ドリーム・クエスト (27)京都での仕事
「彩夏、久しぶりにモデルの仕事だよ。」
後期試験が無事おわり、春休みに入った2月最終週のはじめ、そういってマネージャーから電話が入った。
ホント久しぶり。モデルの仕事って・・・。
なんと来年春用の新作のウェディングドレスをたくさん着るんだって・・・。
京都まで仕事って珍しいな・・・。
京都か・・・。
ああはじめて・・・ウェディングドレスを着るのって。
依頼主は京都で大手のウエディング総合企画会社。新作としてカタログに載せたいらしい・・・。めずらしく1泊2日のお仕事。
和気さんに週末会えないのは辛いけど・・・。
もう随分会っていないな・・・。
大阪での出来事以来だもん。
最近内閣府関係の会見は弐條のお兄ちゃんばかり出てるし、元気にしてるかな・・・。まあメールのやり取りとかはしているから元気なんだろうけれど・・・。
私は指定された時間に品川駅の新幹線のホームに着いた。朝早い6時台の新幹線。9時前には京都に着く。
いろいろメイクとかで時間がかかるって聞いたからね・・・。
新郎役とかいるのかな・・・。もしかして私一人の撮影?
京都に着くと、依頼主の会社の人が迎えに来ていた。
私はマネージャーとともに用意された車に乗る。
2月末だから結構京都は冷える。
でも今日は違ってなんだか小春日和・・・。
この前まで雪が降っていたと聞いたのに、暖かい春のような陽気で・・・。
ロケ地は京都市の北山通り沿いにある小さな教会。結構お洒落で素敵なの。もちろん今日一日貸切。その一室を借りてヘアメイクをする。側には5点ほどの素敵なドレスとそれにあわせたブーケ。そして小物たち。手馴れたスタッフでテキパキと支度をする。
ここに入る前にみた撮影隊は本格的なスチール写真撮影用の人たちで、きちんと挨拶をしたわ。
ホント久しぶりモデルのお仕事・・・。
事前にサイズを報告してあったのか、ドレスのサイズはぴったりで、本当に結婚するみたい・・・。
4点までは教会前の素敵な庭で一人でいろいろポーズをつけて撮影・・・。
道路に面しているためか、ギャラリーが増える。
もちろん土曜日だもん。
(あれって、北野彩夏だよね・・・すごい仕事中???)
(超可愛い!)
(テレビで見るよりも細い!)
私はいろいろなポーズと表情で何枚も写真を撮った。
カメラマンは「いいよいいよ!」って言ってくれて、スタッフもさすが元カリスマモデルという。
また私は控え室に入って最後の1着に着替えるんだけど、もうお昼を過ぎて、おなかすいたから、ひとまず休憩。
ちょこっと軽食。
おなかいっぱい食べたら体の線に出ちゃうから、少しおなかに入れておくだけ。
終わったら食べたらいいしね・・・。
さあ仕切りなおし・・・。またメイクからはじめる。
「次は新郎もいるんですよ・・・。」
と、スタッフが微笑みながら私に言った。
きっとどこかのモデルさんよね・・・。
よくあるパターンだもの・・・。
イケメン系の・・・。
最後は私のお気に入りのAラインの素敵なドレス・・・。
清楚なんだけど、どこかのお姫様みたいな・・・。
今回はベールもつける。
本当に今から結婚するみたいな感じで・・・。
次は教会内で撮影なんだって・・・。
私は支度が整い、撮影場所と新郎役の準備が整うまで控え室で待つ。
「北野さん、どうぞ!」
女性スタッフが私に声をかけ、スタッフに手を引かれながら、教会の十字架の前へ向かう。
やはり何でこのドレスを屋内で撮るのかわかったわ。
だってドレスの後ろの裾が長いの。そしてベールも長い。私の後ろにはスタッフが数人付いて、裾がどこかに引っかからないかみているの。それほど長い立派なドレス・・・。
礼拝堂内に入ると、十字架の前で新郎役の人が立って十字架を眺めていた。
モデルじゃないよね・・・。
モデルのような8頭身じゃないもん・・・。
もしかして一般公募の人?
すらっとしているけれど結構肩幅があって・・・・。
あの後ろからみた感じ誰かに・・・ううんあの人がいるわけないもん・・・。
だって今日は仕事だよって・・・。
すると私がバージンロードの中間に来たころ、その人は私のほうを振り返るの。
「わ、和気さん????」
そう相手は私の旦那様、和気さんだった・・・。
そういえば和気さんはダイエットしているって言った。
すごく痩せて以前に比べてかっこよくなっている。
和気さんは私の顔を見て微笑んだ。私も和気さんの顔を見て微笑み、私は和気さんのもとに歩き出した。和気さんも私のほうへ来ると、私を抱きしめてくれた。
「驚いた?彩子。」
「和気さん・・・。すごく痩せて・・・。」
「うん、20キロ落とした。彩子、すごくきれいだよ。良かった似合って・・・。さ、おいで・・・。」
和気さんは私の手を引いて十字架の前へ・・・。
後ろを見てみると、和気さんのお父さん、お母さん、お兄さんお姉さん敏明君。そしてうちのパパ、弐條のお兄ちゃん、お姉ちゃん、そして二階堂さんが立っていた。
「撮影のついでに挙式も出来ることになったんだよ・・・。」
そういうと、和気さんは私の手を和気さんの腕にかけて、一緒に十字架の前に立った。そして挙式が始まった。神父に誘導され、聖歌や誓いの言葉、和気さんが用意してくれてたんだろう結婚指輪。和気さんが私の薬指に結婚指輪をはめてくれ、私も和気さんの指にはめる。そして私は少ししゃがんで和気さんがベールを上げて誓いのキス・・・。
これは模擬結婚式じゃない。
私と和気さんの本当の結婚式なんだ・・・・。
もちろん式最中はプロのカメラマンが何枚も撮ってくれている。
式が終わり、祭壇の前で、撮影・・・。
いろんな表情で・・・。
和気さんはとても緊張していたけれど、私の笑顔を見て緊張がほぐれたのか、微笑んで私の顔をみた。
これってモデル用の撮影?それとも・・・。
祭壇前の撮影を終えると、私たち2人は礼拝堂を出てごく身内の人からのライスシャワーを浴び、祝福されるの。そして身内だけ教会前で記念撮影・・・。本当に仕事半分挙式半分で、嬉しかった・・・。やっと和気さんと正式に結婚できたんだもの・・・。
私たちは嬉しさのあまり、人目を気にせずにキス。もちろん前の道を行き交う通行人は足を止め、私たちのことを見て驚く。
「もういいんだよ、公にして・・・。」
って和気さんが言った。
「え?」
「事務所、そして就職先、スポンサーから許可が出た。もう公にして、堂々と二人で過ごそう。もうこそこそ過ごすのはごめんだ。いいね、公にして・・・。」
「うん!」
あたしは和気さんに抱きつき、私からキス。身内のみんなは本当に微笑んで私たちを祝福してくれた。もちろん沿道の見知らぬ通行人たちも・・・。祝福の大きな拍手に包まれて、私たちは正式に夫婦になった。
ああこれからは和気さんの正式な妻としている事が出来る。
そして堂々と和気彩子として就職できるんだ。
嬉しくてたまんないよ・・・。
ありがとう和気さん、そして祝福してくれたみんな。私は幸せになるんだから・・・。
ホント和気さんっていい人だね。だってこうしてドッキリ挙式をしてくれるんだもの。和気さんらしいね。