ドリーム・クエスト (25)ドキドキの日・・・
俺は彩子を入籍記念日に無理やり抱いてしまった。それも超危険日に・・・。
俺自身姉貴が産婦人科の優秀な医者やから、妊娠についての知識は十分ある。そして彩子のだいたいの周期もわかる。
ああこれで彩子の妊娠は確実かもしれないと、うなだれながら地元兵庫からスケジュールを済ませて議員宿舎に帰ってきたのは1月10日。
今彩子が妊娠したらやばいんや。仕事も絶好調で、来年4月からはアナウンサーになる事が内定している。こんな時に妊娠してしまったらと思うとぞっとする。
彩子は先に東京に帰っていたけれど、やはり売れっ子タレントやから帰ってすぐに仕事がたくさんある。もちろん別居状態。電話どころかメールさえ来ない。もしかしてまだ怒ってるんかも知れんけど・・・。
最近姉貴は同じ産婦人科医である旦那と、東京表参道あたりで産婦人科病院を開業した。
お兄さんは産科の優秀な医師であり、そして姉貴は婦人科、特に不妊症の若き権威。
以前うちの親父の病院に勤めていた時、姉貴を頼って全国から患者がやってきた。
特に東京の人が多かったからか、こうして東京に独立開業したってことかな・・・。
名前は多田レディースクリニック。
この義兄さんも実は医師で有名な和気家の筋の人。
なんだかんだ言って和気家系の人と代々結婚してるんだよね・・・・兄貴もそうだもん。奥さんは和気家の分家の分家の半井家でだし・・・。(でも奥さんは管理栄養士)
父さんは違うけどね・・・。母さんは平家・・・。まったく和気家とは関係ない・・・。
(ただ当時適齢のお嬢さんがいなかったって聞いた。)
俺は姉貴とアポを取って妊娠しているかもわからない彩子のことを相談したんだよね。
俺は表参道のある店で待ち合わせをして姉貴と会った。
もちろん個室のある・・・。
予約がいっぱいで忙しい姉貴はわざわざ俺のための時間を割いてくれた。
「何?泰明。どうしたの?泰明が私に相談だなんて珍しい・・・。」
「実は・・・。」
俺は彩子のことを相談した。
もちろん月のモノがあった日と、終わった日、周期、そしてあの日のことを、こと細かく言った。
姉貴はうなずきながらメモを取り、俺に言った。
「ま、正常な体だったら確率は高いわね・・・。そうね予定日は・・・9月26日ってとこかしら・・・。まあ、100%じゃないからね・・・。20日過ぎても生理が来ないようだったらうちに来たらいいわ。私が診てあげるから・・・。うちなら安心でしょ。ちゃんと秘密は守るしね・・・。」
「ありがとう姉貴・・・。感謝する。」
「あと、今のうちに彩子さん、検査しておいたほうがいいかもよ。あの子細いでしょ。もしかしたら欲しい時にできないかもしれないから・・・。いい、早めに見つけて治すのが一番なんだからね・・・・。」
「ああ・・・。またその時は頼むよ。」
「泰明もだよ、もちろん。女性だけが原因とは限らないんだし・・・。」
「んん・・・。」
姉貴は俺の頼んだものを払ってさっさと出て行った。
ホントにこういうことは姉貴に聞くのが一番だな・・・。
こういうとき、うちが医者一家でよかったよ・・・。
そしてついにその日がやってきた。
どうだろ・・・。
なんかあれば連絡があるんだろうけど・・・。
俺は彩子に電話をかけてみる。
まだ怒っているんやろうか・・・。
「もしもし・・・。俺やけど・・・。今いい?」
『和気さん?何?』
「今何してるの?この前はごめんな・・・。どうにかしてたよ・・・。」
『ううん・・・いいよ・・・和気さんも辛かったよね・・・いろいろな事があったから・・・。今ね、試験勉強中だよ。』
「風邪とか引いてない?気分悪いとかは?おなか痛い?」
『どうしたの?う~んそうだな。生理中でちょっとブルーなの。』
生理中???ってことは・・・できていなかったんだ・・・。
ホッとした・・・。
「彩子、体暖かくして風邪引かんようにな。試験終わったらまた会えるかな?」
『う~んどうかな・・・。私も会いたい。もうすぐしたら国会始まるんでしょ。お仕事がんばってね・・・。』
「うん。がんばるよ・・・。彩子もがんばって・・・。じゃあ・・・。」
俺は電話を切った。
ああよかった・・・。
でも姉貴の一言が気になる。
『あの子細いから・・・・欲しい時に出来ないかも・・・。』
まさかね・・・。
まだ子供が欲しいわけじゃないから・・・。
できていなくて助かった。
ホント結婚しているのになんと言う生活をしているんだろう・・・。
こうして別居だなんて・・・。
いつになったら普通の生活が出来るんだろう・・・。