレビューの多さが分かる通り、著者は大変人気者だ。みんなの意見も、「実現可能性はゼロに近いが、こういう方法があるということを発見し、実践しているのはスゴイ」というものだ。わたしも同じである。実際、この本に書いてあるようなことを現実にやっている人は皆無だろう。(やっているとしたら、もとからフリーランスなのではないだろうか) しかし、こういうことは、知識として知っているだけでもずいぶんと違うものだ。何より、サラリーマンという生き方しか知らない人は、こういう生き方があるというのを知るだけでも世界がずいぶんと広がるだろう。



以下は著者の過去のベストセラーだそうだ。本書に影響を受けて一応買って読んだが、こういうのは実際に実地でやってみないと知識が身に付かないものだ。橘さんに影響を受けて、この手の本は他にもずいぶんと読んだが、いまだに税務署にすら行ったことがない。確定申告もできないのに「黄金の人生設計」も何もあったものではない。わたしは当分「奴隷」の生活を続けることになるだろう。


関係ないが、講談社プラスアルファ文庫の装丁が格好いい。

世界にひとつしかない「黄金の人生設計」/橘 玲
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「黄金の羽根」を手に入れる自由と奴隷の人生設計 (講談社プラスアルファ文庫)/橘 玲
¥820
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若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)/城 繁幸
¥735
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城さんが最初に話題になった時はスルーしていた。残念なことをしたものだ。例の「内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 」が出たときに本屋で立ち読みしたのだが、その本の読みにくさに耐えかねて購入を断念したのだ。内容をもって判断すればよかったのだが、まだわたしも労働市場を云々するほど年を取っていなかったので、書いてあることの意味がわからなかった。(今はなんとなくわかるが、結局、富士通本はまだ読んでいない)


本書は、日本の労働市場における「終身雇用」と「年功序列制」が原因となって引き起こされる労働市場の不健全性について書かれたものだが、読み終わってから相当経ってしまったので内容を忘れてしまった。もう少し正確に言うと、著者のブログ とかを読んでいたり、他の人のブログとかを読んでいたら、労働市場に問題があることが自明のように思えてきて、本書に書いてあるスコープがどこからどこまでかわからなくなってしまった。


今はちょうど10月、「新卒w」の就職活動がいよいよこれから活発になる時期だ。「就活」中の人はぜひ読むべきだろう。城さんの本は読みやすいので、これから飛び込む「社会」の仕組みを知るうえで、格好の入門書になると思う。



3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書)/城 繁幸

¥756
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こちらはどちらかというと出版社主導(?)の二匹目のドジョウ的な本で、内容は大したことない。どうやらWebの再録のようだ。「昭和的価値観」というのは著者の思想を語る上でのキーワードなので、覚えておくといいだろう。


城さんの言いたいことはだいたい理解できた。わたしですらそうなのだから、今後のネタはどうするのだろうか、と余計な御世話だが、気になるところだ。まさか同じようなことをずっと言い続けていくわけにもいくまい。そういう意味で、今後の城さんの動き方には、非常に注目している。(新しい分野に挑戦したりするのだろうか?)

一勝九敗 (新潮文庫)/柳井 正
¥460
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すさまじいバイタリティで、字を追っているだけで疲れた。


本書はもはやだれでも知っている「ユニクロ」の成長譚であり、また失敗の記録である。はっきり言って、これを真似できたら、わたしにも明日から世界に打って出ることのできる経営者になれる。しかし、その日は永遠に来ないだろう。


柳井さんの経営のキモは至ってシンプルだ。常に走り続ける。変化し続ける。現状に満足しない。立ち止まらない。楽天の三木谷さんも同じようなことを言っていたが、柳井さんの場合はそのレベルが段違いに思える。こうした「経営標語」は、言うは易く行うは難しの典型だが、実際どのくらいの企業がこれと同じようなことを出来るというのだろうか。わたしなど、文字を追っているだけでしんどいのに、実際にこれと同じ経営をしろと言われたら絶対に「結構です」と答えるだろう(年棒5億とか言われても無理。凡人がやったら確実に過労死する)。


たぶん多くの人も、絶対、途中で日和見になるか、脱落するだろう。だってファーストリテイリングの幹部ですら柳井さんについていけずに、どんどん脱落しているのだから。柳井さんはその辺の心境をはっきり書いていないが、長く苦楽を共にしてきた腹心の部下が「やっぱりひよったか・・・」と、内心は結構こたえたのではないだろうか。これこそがリアルな国際競争なのだろうが、日本的なメンタリティはこういうのに非常に弱いと思う。ここでブレずにやれる柳井さんは、友人としては微妙だが、経営者、リーダとしては超一流だ。


残念だが今の「ロスジェネ」世代はこれを読んでも共感しないのではないだろうか。行間からにじみ出る超競争的なバイタリティが生理的に受け付けないような気もする。日本が経済的に衰退していくのも、こういうエゴイストが自然発生的に出てこないところにあるのかもしれない。仮に、万が一労働市場の流動化が促進されたとしても、GDPを押し上げるようなリーディングカンパニーがいくつかないと残念な結果になる。


日本のビジネス書を読むなら、オーナー社長のが断然面白い。お勧めです。


ちなみに後ろの方にある「企業家十戒」「経営者十戒」は、読んでもいいが、サラリーマンは読んだだけでめまいがすると思う。疲れているときは読むべきではないw