ミラー! (662)帰国 | 超自己満足的自己表現

ミラー! (662)帰国

 グアムの空港から民間機に乗り、関西国際空港を目指す。総勢50名の迷彩団体。目立たないわけない。チケットの手配ミスで、10人分ビジネスクラス。僕を含め、中隊長小隊長クラスがビジネスクラスへ座ることになった。ま、ビジネス路線じゃなくてよかった。ほとんどが観光帰りの客ばかり。スーツ姿のビジネスマンだらけじゃ気を使う。



「親戚一同でお迎えですって?遠藤3佐。」



と、警備担当の小隊長が声をかけた。



「そんないいものじゃないですよ。ひと波乱ありそうです…。大ボスが控えていますから。」

「大ボス?」

「あ、うちの祖母です。ほんと最近、また政治に首突っ込みだしまして…。困ったものです。」

「ああ、元首相の?お元気なのはいい事じゃないですか?」

「年々頑固になりまして…。特に兄が政界へ行くと決まってから…。僕の養父も頭が上がりません。元首相で派閥代表なのに…。」

「そうなんですか?さすが政治家系ですね…。うちのような一般家庭には縁がない話です。」



と言って苦笑する。



本当にいつもこんな家系に生まれたことを恨むよ。これなら養子にならなかったほうが、次男としてのんびり暮せたかな?好きなことできたかもしれないね…。



 気がつくと高度が下がり、窓から淡路島が見える。そして大きく旋回して定刻通りに無地着陸する。1ヶ月間だったけれど、やっと帰国できた。初めての派遣隊長役。何とか…って感じだろうか。



飛行機が完全に止まり、CAの誘導で、まず派遣部隊から降りることになっている。そのことについてのアナウンスが流れた。空港職員とともに迎えに来ている方面隊隊員。その二人に誘導されながら、入国手続きを行う。といっても国からの派遣部隊なので、すんなり終わる。預けている荷物は、あとから駐屯地へ送ってくれるみたいだ。



最低限の私物が入ったリュックを背負い、1階の到着口を出る。家族や関係団体が出迎えてくれた。そしてマスコミも…。たくさんのフラッシュ…。



「遠藤派遣隊長、こちらへ。」



と、方面隊広報隊員が僕のみ誘導する。ああ、記者会見だね。部下に荷物を預け、派遣部隊帽を深々とかぶり、指定されたところへ。記者会見の間に部下たちは、式が行われる空港近くのホテルへ移動。



記者会見も何とか済ませ、僕も部下を追いかける。待っていた荷物を預けた部下から荷物を受け取り、ホテルへ向かう途中…。



「春希さん!」



と、いつもの聞きなれた声。空港からホテルへ向かう通路で、待っていた美里。妊娠4カ月に入り、おしゃれなマタニテイー姿の美里。



「隊長、先行ってま~~~す。早めにお願いしますね。」



と、肩をぽんぽんと叩く部下。



「どうしたの?美里。他の人たちみたいにホテルで待たないの?」

「うん…早く春希さんと話したくて待ってたの。」



と、そっと手をつなぐ。少しおなか周りがポッコリしたのかな?美里はつないでいた手を美里のおなかへ持っていく。



「パパ無事に帰ってきたよ。いい子にしていたんだもんね。」



また胎動は感じない時期だけど、少し大きくなった美里のおなか。とても愛おしい。



「順調そうだね?」

「うん。少し大きめだって。今度の検診で性別がわかるらしいわ。」

「担当の先生そういうの得意らしいね。女の子ならいいね。さ、行こう。」



と言ってそっと手をつないで、僕は空いた手に美里の荷物を持ちホテルへ向かう。ほんの少しの間でも、こういう時間があってよかった。