陰謀論
「政府は放射性物質による害を隠蔽している」「地球温暖化は原子力発電推進のために考えられた陰謀だ」という感じの陰謀論は、ネット上で散見されます(現実社会では未だ聞いたことはありませんが・・・)。
私、以前からこの発想がいまいち理解できませんでした。このような証明できない陰謀論を信じるのであれば、たとえば、「核保有国が自国優位になるよう放射性物質の害を誇張している」「地球温暖化否定論は火力発電推進のために考えられた石油業界の陰謀だ」などといった、全く逆の発想も成立しえます。このあたり、陰謀論を主張される方はどのように折り合いをつけているのだろうか、と思っていました。
kumicitさんのHP「忘却からの帰還」に掲載された、「互いに矛盾する陰謀論を信じること」『「互いに矛盾する陰謀論を信じること」のintroduction』という2つのエントリーを読んで、この疑問がいくらか解消されたような気がします。
「理論の矛盾は陰謀論者を思いとどまらせない」ですか!いきなり衝撃です。他にも、「世界観が優先される」「あまりに強く政府の公式説明に不信を持っているので互いに矛盾していても多くの陰謀論を支持できる」「相対的に盲目的な敵対性に根差す」など、私にとってはなかなか衝撃的な言葉が出てきます。
うーん、これは説得力があります。非常に興味深いエントリーです、みんさんぜひお読みください(私も、論文本体も読んでみます)。
それにしても・・・。 私は、陰謀論の拡大は非常に問題があり、何とかならないかなあなどと思っていますが、
『我々は「陰謀論の支持の世界観を持つ人々は、世界の出来事の説明にあたって、権力の欺瞞を前提とし、メインストリームの説明に反する、いかなる理論にもほぼ合意する」と予測する。この関連性は、「世界が陰謀によって支配されているという見方をしている人々が、同じ話題について相矛盾する陰謀論を支持する」ことを予測する。』
という考察には、ちょっと困惑させられます。じゃあどうしたものか、と。
まあ、個人でできることは限られていますし、誰一人として陰謀論を主張しない世界もそれはそれで問題があるでしょうし。できる範囲のことをするしかないですよね。
私、以前からこの発想がいまいち理解できませんでした。このような証明できない陰謀論を信じるのであれば、たとえば、「核保有国が自国優位になるよう放射性物質の害を誇張している」「地球温暖化否定論は火力発電推進のために考えられた石油業界の陰謀だ」などといった、全く逆の発想も成立しえます。このあたり、陰謀論を主張される方はどのように折り合いをつけているのだろうか、と思っていました。
kumicitさんのHP「忘却からの帰還」に掲載された、「互いに矛盾する陰謀論を信じること」『「互いに矛盾する陰謀論を信じること」のintroduction』という2つのエントリーを読んで、この疑問がいくらか解消されたような気がします。
「理論の矛盾は陰謀論者を思いとどまらせない」ですか!いきなり衝撃です。他にも、「世界観が優先される」「あまりに強く政府の公式説明に不信を持っているので互いに矛盾していても多くの陰謀論を支持できる」「相対的に盲目的な敵対性に根差す」など、私にとってはなかなか衝撃的な言葉が出てきます。
うーん、これは説得力があります。非常に興味深いエントリーです、みんさんぜひお読みください(私も、論文本体も読んでみます)。
それにしても・・・。 私は、陰謀論の拡大は非常に問題があり、何とかならないかなあなどと思っていますが、
『我々は「陰謀論の支持の世界観を持つ人々は、世界の出来事の説明にあたって、権力の欺瞞を前提とし、メインストリームの説明に反する、いかなる理論にもほぼ合意する」と予測する。この関連性は、「世界が陰謀によって支配されているという見方をしている人々が、同じ話題について相矛盾する陰謀論を支持する」ことを予測する。』
という考察には、ちょっと困惑させられます。じゃあどうしたものか、と。
まあ、個人でできることは限られていますし、誰一人として陰謀論を主張しない世界もそれはそれで問題があるでしょうし。できる範囲のことをするしかないですよね。
石油文明の分水嶺
石油は無尽蔵ではなく、いずれ枯渇します。もう少し正確に言えば、採掘が容易な油田が枯渇するにつれ採掘困難な油田から石油を採掘せざるをえなくなり、採掘コストが上昇して他のエネルギー源のほうが有利になって、徐々に利用されなくなっていきます。いずれ、石油文明が衰退する時が、必ず来ます。
「その時」は、ある日突然訪れるようなものではありません。なだらかな丘の頂が分かりにくいのと同様、「後で振り返るといつのまにか石油文明の頂を越えていた」というような感じで訪れることになるのでしょう。
その「分水嶺」を私たちはすでに通過していたのではないか、とする報告がnatureに掲載されました。
http://www.nature.com/nature/journal/v481/n7382/full/481433a.html
http://www.wired.com/autopia/2012/01/nature-journal-study-peak-oil/
従来、石油の使用量が増加するにつれ、石油の価格は上昇していました。ただしその速度はゆっくりで、産出量が1メガバレル/日(≒1.6億リットル/日)増加する間に、1バレル(≒160リットル)あたりの価格は2ドル上昇する程度のものでした。この傾向は2005年まで安定して続いてきました。現代文明が急速に発展できたのは、石油という便利極まりないエネルギーが安価に供給され続けたことに強く依存しています。

石油価格は、他の商品と比べても、市場により強くコントロールされます。需要が増せば価格は上昇し、生産が増加すれば価格は低下するという、シンプルな需要/供給関係が成立しやすいのです。
これまでは、増加する需要に供給が追いついてきていたため、バランスがまずまず上手く取れていました。2005年以降の産出量-価格のバランスの変化は、ついに生産が需要を満たせなくなったことを如実に示しています。
むろん、これまでに見つかっていない巨大かつ採掘の容易な油田が見つかることはあるでしょう(極地で多く見つかる可能性があるでしょうね、皮肉なことに)。しかし、その可能性は年々低下していきます(使いやすい油田≒発見しやすい油田ですから)。今後、石油の価格は急速に高騰していくことは、ほぼ避けられない事実でしょう。
ではどうするか。やはり当面は原子力に頼らざるを得ないのか、まだ不安定な新エネルギーに軸足を移すのか、価格高騰と温室効果ガスの多量排出を覚悟の上で化石燃料に頼るのか、それともエネルギー消費量自体を抑制させるのか―。
・・・私としては、3番目を重視することだけはあってはならないと思っていますが。
「その時」は、ある日突然訪れるようなものではありません。なだらかな丘の頂が分かりにくいのと同様、「後で振り返るといつのまにか石油文明の頂を越えていた」というような感じで訪れることになるのでしょう。
その「分水嶺」を私たちはすでに通過していたのではないか、とする報告がnatureに掲載されました。
http://www.nature.com/nature/journal/v481/n7382/full/481433a.html
http://www.wired.com/autopia/2012/01/nature-journal-study-peak-oil/
従来、石油の使用量が増加するにつれ、石油の価格は上昇していました。ただしその速度はゆっくりで、産出量が1メガバレル/日(≒1.6億リットル/日)増加する間に、1バレル(≒160リットル)あたりの価格は2ドル上昇する程度のものでした。この傾向は2005年まで安定して続いてきました。現代文明が急速に発展できたのは、石油という便利極まりないエネルギーが安価に供給され続けたことに強く依存しています。
しかし2005年以降、この傾向は一変します。石油の産出量が1メガバレル/日増加する間に、1バレルあたりの価格は約30ドルも上昇するようになったのです。この傾向は2005年以降現在まで、ずっと続いています。

概念図。2005年以前は青い線の産出量/価格の関係だったが、以降は赤い線の産出量/価格の関係に切り替わっている。
石油価格は、他の商品と比べても、市場により強くコントロールされます。需要が増せば価格は上昇し、生産が増加すれば価格は低下するという、シンプルな需要/供給関係が成立しやすいのです。
これまでは、増加する需要に供給が追いついてきていたため、バランスがまずまず上手く取れていました。2005年以降の産出量-価格のバランスの変化は、ついに生産が需要を満たせなくなったことを如実に示しています。
むろん、これまでに見つかっていない巨大かつ採掘の容易な油田が見つかることはあるでしょう(極地で多く見つかる可能性があるでしょうね、皮肉なことに)。しかし、その可能性は年々低下していきます(使いやすい油田≒発見しやすい油田ですから)。今後、石油の価格は急速に高騰していくことは、ほぼ避けられない事実でしょう。
ではどうするか。やはり当面は原子力に頼らざるを得ないのか、まだ不安定な新エネルギーに軸足を移すのか、価格高騰と温室効果ガスの多量排出を覚悟の上で化石燃料に頼るのか、それともエネルギー消費量自体を抑制させるのか―。
・・・私としては、3番目を重視することだけはあってはならないと思っていますが。
氷床が暗くなる
北極・南極に存在する氷は太陽光を強く反射するため、太陽から地球に入射するエネルギーに大きな影響を与えます。
ところが、このうちグリーンランドに存在する氷床が、近年だんだん暗くなっているという報告がありました。太陽光反射する能力が、低下しているというのです。このことは、地球のアルベドを変化させるのみならず、氷の融解を加速させる原因となり、二重の意味で深刻です。

2000~2006年と比較した2011年のグリーンランド氷床の太陽光反射率。ほぼ全域で太陽光反射率は低下しており、特に融解が進んでいる周縁部で顕著。NOAA HPより。
なぜ氷床が暗くなっているのでしょう?報告によると、以下の3つの原因が指摘されています。
・氷が溶けて各地に「池」ができる。池は氷床に比べると反射率が低く、暗く見える。
・氷の融解に伴い、ダストを含む氷の面が露出する。
・氷が溶けるほどの温度ではないグリーンランド中央部においても、気温上昇は見られる。気温上昇により氷床の表面を覆う氷晶の形が崩れ、これがアルベドの低下をもたたしている。
なるほど、過去に紹介したようにグリーンランド氷床の融解は予想以上の速度で進行していますが、これもその一因なのかもしれません。
とはいえ、氷のアルベド観測はあまりデータの蓄積がなく、観測を積み上げる必要がありそうです。
ところが、このうちグリーンランドに存在する氷床が、近年だんだん暗くなっているという報告がありました。太陽光反射する能力が、低下しているというのです。このことは、地球のアルベドを変化させるのみならず、氷の融解を加速させる原因となり、二重の意味で深刻です。

2000~2006年と比較した2011年のグリーンランド氷床の太陽光反射率。ほぼ全域で太陽光反射率は低下しており、特に融解が進んでいる周縁部で顕著。NOAA HPより。
なぜ氷床が暗くなっているのでしょう?報告によると、以下の3つの原因が指摘されています。
・氷が溶けて各地に「池」ができる。池は氷床に比べると反射率が低く、暗く見える。
・氷の融解に伴い、ダストを含む氷の面が露出する。
・氷が溶けるほどの温度ではないグリーンランド中央部においても、気温上昇は見られる。気温上昇により氷床の表面を覆う氷晶の形が崩れ、これがアルベドの低下をもたたしている。
なるほど、過去に紹介したようにグリーンランド氷床の融解は予想以上の速度で進行していますが、これもその一因なのかもしれません。
とはいえ、氷のアルベド観測はあまりデータの蓄積がなく、観測を積み上げる必要がありそうです。
寒気流入
日本時間24日9時の850hPa予想図、Unisys weatherより
来週はかなり寒くなります。愛媛も南予を中心に雪が積もることがありそう。ご注意ください。
今回の寒波、大きな特徴があります。ひたすら長期間居座ります。先の予想は難しいものですが、日本全体が強い寒気に覆われた状態が2週間近く継続する予想になっていて、これが的中するとしたら、平成18年豪雪の時の12月の状況に近くなるかもしれません。
雪の多い地方にお住まいの方、特にご注意を。
2011年の気候
NASAによると、2011年の世界平均気温は、観測史上 9番目に高い値となりました。
NASA HPより
一方、イギリス気象庁によると、2011年の気温は観測史上第11位の高温となったようです。NOAAも、まだ正式な発表はないものの第11位としているようです。
去年末、イギリス気象庁は2011年を「2010年ほど高温にはならない、しかし観測史上のトップ10には入るだろう」と予測しました。この予測は、よい精度で的中したと言えるでしょう。
さて、今年はどうなるでしょう?イギリス気象庁の予想では、トップ10には入る高温になるだろう、ただしトップになるようなことはないだろう、としています。現在、ラニーニャ現象が起きていますが、この影響がもう少し継続すると思われます。これが地球平均気温を引き下げる方向に働いているのです。
この10年ほど、全球平均気温は上昇していないように見えます。実際、この10年のみを抜き出してグラフを描くと、近似直線はむしろ低下傾向すら示します。

この10年間に限定した全球平均気温の推移および回帰線。NOAAデータを用いて描画。回帰線(青)はむしろ低下すら示す。
これにはさまざまな要因があるでしょう。先日紹介した北極振動の変化や、ENSOの発生具合などが考えられますし、太陽活動の低下もある程度の影響を与えているかもしれません。しかし、それにも関わらず、依然平均気温は高い水準を維持していることこそが、状況の深刻さを示していると言えます。