グリーンランド氷床融解、加速 | さまようブログ

グリーンランド氷床融解、加速

 アラスカ南極ヒマラヤと、氷河の融解が進んでいることを示す記事を取り上げてきましたが、今度はグリーンランドの報告です。
 これまでもグリーンランド南部では氷床融解が進んでいましたが、今回、北西部でも融解が加速しているとの報告がコロラド大およびデンマーク国立工科大学の共同研究により示されました。
 元論文はdoi:10.1029/2010GL042460です。GRL全文を読める環境にないので、abstractおよびハイライトしか見ていませんが・・・。
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 今回の報告に先立つNASAの調査結果を示す動画。2005年頃に南部海岸線で急速に融解し始めた氷床が、2008年にかけて北西岸でも融解が広がり始めていることを示す。
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 そして、今回の報告では、2009年になってもその傾向は止まらず、さらに拡大していることが示されています。コロラド大の動画を見ると、北西部どころか北端にまで融解範囲が及んでいることが見て取れます。
 氷床の融解量観測法は、衛星観測およびGPSによる地面の隆起量計測の組み合わせが基礎になっているようです。
GPS:グリーンランドを覆う分厚い氷は、その重さのため、氷の下の大地を押し下げています。ところが、重りになっていた氷が解けると大地はゆっくりと隆起を始めます(アイソスタシー)。たとえば、グリーンランド北西部にあるチューレ空軍基地では、2005年以降で約4cm隆起したとのことです。隆起量から氷床の流出量を推測できます。
衛星:重力の変化を捉える衛星GRACEにより、氷床の変化を見積もっています。氷が融けるとその分質量が減少しますが、それに伴う重力変化を捉えるのです。ヒマラヤでも用いられていましたが、氷河全体のバランスを見るにはこれが最も多用されているように感じます。

 GPSとGRACEを組合わせたのが今回のミソのようですが、ちょっと本文を読まないと詳細は分からないですね。
 いずれにせよ、2002年~2009年にかけ、グリーンランド全体で約90立方キロメートルの氷床が失われ、これにより世界の海面を0.5mm/年上昇させた計算になる、とのことです。これは数年前の見積もりより遥かに深刻な値です。2007年のIPCC AR4では、グリーンランド氷床の海面上昇への寄与は0.14~0.28mm/年程度の寄与と見積もられていて(WG1 Chap.4, Table4.6)、その2~3倍の速度ということになります。今後もこの氷床融解は加速するだろう、とされています。
 本当に、氷床の融解については「良くない」報告が続いています。



3/28追記 NASAのHPでも紹介されました。