ミラー! (667)同僚医官
ほんと最近医官らしいことをしていないように思う。幹部室で書き物ばかりしている。現場は准尉に任せているし…。医者らしいことは週末の民間派遣くらいだ。
災害派遣中は、医官らしいことをしていてとても充実していた。それまで忘れてしまいそうなほど何もしていなかったから、診察にちょっと手間取ったりしたけれど、すぐに感覚が戻ったのは良かった。
先日も同僚の医官が辞めていった。ここじゃ何もできないって。何とか再就職先も決まって辞めていった。彼は医務室勤務1尉の医官。
「遠藤さんも、早くなんとかしたほうがいいですよ。この俺よりも医官らしいことしてないじゃないですか。」
「まあ、そうだけど、僕は災害派遣要員の医官だし…。」
「甘いですよ!ここにいたら腕がなまってしまいます!遠藤さんは、政治一家だから何とかなるかもしれませんけど、俺の場合は、医者になりたくて医者になったんです。だから俺、もっと医学が勉強できるところへ行きます!」
と言ってやめて行ったんだよね。
防医大出身医官で、防医大卒業後9年たったら辞めていく医官が多いのも確かな話。僕の同期も何人もここ数年でやめていっている。
そうだな…なんで僕って医官らしいことしていないのにここにいるんだろう…。彼の言う通り、政治家になるからいいかって思っているんだろうか。そんなことないと思うけど…。
医務室勤務の医官が一人減って人出がないはずなのに、この僕にお呼びがかからないのも確かな話。隊長も何も言わない。わかっているはずなのに…。なんかおかしい…。災害派遣部隊も、常設じゃないから、普段は医務室勤務になってもいいんだけど…。相変わらず本部管理中隊中隊長兼災害派遣隊隊長。
デスクワークと記念行事の観閲パレードの練習で忙しい日々。僕の場合は、衛生隊災害派遣車両のパレードのみだからまあ楽でいいけどね。しかし当日はほんと忙しいのだ。
僕のいる方面隊は、お父さんの選挙区である石川県も管轄だから、お父さんは来賓で呼ばれていて、いつもなら代理で済ませていたんだけど、選挙が近いからか、今回は出席。記念祝賀会食も出るらしい。でもって、僕も美里と出るようにと出席名簿に載せられてしまった。
そして何と春斗まで来るらしい。それは、春斗が秘書をしている大叔父さんの代理として。そして観閲式典で、急遽大叔父さんである弐條代議士の代理として祝辞を述べるらしい。ま、これは春斗が今度の選挙に出馬するからであって、まあいう顔売りであるかもしれない。もちろん顔を売りに会食まで出席するみたい。大叔父さんの源元統幕長も…。はあ…そのお相手に近いかもしれないね…この僕は…。ということは、観閲パレードが終わり次第、礼装に着替えて会食?
はあ…。
ミラー! (666)通常通り
派遣から帰ってきた次の日、僕は出勤。休んでいるものもいたけれど、書類がまだたまっているからね。早く仕上げないと上がうるさい。ま、明日は念願の民間病院勤務。昨日のうちに上の許可を得て、現場復帰。やっとかわいい子供たちと会うことができる。そして週末は休み。やっと休み。来週末まで美里は僕の身の回りの世話をしてくれる。まあ言えば創立記念祭が終われば東京へ帰っちゃうんだけど…。子供たちには悪いけれど、やっと新婚らしい生活が送れるわけだ。そのために今日中に書類をまとめなければならない。まあこういう仕事は嫌いじゃないし得意だから、上から戻されない限り、早く終わるだろうと思う。
昼食は愛妻弁当。それも結構頑張って作ってくれているからボリュームもあって、おなかいっぱいになった。もちろんデザート付。嬉しくてうれしくて満面の笑みで食べているから、周りの同僚たちに白い目で見つめられる。でもいいんだもんね。
昼食の後午前中に仕上げてしまった書類をプリントアウトして、上に提出。結果が出るまでの時間、僕はいまだ片づけをしている隊員の元へ行く。片づけを済ませ、記念祭のための車両の塗り替えの最中。何とかギリギリ間に合うかどうかって感じみたいだ。
休まず頑張っている隊員たちへPXで買ったジュースを差し入れる。ほんと気のいい奴らばかりで楽しい。ほんとここではいい部下に恵まれている。もちろん前のところでもいいメンバーだった。例の先輩医官を除けばね。そうだな、自衛隊医官をしていて比較的職場には恵まれているだろうね。あともうちょっと医官的な仕事があればいいんだけど、ここではほとんどデスクワークメインで診察らしいものはしない。金曜日にある民間病院勤務が医者らしい仕事だね。
「ぶーぶーぶー」
と、携帯のバイブレーター。相手は隊長。書類の返事かな?メールだから急ぎじゃないんだろうけれど…。メールを見てみると、OKの文字。これで僕は書類地獄から解放された。あとはさらに上、そしてさらに上が見てどう思うか何だけどね。まあ今まで書き直しを食らったことはまずない。
「あ、明日から週明けまでいないから。」
「え?代休ですか???」
「いやいや。明日は民間行き。土日は休みだけどね。そういうことで、あとは何かあれば准尉とかに聞いて。」
「え?帰ってすぐ民間勤務ですか???」
「だって待っている子供たちいるからさ。1か月休診していたんだから。じゃ、頑張って!」
といってその場を後にした。今日も定時に帰ることができそうだ。ほんと優秀な人材ばかりだから助かる。
ミラー! (665)夫婦水入らず
久しぶり、妻の温かいごはん。それも新婚らしく二人夕飯。派遣隊の食事係が作るごはんもおいしいほうだったけれど、やはり家のご飯が最高だ。
仕事の話はせずに、ひと月間の家の話、そして愛しいおなかの赤ちゃんのことで盛り上がった。
食事の後は、お茶を飲みながら、かわいらしい胎児の超音波写真を眺める。小さな点から今はもう人間の形。超音波写真の診断は、僕の得意中の得意。なんとなくだけど骨格から性別がわかった。ま、僕専門の心臓も今のところ異状はないみたいだ。できれば動いている画像を見たいなあなんて…。妻はまだつわりが残っているみたいで、時折吐き気。未来の時よりもきついらしい。
「つわりつらいの?」
「んん…。ちょっと。」
「食事もあまり食べなかったしね。ちょっと痩せた?それでなくてもモデル体型でやせ気味なんだから…。」
「大丈夫。サプリ摂ってるし…。未来の時はほとんどなかったのよ。未来の時は仕事してたからかな…今はゆっくりしているし…。」
そしてつい…何となくわかった性別を口に…。
「もしかしたら女の子かもしれないね…。」
「え?」
「あ。いや何でもない…。」
そう、僕は超音波画像を見てそう思った。この子の骨盤がなんとなく大きくて女の子っぽかった。男の子を妊娠するのと、女の子を妊娠するのとでは体質が変わるとか俗説があるし…。もちろん亡くなった優奈もそうだった。優希の妊娠中と美紅の妊娠中とでは全く違ってたし。ま、優奈の場合は、優希妊娠中のほうがつわりがきつかったけれど…。
来年の4月中旬の予定日。もしかしたら早くなるかもしれないね。大きめっていうし…。あ、絶対休み取らなきゃ。未来と美紅の入学式がある。それまでには生まれるかな?あ、そうだった。美里は未来を帝王切開で産んでるから、帝王切開なんだよね?なら早目だね。休みが取れたらいいんだけどな…。
10月12日に投稿したなう
ミラー!(664)帰宅
家族と別れ、やっと戻ってきた駐屯地。手の空いた隊員たちに出迎えられる。衛生隊建物の前で、バスから降り、整列。そしてこの僕から、一言部下たちに伝え、疲れているけれど、各持ち場の整理を命令する。
駐屯地内は10日後に行われる記念祭の準備で忙しい。あちこちの部隊が、記念祭の式典へ向けて行進練習などを行っている。もちろん上から医療派遣部隊も出るように命令があった。その件を伝えた時、部下たちは嫌がっていた。せっかくの休みがつぶれるんだもの。あ、言っておくけど、出るのは車両の観閲行進のみだからというと、「意地悪!」と笑われる。そう、出るのはこの僕と准尉、車両・輸送班のみ。この僕以外の医官と看護師、技官は関係ない。
「あのさ…その次の週の自衛隊観閲式にも出て欲しいとか…。」
もちろん輸送班は「え!」っていうわけ。本来であれば、東方隊の衛生派遣部隊が出る予定だったんだけど、今派遣中。他の方面隊でいいものを、ちょうど帰ってきたからと出るようにとのご命令。こっちの記念祭が終わった次の日、朝霞駐屯地へ向かわなければならない…。ほんと休んでいる暇はない。とりあえず10月いっぱいは忙しいってことだ。
部下たちが片付けをしている間に僕は報告書類の整理。体が疲れているからか、眠気に襲われる。ウトウトしながら、パソコンに向かっていた。
「遠藤君、疲れているだろうから、定時に帰ったらいいよ。」
と、衛生隊隊長に言われる。
「しかし、部下の者たちはまだ仕事していますし…。」
「初めての隊長職で疲れたろう…。いいから帰りなさい。」
「はい…お言葉に甘えて…。」
といって、僕は帰宅準備をする。帰宅前に部下たちのところへ。ある程度片づけが済んでいたので、そろそろ切り上げて終了するように伝える。
滅多に定時帰宅しないこの僕。いつも何かしら残業で遅いときには日をまたぐこともある。定時帰宅でありながらどっと来た疲れでフラフラになりながらなんとか自宅へ到着。玄関先の電燈に電気がついている。そして鍵も空いている。美里?
「ただいま…。」
とそっとドアを開けるとやはり美里。
「おかえりなさい!」
と、エプロン姿の美里が、出迎えてくれた。
「思ったよりも早く帰れたのね。」
「うん…。隊長がさ、疲れているだろうから、早く帰れって。」
「よかった…。」
と言ってこの僕の胸へ体を預ける。そして僕は美里をぎゅっと抱きしめる。
「改めて、ただいま。」
「おかえりなさい…。」
と、キスを交わす。ほんの少しの時間が、なんかすごく長い時間に感じられた。
ミラー! (663)ややこしい身内(BlogPet)
ホテルのは、その場は部下たちが頑張っているわけだからの言葉を抱きしめる。
*このエントリは、ブログペットの「こうさぎ」が書きました。
ミラー! (663)ややこしい身内
ホテルのバンケットルームにて、お偉いさんの話やら、防衛協会のお偉いさんの話を聞く。そして僕からも少し話をして、解散式のようなものを行った。もちろん政府からの評価も高く、お偉いさんからお褒めの言葉をいただいた。
そしてやっとのことで家族と直に会う。なんかここまで嵐の前の静けさのように何もなかったけれど、ここからが問題だ。僕の身内ばかりのところへ行く。子供たちはいなかったけれど、美里、養母、お祖母ちゃん、春斗、そして大叔父さんである元統幕長。
「春希君、本当に一番若いのによく頑張ったね。」
と、ねぎらいの言葉をかけてくれた。各方面隊衛生派遣部隊の中で一番若いこの僕。指揮官として何とか手探りだけれども、やってこれたのは部下たちが頑張っていたから。そして、お母さんが僕を抱きしめる。本当に昔から養子の僕を実の子供のように可愛がってくれたお母さん。よかったよかったって涙ぐんだ。
そして機嫌が悪そうなお祖母ちゃんの登場だ。なぜ春斗がついてきたのか、大叔父さんが来てくれたのか…。それはこのお祖母ちゃんを何とかできるかもしれないからだ。
「お祖母ちゃん…?」
と声をかけてみる。すると僕を睨みつけてこう言い放つ。
「春希!前回の海外派遣のあといったわよね?弐條の人間が、遠藤の跡継ぎが、そんな危ないところへ行く必要はない!って。いくら人のためとはいえ、日本にいてもできることがあるでしょ?あなたは医者になるために生まれてきたんじゃないのよ?他に大切な人のためにできることがあるはず!早く自衛隊などやめて、春斗のように政治家の修行をなさい!」
もちろんこの一角だけこういう会話をしているから、皆の注目の的。
「ひかりさん、いつまでもこの状態なら、春希を弐條へ返していただきます!春希を養子に行かせたのは、政治の為です!春希には弐條の血だけではありません。政治家家系の高橋家の血も入っているのですよ!高橋に政治家がいない今、春希は大切な高橋の血を受け継ぐ人材です。それは高橋家のご令嬢であったひかりさんがいちばんご存じでしょ?」
「伯母様!」
「いい?ひかりさん。あなたの旦那さんに孝博の血が入ってなければ、決して春希を養子に出さなかったわ。大切な孫の春希をとても危険なところへ行かせるなんて!信じられません!」
もちろん僕は黙っているわけにはいかなかった。お祖母ちゃんに対して何か言おうとした時、春斗がお祖母ちゃんとお母さんの前に出た。
「ちょっとばあちゃん、いい加減にしろよ。孝博爺ちゃん言ってたやろ。春希は春希の好きなことさせたらええって。ずっと爺ちゃん、春希が医官になるって言ったときから応援してたやん。俺は春希が遠藤へ行ったのは政治の道具やって思ってへん。父さん言ってた。春希の体の為やって。体が弱かった春希の為やって。なんでばあちゃんはそんなことばっか言ってんねん。政治政治って。ちゃんと俺が弐條の人間として政界へ行くって言ってるやん。春希だっていつか政界へ行くって言ってるやん。今春希は、頑張ってるんやから応援してやれよ。こうして無事に帰ってきたんやから、喜んでやるのが筋やろ。ほんまばあちゃんは空気読まれへんな。」
ま、その場は、大叔父さんの出る幕はなく、春斗の言葉でおさまっていたけれど、お祖母ちゃんのことだからこれでは済まないだろうなあ…って思うわけだ。
ミラー! (662)帰国(BlogPet)
グアムの聞きなれた美里の迷彩団体がつくと言ってくれた荷物を目指す?
と、すんなり終わる!
少し大きく旋回したかな?美里。
*このエントリは、ブログペットの「こうさぎ」が書きました。