超自己満足的自己表現 -449ページ目

ドリーム・クエスト (29)陸上幕僚長の退官式

「弐條!早く出ないと間にあわんぞ!」


もう3月の末だ。

随分春を感じる日々。僕は同僚代議士で、義理の兄弟である和気さんに声をかけられ、休憩時間を使って国会議事堂を出ることになっている。休憩時間以降は欠席する。


早退早退!

ま、こんなことは初めてなんだけど・・・。先輩議員に挨拶をして僕たちは議事堂南にある衆議院門に横付けされた和気さんの私設秘書、二階堂さんの運転する車に乗り込んで、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地へ・・・。


そう今日は綾乃のお父さんの退官式。今日定年退官するんだ。お父さんは陸上自衛隊トップの幕僚長。やはり盛大な退官式だろう。僕と和気さんは家族として出席する。もちろん綾乃と綾乃のお兄さん夫婦、彩ちゃんも来る。朝霞駐屯地にいるお兄さんはこの日のために休みを取ったらしい。


市ヶ谷駐屯地の正門に着くと、前にはうちのプリウス・・・。ああ、綾乃たちだ・・・。前もってもらっていた許可書を見せて、車中荷物検査。ああじれったい・・・。さ、和気さんの車の番だ。国会議員の特権で検査無しで入れないだろうか・・・。和気さんは珍しくイライラしているようだ。


「早くしろ!」
「まあまあ和気さん慌てずに・・・。」


ホント僕はのんびりだなあ・・・。


何とか終わった車内検査。門番の自衛官に指定された駐車場へ向かう。駐車場では綾乃と彩ちゃんが待っている。


「和気さ~~~ん!」


彩ちゃんが手を振り、和気さんのところに走ってくる。ひと月前、正式に結婚したといっても、すれ違いの日々らしい・・・。ホント久しぶりに彩ちゃんに会うんだって。彩ちゃんは満面の笑みで和気さんを見て和気さんの腕に手をかける。本当に嬉しそうな顔だね・・・。綾乃も僕のほうに歩いてきて微笑んだんだ。


お兄さん夫婦も合流。すると、一人の自衛官がこちらに走ってくる。するとお兄さんがその自衛官に声をかける。


あ、例の清原さんだね・・・。久しぶりだ・・・。


「清原先輩、お久しぶりです。」
「おう!源。弐條さんに・・・和気さんですね。お待ちしておりました。さ、こちらへ・・・。」


昔いろいろあったんだよね・・・。この男と綾乃。いろいろ疑惑を持ったこともあった。

親友の響貴の妹と一時期付き合っていたらしいんだけど結局破局。

今34歳の独身。

いまだに綾乃のことを想っているんだろうか・・・。

綾乃は下を向いて僕の後ろを歩く。


「清原先輩、まだ結婚しないんですか?」
「もうしないよ。このまま一人でいるのが気楽でいい。」


そういうと綾乃のほうを見ているんだよね・・・。

やはり未だに・・・。

もちろん綾乃は僕と結婚して子供を産んでさらに女に磨きがかかった24歳。若き代議士夫人としてよくやってくれている。付き合いも大変なのに嫌とも言わないで僕のためにがんばっているんだもん。


綾乃は清原さんと何かあるのかな・・・。

目をあわそうとしないんだよね・・・。

時折溜め息なんかついたりしているし・・・。


僕たちは、清原さんに講堂(体育館かな)の退官式会場に案内され、家族用の椅子に座る。続々と退官式に出席する自衛官が入ってくる。やはり結婚発表してもいまだ人気がある彩ちゃんこと北野彩夏がいるからだろうか、若い一般自衛官たちが騒がしくする。


(おい!あれって北野彩夏だよな・・・。どうしてここにいるんだ?)
(もしかして幕僚長のお嬢さんか?お嬢さんは2人いるしな。)


幹部自衛官である清原さんが騒いでいる自衛官を怒鳴っている。


「静かにしろ!今日は幕僚長の退官式だぞ!わかっているのか!」


清原さんの一言で辺りは静まる。部隊は違っても位が上の幹部の言葉は絶対だからね・・・この世界は・・・。

源陸上幕僚長退官式
退官式が始まる。いろんな人の挨拶から始まり、そして陸自ナンバー1のお父さんの挨拶。そして次期幕僚長に任命された人の挨拶があって、そして家族による花束贈呈。一人一人紹介され、渡していくんだ。


『東部方面朝霞駐屯地所属後方支援部隊長、源博雅陸二佐殿そしてご夫人美月様』


綾乃のお兄さんはお父さんに花束を渡すと、お父さんに向かって敬礼をする。お父さんも敬礼をし、お兄さんの肩を叩く。


『内閣総理大臣広報担当補佐官衆議院議員、弐條雅和殿そしてご夫人、綾乃様。同補佐官衆議院議員、和気泰明殿そしてご夫人、彩子様・・・。』


僕たち4人一斉にお父さんに花束を渡し、一人一人と握手をするんだ。お父さんは珍しく泣いているんだよね・・・。


そして盛大な拍手。ホント大きな拍手・・・。お父さんはみんなに慕われた幕僚長だったしね・・・。厳しい人だったけれど、人情があって・・・・。僕もお父さんのことを尊敬しているんだよ。ま、以前の事故で助けていただいたって事もあるけれど・・・。


無事に退官式が終わると、たくさんの自衛官に囲まれて、見送られる。ここには陸自のほかに、海自、空自も入っているから、各幕僚長や上層幹部クラスの自衛官が見送りに来ているんだよね・・・。さらに防衛大臣まで?


お父さんは各幕僚長や防衛大臣と握手を交わしてお互いを称えあっている。ホント和やかの雰囲気でお父さんは市ヶ谷駐屯地を去った。きっとお父さんの人柄なんだろうね・・・。


「なあ弐條君。今晩の食事会なんだけど、清原君も呼んでいいだろうか・・・。」
「え?」


僕は今日のお父さんの定年退官のお祝いの席を用意したからだろうか、僕が運転する帰りの車の中でお父さんは僕に言ったんだ。清原さんはお父さんが一番可愛がっていた部下だからね・・・。以前は家族ぐるみの付き合いをしていたし・・・。しょうがないか・・・ちょっと嫌だけど・・・。


「ええ、構いませんよ・・・会場に連絡をしておきます・・・。」
「そうかありがとう。私も清原君に連絡を入れるよ。」


お父さんは早速清原さんに電話をしていたんだ。もちろん清原さんは来ることになって、僕と綾乃が結納を交わしたホテル内の料亭にすぐに追加の連絡を入れた。


なぜか綾乃は複雑な顔をして下を向いている。

なんなんだろうこの胸騒ぎは・・・。

ドリーム・クエスト (28)公になった二人の関係 2

 俺たちは夕方の新幹線で東京に戻った。


品川駅に着くと改札に彩子のマネージャーが待っていた。俺はマスコミ用の写真データを渡して、ここで彩子と別れる。俺は二階堂と共に赤坂にある議員宿舎に戻らなければならないんだから・・・。その日のうちに彩子の事務所はマスコミ各社にFAXを流す。


「マスコミ関連会社各位  当社所属タレント北野彩夏(21)は昨日内閣補佐官であり、衆議院議員和気泰明氏(27)と京都北山の某教会にて挙式いたしました。詳しい内容につきましては後ほど記者会見をさせていただきます。」


 俺は議員宿舎に着くと早速パソコンを立ち上げて北野彩夏のブログを見る。書いてるかいてる・・・。


『皆さんこんばんは!(*^ー^)ノ

昨日はブログUPしなくてすみませんでした。(。-人-。)

そういえば一昨日のブログで、京都でモデルの仕事って書いてましたよね。

でも実は私の大好きな人と挙式していました(///∇//)

でも私は知らなかったんです。仕事だと思っていったらそこには彼がいて・・・。実は結婚式だったんですよ。ま、半分仕事だったんですが・・・。携帯の写真で見にくいかもしれませんが、こういう感じです(///∇//)

お相手は代議士の和気泰明さん。2年前から付き合っていました。

当時私は普通のモデルで、和気さんは某代議士の秘書さんでした。だから私は和気さんが代議士だから結婚したんじゃないんですよ。(*^.^*)

和気さんったら私のための年末から20キロもダイエットしてくれてね。太目の彼が普通の彼になりました。そしてかっこよくなったのよね・・・。(//・_・//)


また記者会見とかできちんとお話しますので、ちょっと待ってね。とりあえずご報告まで。
北野彩夏。 


あ、一応和気さんのHPのリンクを張っておきます。(/ω\)  』


ええ、リンク張ってるの?


和気HP 俺は即自分のHPを見る。

かなりの勢いでアクセス数が増えてるんだよね・・・。

写真はダイエット前の写真。ああ写真を差し替えないといけないな・・・。

おおサーバーダウン寸前かも・・・。

弐條と違ってまったく今までメッセージが入らなかったのに・・・すごい数。


祝福メールならいいが、文句たらたら書いてるメール、脅迫まがいのものまで・・・。う~~~ん明日は二階堂に議事堂まで送ってもらうか・・・。報道陣もいそうだしな・・・。


「二階堂、今からで悪いけれど、適当に文章作っといてや。それを近所のコンビニでたくさんコピーしてさ、もし明日の朝報道陣がいそうだったら俺の代わりに配っといてや。」
「了解。」


ほんま二階堂は有能なやつや。俺がいった事を疲れているのに、いやとも言わず、自分のパソコンを出して仕事を始める。そして俺がHPの更新中に原案を出してくる。


「んん・・・これで頼むわあ・・。ひとまずプリントアウトしてさ、100部コピーしてきてや。領収書ももらってこいや。」
「了解。」


30分ほどしてコピーした紙と、夜食と朝食を買ってくる。ホントに気が利くいいやつだ。俺は夜食、朝食分の代金を渡して、領収書を受け取る。もちろん領収書は経費落としという事で、それ専用のファイルに入れておくのを忘れない。

ま、こんなやり取りはおいといて、俺は今日二階堂が撮ってくれた選りすぐりの写真から、トップページの写真を今の写真に変え、プライベート日記のところに彩子との婚礼写真のスナップを載せておいた。彩子が洋装を載せていたから、俺は装束を・・・。きちんと解説も載せて。

和気HP2「昨日、私、和気泰明は挙式いたしました。

お相手はタレント北野彩夏さん。

我が和気家は代々昔ながらの装束で婚礼写真を撮るのが慣例でして、私は束帯を、彩夏さんは本式の十二単を着て撮影いたしました。

うちの秘書が撮った素人写真ですが、ご覧ください。

和気泰明」


はじめは載せるかどうか悩んだけどな・・・。

とても彩子がきれいに写っているスナップがあったから、これに決めたんや。


さ、明日、朝が怖いな・・・。


次の日、俺は朝早く起きて、身支度を整える。

さすがいつものように二階堂は朝が早い。

昨日、登院は車でって伝えておいたから、多分車をきれいにしてくれているんだろう。

あいつはそういうことするのは好きだからな・・・。


俺は車には疎いけれど、去年の春二階堂と相談して買った黒のアリスト。

買ったのはいいけれど、結構忙しすぎてあまり乗っていない。実は埃まみれ・・・。きっと二階堂は朝から洗車してくれているんだろう・・・。案の定、二階堂は汚れたタオルをかかえて戻ってきた。


「車洗車しといたぞ。ばっちりワックスもしといたからな。」
「で、外の様子は?」
「そうだな・・・。ちらほらいるぞ・・・。報道関係者。俺は顔を知られていないから、声さえかけられなかったけどな・・・。覚悟しとけよ。」
「んん・・・。」


朝食をとると、さあ出勤準備。きちんと髭を剃り、寝癖を治す。

二階堂は準備が整ったようで、身支度中の俺に声をかける。


「和気、車を正面玄関ロビー前までまわしとくから、早く降りて来いよ。」
「んん・・・。頼むな。コピー忘れるなよ。」


二階堂かスーツにIDをつけながらコートを着て部屋を出て行った。

俺も忘れ物がないか確認し戸締りをして下に降りる。俺は登院前に官邸へ行かないといけないので、ほかの代議士よりも早く宿舎を出る。案の定マスコミがいっぱい。玄関ロビーから出てくると一斉にマスコミが俺に近づいてくる。二階堂は運転席から飛び出してきて、車のドアを開け俺を乗せドアを閉める。


「和気さん!北野彩夏さんとのことで一言!」
「和気さん!」


二階堂は昨日作ったコピーの半分をマスコミの中の一人に渡す。


「これに和気補佐官の言葉が書かれておりますので、勘弁してください!」


二階堂はそういうと、車に詰め寄ってくるマスコミをどかしながら、運転席に乗り車を出す。


「官邸まで頼むよ。ごめんな二階堂。」
「いやいい。」


赤坂2丁目にある議員宿舎は歩いて官邸に行ける距離なんやけど、今の状況じゃ行けんやろ。

二階堂に官邸前で降ろしてもらって、官邸内に入り、自分のデスクに座る。もう同僚弐條は来ていた。


「和気さんおはようございます。朝から大変そうですね・・・。」
「ああ。朝からマスコミに囲まれたよ。」


ま、ここではみんな俺が北野彩夏と結婚していることを知っているから大騒ぎにはならないんだけどね・・・。

昼過ぎからは彩子が記者会見をするって言ったから、結婚会見は彩子のほうに任せよう・・・。

俺は国会で忙しいからね・・・。

はあぁ・・・・・・・


ドリーム・クエスト (28)公になった二人の関係 1

 1日目の挙式兼撮影を終え、俺と彩子はホテルにたどり着く。


疲れたけれど、今日は両家みんな揃っているから、夕食は両家会食となった。

俺の家族は父さん、母さん、兄貴夫婦、姉貴夫婦、そして弟の敏明。

彩子の家はお兄さんは自衛隊演習のため来れなくって、お父さんと彩子のお姉さんとその夫同僚の弐條。


うちの母さんが出席してくれるなんて信じられなかった。ずっと俺たちの関係を反対していたのに。

敏明が説得してくれんやろか・・・。

母さんは機嫌よさそうに彩子と話していた。

ひと安心だな・・・。

いろいろな和やかな雰囲気で会食が進んでいく。


「泰明君、春からは南麻布のマンションに彩子と住みなさい。」


と、彩子のお父さんは言う。彩子のお父さんは3月24日付で陸上自衛隊を定年退官する。そして神戸の家におばあさんと一緒に住むというのだ。


「ローンは完済しているし、あとは管理費とか固定資産税を払うだけだから安心していいよ。もちろん名義は泰明君に変えるから。ま、2人の結婚祝いかな・・・。」


ホントにお父さんには感謝せなあかんな・・・。

ま、会期が終わるまで議員宿舎にいるとするか・・・。

二階堂と同居やしな・・・。


次の日は例の衣装を着る。

和気家代々の平安装束。

彩子は朝早く起きて髪を黒く染め、ストレートにする。


撮影場所は京都でも有名な神社の境内。

何とか無理を言って撮影の許可を得たらしい・・・。

社務所を借りて着付けてもらう。


今日は父さん母さんが見守っているんや。

ホント彩子の十二単は本式なので相当重いと聞いた。

俺も普段着ない束帯を着付けてもらいながら、父さんと話していたんや。


「泰明、お前がきちんと和気家の慣例を守ってくれるとは思わなかったよ。こうして泰明の束帯姿を見れるなんてな・・・。ホントいいものだ。」


着付ける人はうまいのか全然苦しくない。


準備が整うと、撮影場所に・・・。

するともう彩子は撮影場所に立っていた。


ああ、これは夢でみたことがある・・・。

京都に墓参りに来たときにみた昔の夢・・・。
彩子十二単
彩子は撮影用に敷かれた赤い敷物の上に立ち、スタッフによって、きれいに写るように裾などを整えられている。


ホントに要望通りの垂らし髪に冠をつけた古式のスタイル。

もともと彩子の髪は肩甲骨下まであるので、それより下は付け毛。

彩子の白い肌に真っ赤な紅をつけて、どう見ても平安時代のお姫様って感じ・・・。


さすがモデルのプロだ。

重いはずなのにそんな表情など見せていない。


彩子は俺の束帯姿を見て微笑む。

俺はそっと彩子の側に立って背筋を伸ばす。

そして彩子の顔を見て微笑む。


今日は日曜日だから、観光客が多い。もちろん外国人御一行も多いんだよね・・・。
和気束帯
 突然の束帯と十二単の撮影にみんな足を止め、写真を撮る。誰もここにいち代議士と、人気タレントが婚姻写真を撮っているなんて気づかないだろうね・・・。


俺は杓(しゃく)を持ち、担当者に言われたようなポーズをとる。

時折風で動いた裾や髪などを直しにスタッフがやってきて直していく。


そして撮影が始まる。


カメラの後ろにいる父さんと母さんは俺たちの晴れ姿に涙ぐんでいる。

そしてたくさんの人人人・・・。

宮司さんもやってきて、嬉しそうにうなずいている。


「はい!お疲れ様でした!!!」


カメラマンが声をかけると、彩子は大きく息をして顔をゆがめる。

そしてスタッフからの大きな拍手。

つられてギャラリーまで。


「ああ終わった!!!重かったあ!!大変だね・・・昔の人は・・・。」
「いつもじゃないよ・・・。こんなの着るの・・・。」
「和気さんかっこいいよ・・・。似合うよね束帯。」
「彩子もホントに平安時代のお姫様のようだよ。」


もったいないから、二階堂にスナップ写真をいっぱい撮ってもらった。

二階堂はとても満足そうに俺たちを見てたよ。

時間かけてきつけたのにもう着替えないといけないんだよね・・・。


母さんも彩子の控え室で彩子の十二単姿をいっぱい撮っていたらしい。

もちろん俺も控え室で数枚撮ったよ・・・。


着替え終わると俺はスーツに着替えて、緊張のため忘れていたんだけど、宮司さんに名刺を渡して今日のお礼を言った。

もちろん俺の名刺を見て驚いていたんだよね・・・。代議士なもんで・・・。


彩子も着替え終わり、染めた黒髪を揺らしながら俺のところに走ってくる。そして俺の腕を掴んだ。


「終わったね!和気さん!これから何するの?」
「お昼食べてさ、昨日と今日の写真を選びに行こう。」


今はいいよね・・・デジカメだもん。すぐのパソコンとかで見る事が出来る。マスコミとかに結婚報告の写真を配らないといけないからね・・・。


「今日帰るんだよね・・・。もう1日和気さんと京都にいたかったな・・・。」
「しょうがないだろ、明日は議事堂に行かないと。通常国会の会期中だから・・・。」
「ああ残念・・・。また会えなくなるの?」
「ううん・・・。堂々と議員宿舎に来るといいし、俺も南麻布のマンションに行くよ。」


彩子は満面の笑みでこの俺に飛びついた。


「さあ行くぞ。」


父さんが俺たちに声をかけ、神社を出た。

ランチのあとは二階堂の実家の会社に言ってうちの両親と写真を眺めながら、ああでもないこうでもないといって写真を決めていく。さすが彩子はプロだ。失敗した顔などない。


マスコミ用にはお気に入りの昨日の写真を使うことにした。

一番きれいで微笑ましく写っているんだ。

一番俺たちらしい笑顔の写真。


「二階堂さん。今回の請求書は二階堂に渡してください。改めてお振込みを・・・。」
「いえいえ・・・いりませんよ。今回は来年に向けてのモデル撮影を前提にしたのですから・・・。宣伝費用と思えば安いもの。特に北野彩夏さんのモデル費用なら相当かかりますからね・・・。ギャラを差し上げたいくらいですよ・・・。」


なんと無料だって???

なんか法律に引っかからないだろうか・・・。

ちょっと心配・・・。

帰ったら六法全書を見ないと。

ドリーム・クエスト (27)京都での仕事

 「彩夏、久しぶりにモデルの仕事だよ。」


後期試験が無事おわり、春休みに入った2月最終週のはじめ、そういってマネージャーから電話が入った。

ホント久しぶり。モデルの仕事って・・・。


なんと来年春用の新作のウェディングドレスをたくさん着るんだって・・・。

京都まで仕事って珍しいな・・・。

京都か・・・。


ああはじめて・・・ウェディングドレスを着るのって。


依頼主は京都で大手のウエディング総合企画会社。新作としてカタログに載せたいらしい・・・。めずらしく1泊2日のお仕事。


和気さんに週末会えないのは辛いけど・・・。

もう随分会っていないな・・・。

大阪での出来事以来だもん。


最近内閣府関係の会見は弐條のお兄ちゃんばかり出てるし、元気にしてるかな・・・。まあメールのやり取りとかはしているから元気なんだろうけれど・・・。


 私は指定された時間に品川駅の新幹線のホームに着いた。朝早い6時台の新幹線。9時前には京都に着く。

いろいろメイクとかで時間がかかるって聞いたからね・・・。


新郎役とかいるのかな・・・。もしかして私一人の撮影?


京都に着くと、依頼主の会社の人が迎えに来ていた。

私はマネージャーとともに用意された車に乗る。

2月末だから結構京都は冷える。

でも今日は違ってなんだか小春日和・・・。

この前まで雪が降っていたと聞いたのに、暖かい春のような陽気で・・・。


ロケ地は京都市の北山通り沿いにある小さな教会。結構お洒落で素敵なの。もちろん今日一日貸切。その一室を借りてヘアメイクをする。側には5点ほどの素敵なドレスとそれにあわせたブーケ。そして小物たち。手馴れたスタッフでテキパキと支度をする。


ここに入る前にみた撮影隊は本格的なスチール写真撮影用の人たちで、きちんと挨拶をしたわ。

ホント久しぶりモデルのお仕事・・・。

事前にサイズを報告してあったのか、ドレスのサイズはぴったりで、本当に結婚するみたい・・・。

4点までは教会前の素敵な庭で一人でいろいろポーズをつけて撮影・・・。

道路に面しているためか、ギャラリーが増える。

もちろん土曜日だもん。


(あれって、北野彩夏だよね・・・すごい仕事中???)
(超可愛い!)
(テレビで見るよりも細い!)


私はいろいろなポーズと表情で何枚も写真を撮った。

カメラマンは「いいよいいよ!」って言ってくれて、スタッフもさすが元カリスマモデルという。


また私は控え室に入って最後の1着に着替えるんだけど、もうお昼を過ぎて、おなかすいたから、ひとまず休憩。

ちょこっと軽食。

おなかいっぱい食べたら体の線に出ちゃうから、少しおなかに入れておくだけ。

終わったら食べたらいいしね・・・。


さあ仕切りなおし・・・。またメイクからはじめる。


「次は新郎もいるんですよ・・・。」


と、スタッフが微笑みながら私に言った。

きっとどこかのモデルさんよね・・・。

よくあるパターンだもの・・・。

イケメン系の・・・。


最後は私のお気に入りのAラインの素敵なドレス・・・。

清楚なんだけど、どこかのお姫様みたいな・・・。

今回はベールもつける。

本当に今から結婚するみたいな感じで・・・。


次は教会内で撮影なんだって・・・。

私は支度が整い、撮影場所と新郎役の準備が整うまで控え室で待つ。


「北野さん、どうぞ!」


女性スタッフが私に声をかけ、スタッフに手を引かれながら、教会の十字架の前へ向かう。

やはり何でこのドレスを屋内で撮るのかわかったわ。

だってドレスの後ろの裾が長いの。そしてベールも長い。私の後ろにはスタッフが数人付いて、裾がどこかに引っかからないかみているの。それほど長い立派なドレス・・・。


礼拝堂内に入ると、十字架の前で新郎役の人が立って十字架を眺めていた。

モデルじゃないよね・・・。

モデルのような8頭身じゃないもん・・・。

もしかして一般公募の人?


すらっとしているけれど結構肩幅があって・・・・。

あの後ろからみた感じ誰かに・・・ううんあの人がいるわけないもん・・・。

だって今日は仕事だよって・・・。


すると私がバージンロードの中間に来たころ、その人は私のほうを振り返るの。


「わ、和気さん????」


そう相手は私の旦那様、和気さんだった・・・。

そういえば和気さんはダイエットしているって言った。

すごく痩せて以前に比べてかっこよくなっている。


和気さんは私の顔を見て微笑んだ。私も和気さんの顔を見て微笑み、私は和気さんのもとに歩き出した。和気さんも私のほうへ来ると、私を抱きしめてくれた。


「驚いた?彩子。」
「和気さん・・・。すごく痩せて・・・。」
「うん、20キロ落とした。彩子、すごくきれいだよ。良かった似合って・・・。さ、おいで・・・。」


和気さんは私の手を引いて十字架の前へ・・・。

後ろを見てみると、和気さんのお父さん、お母さん、お兄さんお姉さん敏明君。そしてうちのパパ、弐條のお兄ちゃん、お姉ちゃん、そして二階堂さんが立っていた。


「撮影のついでに挙式も出来ることになったんだよ・・・。」


そういうと、和気さんは私の手を和気さんの腕にかけて、一緒に十字架の前に立った。そして挙式が始まった。神父に誘導され、聖歌や誓いの言葉、和気さんが用意してくれてたんだろう結婚指輪。和気さんが私の薬指に結婚指輪をはめてくれ、私も和気さんの指にはめる。そして私は少ししゃがんで和気さんがベールを上げて誓いのキス・・・。


これは模擬結婚式じゃない。

私と和気さんの本当の結婚式なんだ・・・・。

もちろん式最中はプロのカメラマンが何枚も撮ってくれている。

式が終わり、祭壇の前で、撮影・・・。

いろんな表情で・・・。

和気さんはとても緊張していたけれど、私の笑顔を見て緊張がほぐれたのか、微笑んで私の顔をみた。

これってモデル用の撮影?それとも・・・。
和気&彩子挙式
祭壇前の撮影を終えると、私たち2人は礼拝堂を出てごく身内の人からのライスシャワーを浴び、祝福されるの。そして身内だけ教会前で記念撮影・・・。本当に仕事半分挙式半分で、嬉しかった・・・。やっと和気さんと正式に結婚できたんだもの・・・。


私たちは嬉しさのあまり、人目を気にせずにキス。もちろん前の道を行き交う通行人は足を止め、私たちのことを見て驚く。


「もういいんだよ、公にして・・・。」


って和気さんが言った。


「え?」
「事務所、そして就職先、スポンサーから許可が出た。もう公にして、堂々と二人で過ごそう。もうこそこそ過ごすのはごめんだ。いいね、公にして・・・。」
「うん!」


あたしは和気さんに抱きつき、私からキス。身内のみんなは本当に微笑んで私たちを祝福してくれた。もちろん沿道の見知らぬ通行人たちも・・・。祝福の大きな拍手に包まれて、私たちは正式に夫婦になった。


ああこれからは和気さんの正式な妻としている事が出来る。

そして堂々と和気彩子として就職できるんだ。

嬉しくてたまんないよ・・・。


ありがとう和気さん、そして祝福してくれたみんな。私は幸せになるんだから・・・。

ホント和気さんっていい人だね。だってこうしてドッキリ挙式をしてくれるんだもの。和気さんらしいね。

ドリーム・クエスト (26)和気泰明の計画

 さあ通常国会が始まる。今年は俺の私設秘書・二階堂が会期中、上京してくる。

公設秘書2人では手が足りないからだ。

二階堂は議員会館の俺の事務所に詰めてくれる。会期中はこの俺と議員宿舎に同居することになるんだけど・・・。ま、俺の場合週末は南麻布に戻ろうとは思っているんだけどな・・・。


明日は会期開始前々日、朝一番の飛行機で二階堂はやってきた。もちろんたくさんの荷物は前もって宅配便で送ってきている。三ヵ月の同居だもんな。ずっとソファーで寝てもらうのもなんだから、簡易ベッドでも買おうか・・・。折りたたみ式のよく通販で売っているやつ。3LDKの部屋やから。一部屋空いているんで、そこを使ってもらおうと思っている。

「わかってるやろな。家賃はいらんから、光熱費は割り勘やで。そして女連れ込みも・・・。ここは議員宿舎やからそれなりの行動はせなあかん。近所には元総理の弐條さんもいるし・・・。この階は結構えらいさん多いから。気をつけろや。」
「へ~~あの弐條元総理がこんなとこいるんやね・・・。ええとこ住んでると思ったよ。」
「あの人は独身やし、息子の家に住むのはね・・・。同期の弐條は誘ったそうやけど・・・。」


俺は二階堂と共に買出し。宿舎には俺と彩子の食器しかないから、食器も買わないと・・・。

男同士の同居・・・。

なんか変な感じ。

二階堂用の小さな机も買わないと仕事できんしな・・・。


ホームセンターに行っていろいろ買って帰ってきた。

二階堂の部屋を作り終えるのに1日かかった。

二階堂はありあわせものもで夕飯を作ってくれたんや。

やはり地元で一人暮らししているだけあるわ。

彩子には負けるけど手際がいい。男の料理ってやつかな・・・。

俺と二階堂は二階堂が作った常夜鍋をつつきながら男2人の夕食。


「和気、ダイエットしたんか?痩せたよな・・・。」
「んん・・・。目標20kgや。ひと月で10キロ落とした。高校時代の体重にしたい。」
「そうか・・・高校時代は普通体形やったもんな・・・。再会した時は驚いたよ。」
「んん・・・彩子と出会ってから10キロ近く太ったしな・・・。」
「でもなんで?」
「彩子と結婚写真だけでも撮ろうと思って・・・。年末の体形じゃ彩子と釣り合わんからな・・・。俺も少しぐらいかっこよくならんと。」
「ふうん・・・。」


そうや、彩子の元彼みんな痩せ型あるいは普通体形。俺だけ太ってるんやから・・・。痩せて彩子を驚かせるつもり。

彩子に似合う体形になってから、彩子と写真を撮って公にするなりなんなりする。それが俺の目標。

最近痩せたせいか、以前のスーツが入るようになった。

年末実家の母さんが作ってくれたスーツも入るようになった。


(かあさんったら俺が私設秘書時代の体系のものを作ったから入らんかった・・・。)


あと10キロ痩せたら、全部新調せなあかんやろな・・・。


「二階堂、お前顔広いやろ、どこかで結婚写真を撮ってくれるとこ知らんか?もちろん貸衣装して・・・。」


二階堂は呆れた顔をして俺に言う。

二階堂指差し
「何で俺にいわへんの・・・。俺の実家・・・そういうことしてるやろ、京都で・・・。」


あ・・・そうや灯台下暗し・・・。二階堂の家は京都でも有名なウエディング総合企画会社・・・。今はやりの邸宅ウエディングから、簡単な写真まで・・・。ウエディングに関する全般をしてくれる大きな会社・・・。


はじめっから二階堂に頼めばよかった・・・。


二階堂は男ばっかり3兄弟の3男。


「じゃ、頼んでいいかな・・・。2月の土日やで。もちろんプライバシー厳守。」


二階堂は早速電話をかけてくれた。ま、何とか二階堂の親友である俺が使うってことで、2月末に押さえてもらった。いろいろあるから2日間。もちろん彩子には内緒で。それまでにあと10キロ痩せな・・・。


「二階堂のところはもちろん十二単と束帯あるやろうな・・・。」
「もちろん。お手軽のものから本式の物まである。何で?」
「うちの慣例で、代々結婚写真に新郎は束帯、新婦は十二単を着ることになってるんや。兄貴も姉貴も写真だけは撮ってる。もちろん今のような形ちゃうで、平安時代的なやつや。新婦の髪型は今の皇室がするような結ったやつじゃなくって・・・。」
「んん・・・なんとなくわかった・・・。週末来てくれって父さん言ってたわ。もちろん奥さんのサイズわかってるんやろな・・・。」
「だいたいな・・・。」


そう、うちは奈良時代から続く名家。平安時代末期には衰退したらしいけれど、京都で天皇家の医師として何とか続いてきた家系・・・。それを忘れないためか、代々平安装束に身を包んで挙式するんだけど、父さんの代から写真だけになった。それはしないとだめだろう・・・。ますます母さんは俺の結婚を許してくれないだろう・・・。和気家の慣例に従わないと・・・。


俺は二階堂と共に早速週末、二階堂の実家の会社へ行って要望を話す。

社長室に通され、まず名刺交換。

そして詳しく事情を話す。二階堂のお父さんは事情を知ってくれて、いろいろ聞いてくれた。


「わかりました。こちらも精一杯のことをいたしましょう。いつも正輝がお世話になっていますからね・・・。」


二階堂のお父さんはたくさんの衣装の写真をが張ったファイルを社員に持ってこさせ、俺は一つ一つ眺める。


「そうだ、和気さん。うちの新作を着ていただきましょう。ちょうどモデルを募集していたところですから。新郎が和気さんで新婦が北野彩夏さんでしたらちょうど宣伝になっていい。もちろんいろいろ勉強(サービス)させていただきます。もちろん例の装束も・・・。うちで一番いいものを着ていただきましょう!」


新作だけで10枚以上ある。その中でも彩子に会ったデザインを選んでくれるようだ。会場も二日に分けてイメージに合ったところを探してくれるという。


これからの打ち合わせはメールと電話で・・・。俺は、前の週に衣装合わせせなあかんけどな・・・今よりも痩せるつもりやから・・・。俺は彩子のマネージャーに連絡を取ってスケジュール調整を頼んだし、二階堂のお父さんが、電話を代わっていろいろ内容を話してくれた。もちろんマネージャーは上司にすぐ相談して折り返し承諾を得る。


これであとはその日を待つのみ・・・。

予定の日は俺は最終の新幹線に乗って前入り。

国会が延びなかったらいいけどな・・・。

彩子はきっと驚くだろう。早く驚く顔を見てみたい。それまでに目標体重を・・・。


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コメント:誰か買ってください!!!キャンセル品ですが、未開封ですよ!!!


泣きそうです・・・。

いらないのなら早く言って欲しかったです・・・。

ドリーム・クエスト (25)ドキドキの日・・・

 俺は彩子を入籍記念日に無理やり抱いてしまった。それも超危険日に・・・。

 

 俺自身姉貴が産婦人科の優秀な医者やから、妊娠についての知識は十分ある。そして彩子のだいたいの周期もわかる。


ああこれで彩子の妊娠は確実かもしれないと、うなだれながら地元兵庫からスケジュールを済ませて議員宿舎に帰ってきたのは1月10日。


今彩子が妊娠したらやばいんや。仕事も絶好調で、来年4月からはアナウンサーになる事が内定している。こんな時に妊娠してしまったらと思うとぞっとする。


彩子は先に東京に帰っていたけれど、やはり売れっ子タレントやから帰ってすぐに仕事がたくさんある。もちろん別居状態。電話どころかメールさえ来ない。もしかしてまだ怒ってるんかも知れんけど・・・。


 最近姉貴は同じ産婦人科医である旦那と、東京表参道あたりで産婦人科病院を開業した。

お兄さんは産科の優秀な医師であり、そして姉貴は婦人科、特に不妊症の若き権威。

以前うちの親父の病院に勤めていた時、姉貴を頼って全国から患者がやってきた。

特に東京の人が多かったからか、こうして東京に独立開業したってことかな・・・。

名前は多田レディースクリニック。

この義兄さんも実は医師で有名な和気家の筋の人。


なんだかんだ言って和気家系の人と代々結婚してるんだよね・・・・兄貴もそうだもん。奥さんは和気家の分家の分家の半井家でだし・・・。(でも奥さんは管理栄養士)


父さんは違うけどね・・・。母さんは平家・・・。まったく和気家とは関係ない・・・。

(ただ当時適齢のお嬢さんがいなかったって聞いた。)


俺は姉貴とアポを取って妊娠しているかもわからない彩子のことを相談したんだよね。
和気姉
俺は表参道のある店で待ち合わせをして姉貴と会った。

もちろん個室のある・・・。

予約がいっぱいで忙しい姉貴はわざわざ俺のための時間を割いてくれた。


「何?泰明。どうしたの?泰明が私に相談だなんて珍しい・・・。」
「実は・・・。」


俺は彩子のことを相談した。

もちろん月のモノがあった日と、終わった日、周期、そしてあの日のことを、こと細かく言った。

姉貴はうなずきながらメモを取り、俺に言った。


「ま、正常な体だったら確率は高いわね・・・。そうね予定日は・・・9月26日ってとこかしら・・・。まあ、100%じゃないからね・・・。20日過ぎても生理が来ないようだったらうちに来たらいいわ。私が診てあげるから・・・。うちなら安心でしょ。ちゃんと秘密は守るしね・・・。」
「ありがとう姉貴・・・。感謝する。」
「あと、今のうちに彩子さん、検査しておいたほうがいいかもよ。あの子細いでしょ。もしかしたら欲しい時にできないかもしれないから・・・。いい、早めに見つけて治すのが一番なんだからね・・・・。」
「ああ・・・。またその時は頼むよ。」
「泰明もだよ、もちろん。女性だけが原因とは限らないんだし・・・。」
「んん・・・。」


姉貴は俺の頼んだものを払ってさっさと出て行った。

ホントにこういうことは姉貴に聞くのが一番だな・・・。

こういうとき、うちが医者一家でよかったよ・・・。


そしてついにその日がやってきた。

どうだろ・・・。

なんかあれば連絡があるんだろうけど・・・。

俺は彩子に電話をかけてみる。

まだ怒っているんやろうか・・・。


「もしもし・・・。俺やけど・・・。今いい?」
『和気さん?何?』
「今何してるの?この前はごめんな・・・。どうにかしてたよ・・・。」
『ううん・・・いいよ・・・和気さんも辛かったよね・・・いろいろな事があったから・・・。今ね、試験勉強中だよ。』
「風邪とか引いてない?気分悪いとかは?おなか痛い?」
『どうしたの?う~んそうだな。生理中でちょっとブルーなの。』


生理中???ってことは・・・できていなかったんだ・・・。

ホッとした・・・。


「彩子、体暖かくして風邪引かんようにな。試験終わったらまた会えるかな?」
『う~んどうかな・・・。私も会いたい。もうすぐしたら国会始まるんでしょ。お仕事がんばってね・・・。』
「うん。がんばるよ・・・。彩子もがんばって・・・。じゃあ・・・。」


俺は電話を切った。

ああよかった・・・。

でも姉貴の一言が気になる。


『あの子細いから・・・・欲しい時に出来ないかも・・・。』


まさかね・・・。

まだ子供が欲しいわけじゃないから・・・。

できていなくて助かった。

ホント結婚しているのになんと言う生活をしているんだろう・・・。

こうして別居だなんて・・・。

いつになったら普通の生活が出来るんだろう・・・。

ドリーム・クエスト (24)元彼に会う彩子

 私は和気さんと無理やりの夫婦生活・・・。ショックでホテルを飛び出した。

あんな和気さんはみたことなかった。

年末から和気さんはいろいろ機嫌が悪かったし、私の元彼が昨日と今日和気さんの前に出てきたことで、きっとパニクってたのはわかる。でもひどいよ。無理やりだなんて・・・。


私はこの前こっそり和気さんの携帯から元彼であり、和気さんの私設秘書、二階堂さんの電話番号を拝借してたの。何かあったときに相談しようかなって思って。だって中学のころからの親友だって聞いてたから・・・。

和気さんのことで悩んだらいろいろ聞こうと思って私の携帯のアドレス帳に登録しておいた。もちろん名前は女の子の名前で和気さんにわからないように・・・。


そして私は二階堂さんの携帯に電話をしたの。


「もしもし・・・二階堂さん?」
『え?彩ちゃん???』
「今から会える?相談したい事があって・・・。」
『今どこ?』
「梅田・・・。今阪神前の陸橋にいるの・・・。」
『わかった今から会おう。30分したらそっちに行けるから、大阪中央郵便局の角で待っててよ。』
「うん・・・。」


私は二階堂さんの言うとおり中央郵便局の角で待った。

ビル風が身にしみる。

ほんの30分が長く感じた。


何度も和気さんから電話があったけど、着信拒否をした。

ホントにひどい・・・。


私の前に一台の車。

見たことのない黒いスカイライン。

窓が開き、二階堂さんが微笑んでいる。


「彩ちゃん乗って・・・。」


私は二階堂さんに言われるまま、助手席に乗る。

さすが車好きの二階堂さん。

きれいに整頓された車内。

大事に乗っているのがすぐわかる。


そのまま二階堂さんは阪神高速に乗って、大阪南港へ・・・

。海の近くに車を止めて、エンジンをかけたまま私に声をかけてくる。


「どうかしたの?彩ちゃんが俺に話って・・・。」


最近、秘書のスーツ姿しかみた事がない私・・・。

私服はやはり以前と同じ、お洒落でかっこいい。


「あのね・・・和気さんが変なの・・・。無理やり・・・。」
「え?!あの和気が???そんな・・・。」


私は二階堂さんに詳しく話した。

二階堂さんは心配そうな顔をして私を見つめてる。


そんな顔をしないでよ。二階堂さんのことまた好きになっちゃうじゃない・・・。

二階堂さんもまだ私の事が好きなのよね・・・。


二階堂さんは私のために近くにあるハイアットリージェンシーに空き室がないか電話してくれて、ツインルームを取ってくれた。

そして私と二階堂さんは同じ部屋に泊まることになった。
彩子&二階堂KISS
私と二階堂さんはまるで恋人同士のように抱き合って、キスをする。

ほんと長い長いキスで・・・・。

まあそれ以上のことはなかったんだけど・・・。

いいよね、これくらい・・・。


昔のことを思い出しちゃった・・・。


きっと二階堂さんはそれ以上のことを望んでいたんだろうけど、私が傷ついているのを察してか、寝ないで一晩中私の側についていてくれた。


何度か和気さんから私の居所を聞く電話があったみたい。もちろん二階堂さんは知らないといっていた。


朝、私は目覚めると、二階堂さんはいなかった。部屋のサイドテーブルの上にはホテル代と、飛行機代、そして伊丹空港までの交通費が置いてあった。


『彩ちゃんへ。きっと和気はおかしかったんだよ。最近いろいろありすぎたからね。許してやって。和気はあんなやつじゃないから。彩ちゃんが一番知っているだろ。俺は仕事があるから先に帰るけど、彩ちゃんはゆっくりして東京に帰ったらいい。  二階堂』


私は二階堂さんに感謝した。

借りを作ってしまったな・・・。

本当に和気さんの親友なんだ・・・。

私をいたわりつつ、和気さんのことも信じている。


二階堂さんはすごくいい人。

昔とまったく変わっていないね。

あのまま別れないでいたら、私は二階堂さんと結婚していたかもしれないな・・・。

ありがとう、二階堂さん・・・。


私は和気さんにメールで先に東京に帰ることを告げ、何とか取れた昼過ぎの飛行機で東京に帰った。

HQメンバーブログ「創作広場」で連載中の小説の挿絵~おやすみなさい・・・。


おやすみなさい
Happyquestというコミュニティーサイトで知り合ったメンバーで作っているブログ「創作広場 」で発表している小説の挿絵・・・。

こういう風に寝るのは新婚時代の数日だけ・・・・でした。もう結婚10年過ぎると一緒の部屋どころか、今は別室・・・。


こんな寝方したら朝肩こりバリバリですね^^;

肩こりで頭がんがん・・・。


私的には現実的に無理です・・・。


夢のない私・・・。というか、うちの夫婦にはもう隙間風・・・。


4人も子供おったらしょうがないか???

ドリーム・クエスト (23)普通じゃない俺~なんであんなことを・・・

 俺は彩子がラジオ収録から出てくるのを待ち構える。あ、でてきた。


「じゃ!お疲れ様!」


そういって彩子はある男と手を振って別れてた。あれはマネージャーではない。もしかしてあれも元彼か?彩子は俺の姿に気がつくと、マネージャーに別れを告げて俺のほうへ走ってくる。そして俺の腕にしがみつく。今は夕方5時過ぎ。もう結構暗くなっているので、だれも北野彩夏と代議士が歩いているなんて気づかないだろう。俺自身もいつものスーツじゃなくって、OFFの格好だから・・・。


「さっき手を振っていたのは誰?」
「あの人?高校時代の友人だよ。今漫才しているんだって・・・。偶然収録一緒だったの。」


俺はピンと来た。そういえば、彩子の元彼の中に漫才師がいる・・・。ということは元彼か・・・・。


俺はある筋からいろいろ彩子の過去を調べてもらった。でるわ出るわ彩子の過去の男遍歴。俺を入れて総勢7人(ただし一人不明)。怪しい人物さらに2、3人。ただし、高校時代の夏から卒業までが不明・・・。弐條によると、彼氏が途切れたことはなかったって言ってたから、高校時代必ずいたんだろうけど・・・。


一人目はプロ野球選手の上杉修治、2人目はJRAジョッキー竹下悠。3人目吉本所属の漫才師徳島拓斗。4人目不明。5人目今ITで成功している若手起業家高島巧、6人目イケメンアクション俳優須藤脩登。そして7人目の俺。あとは恋人までに至っていない。


俺は彩子と宿泊先のホテル阪急インターナショナルの部屋でルームサービスを取って一緒に食事。

俺は珍しくイラついていた。

普通じゃないよな俺・・・。


今日昼食会を兼ねたの関西出身党内議員との会合でも上の空で、弐條元総理に叱られた。叱られてもしょうがない。俺が悪いんだから・・・。


やはり二階堂の言うとおり嫉妬しているようだ。

彩子はもう関係ないからって言ってたけどな・・・。


俺は食べたものを廊下に出して、俺が持参してきたモバイルパソコンを出してブログの更新をしている彩子を抱きしめて無理やり彩子を抱く。


「やめて!和気さん!いや!」


嫌がる彩子を無視して・・・。彩子にたたかれようが引っかかれようが無視して彩子を無理やり抱いた。夫婦だからいいやんと開き直って・・・。


ことを済ませたあと、俺はタバコに火をつけて、夜景を眺めていた。

彩子は布団に包まって泣いている。

初めて彩子を無理やり抱いた。

何でやろ・・・こんなこと初めて・・・。


そして冷静になって気がついた。

やばい!危険日やった!!!もちろんいつものように避妊なんてしていない・・・。

そういや昨日彩子を抱こうとした時に危険日だからって断られたのを思い出した。


ああ、やってしまった・・・。ほぼ確定・・・。妊娠したら9月末あたりやな・・・・。


彩子はシャワーを浴びてから荷物をまとめて部屋を出て行ったのは言うまでもない。

どこにいったんやろ・・・。
和気悩む
俺は彩子に謝ろうと携帯に電話しても着信拒否された。


神戸のおばあちゃんのところかなって思って電話しても帰っていないという。

どこにいったんや・・・。

もしかして・・・・。


俺は関西在住の元彼の名前が頭に浮かぶ。


竹下悠?

徳島拓斗?

もしかして俺よりも長い付き合いをしたといわれる4人目?


俺は頭をかかえたまま、一晩中悩んでいた。


今日は彩子との入籍記念日やったのに・・・・。