さまようブログ -17ページ目

南極大陸

 ここ数日、このページに 異様にアクセスが増加しました。原因はおそらく朝日新聞のこれでしょうね。


南極氷河に29キロの亀裂 巨大氷山誕生の兆しか

http://www.asahi.com/science/update/1104/TKY201111040079.html


 パイン島氷河の崩壊は以前から予測されていたものであり、特に驚くようなものではありません。また、記事には「過去にもあった自然現象」としており、これも全くその通りだと思います。しかし、"地球温暖化との関連は否定している"という一文には非常に違和感を感じます。

 実際、AFPではそのようなことは書いていません。

http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2838875/8028500

 

 これらの記事の元になったのは、

http://www.nasa.gov/mission_pages/icebridge/news/fall11/antarctic-ice.html

http://www.nasa.gov/mission_pages/icebridge/news/fall11/pig-break.html

 などでしょう。ざっくり読んだ限りでは、「温暖化とは無関係」などとは一言も書いてありません。一方で、「温暖化が原因」とも書いていません。今回観察された現象を淡々と述べている、という感じです。

 以前類似の記事を書きました が、「この現象は温暖化のせいだ、あの現象は温暖化とは無関係だ」と明確に線引きできるような類のものではありません。おそらくは、「自然現象とも温暖化の影響とも言えない」もしくは「自然現象と温暖化の影響が複合している」のどちらかしか言い様がないのではないかと思います、

新たな根拠

 お久しぶりです。このところやや忙しかった上に体調不良で、ほとんどネットに接続していませんでした。


 さて、CNNにこんなニュースが流れました。

・気候に関する新たな研究は、懐疑論に打撃を与えた

http://edition.cnn.com/2011/10/21/world/americas/climate-study-warming-real/index.html?hpt=ieu_t3


 Berkeley Earth Surface Temperature project (バークレー地表温プロジェクトと直訳するのでいいのかな?)という、IPCCやNASAなどとは独立した組織が、過去の気候に関するデータを洗い直し、独自の気候再現を行ったのだそうです。

 過去200年に渡る気候再現に用いた気温データの総数、なんと16億点。まあ、人類はこれほどまでに気温を測定してきたのかと、あらためて感心します。

 その結果は、NASAやNOAAなどのデータと非常に良い一致を示しました。これは、IPCCなりNASAなりが、ある特定のバイアスに基づきデータを処理しているという事実は存在しない、ということを示します。



さまようブログ

青:NASA 緑:NOAA 赤:ハドレーセンター(イギリス) 黒:今回のバークレープロジェクト

ほぼ完璧な一致を示す。Berkeley Earth Surface Temperature HP より。



 気候変動に関する懐疑論にも多くの種類がありますが、気温上昇そのものを否定する人は、さすがに少数派ではないかと思います。その少数派の人たちにとっては面白くない結果かもしれません。

 ただ、勘違いして欲しくないのですが、気候変動は起きていると考えている圧倒的多数の科学者にとっても、これは面白くない結果なのです。何らかの重大な過誤が明らかになり、気候変動は起きていないということが明らかになって欲しいとすら言えるのです。

 温暖化に関するこれまでの研究に重大な誤りがあり、温暖化が否定されるのであれば、それは人類全体にとって良いことであり大歓迎です。研究に対するプライドなど、人類全体にとっての利益に比べれば取るに足らないものです。

 しかし現実には温暖化は起きていることが強固に裏付けられてしましました。困ったものです。


10/28追記

気候変動覚え書きさんのページ で、非常に詳細な説明がされています。こちらもぜひ。

スキタイ

 広島県立美術館で開催されているスキタイ展 に行ってきました。本当の名前は「ウクライナの至宝 ―スキタイ黄金美術の煌き―」ですが、まあスキタイ展です。個人的には、このあたりの話は大好きです。中央アジアや東欧あたりにかけての遊牧騎馬民族、かっこいいですよねー。

 スキタイの象徴と言っていい黄金細工の素晴らしさは言うまでもないのですが、個人的には青銅器の保存状態に感激しました。日本では、例えば銅鐸を見ると緑青が吹いていたり一部溶解していたりしますが、スキタイでは紀元前の遺物であってもそんなことはありません。それどころか、本来の青銅の色(≒金色)までも残っていたりします。やはり土壌のpHの影響が大きいのでしょうか(日本の土壌は酸性、それに対しウクライナの黒土地帯は塩基性より)。

 漫画「ヒストリエ 」を思い出します。どこまでも続くウクライナの大平原をイメージしながらこれらの遺物を眺めるのは、いい経験でした。

銅の夢

 愛媛には別子銅山 という銅鉱山がありました。かつては世界最大の銅産出量を誇り、住友家・住友財閥・住友グループの礎となりました。

 この別子銅山はまずまず有名ですが、愛媛県の西部、佐田岬半島周辺も、短期間とは言え別子に迫るほどの産銅量を誇ったことは、おそららくほとんど知られていないでしょう。

 ということで、佐田岬は女子鼻(めっこのはな)に残る銅精錬所跡に行ってきました。


さまようブログ

こんな所です。周りはあちこち銅山だらけでした。また、女子鼻の東南東に佐島という島がありますが、ここにもかつて銅の精錬所がありました。

さまようブログ

稼動した期間はそう長くないですね。銅開発の歴史≒公害との戦いの歴史。

さまようブログ

遊歩道を歩くこと20分。レンガの遺構が見えてきました。

さまようブログ

このあたりの岩盤は、強度に変成を受けた緑泥片岩から成っています。なので、石垣も青緑色。

さまようブログ

釜に風を送る通風路でしょうか。



さまようブログ
上から見るとこんな感じ。この穴の中にかつては釜があったのかな?


さまようブログ

海岸に下りてきました。黒いものは、銅を精錬した後に残る鍰(からみ)。青石の石垣の上にへばりつき、異様な迫力です。手前には煉瓦の構造物跡も。

さまようブログ

彼方には巨大な風力発電の風車が回っています。

さまようブログ

女子岬灯台です。空が青いですねえ。そして、海も石も青い・・・。

さまようブログ
おまけの伊方原子力発電所。この伊方原子力発電もいつの日にかは精錬所跡のように廃墟になる日が来るのでしょうか。


 

選ぶべき道

 今後のエネルギーはどうあるべきか―。この問題に関する正解は、おそらくありません。ありませんが、私たちは何らかの選択をせざるをえないのもまた事実です。

 日本学術振興協会が、今後ありうる6つの道を提示しました。

http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/shinsai/pdf/110922h.pdf

 6つのシナリオを全文コピー&ペーストします。


A:速やかに原子力発電を停止し、当面は火力で代替しつつ、順次再生可能エネルギーによる発電に移行する。

B:5年程度かけて、電力の30%を再生可能エネルギー及び省エネルギーで賄い、原子力発電を代替する。この間、原子力発電のより高い安全性を追求する。

C:20年程度かけて、電力の30%を再生可能エネルギーで賄い、原子力発電を代替する。この間、原子力発電のより高い安全性を追求する。

D:今後30年の間に寿命に達した原子炉より順次停止する。その間に電力の30%を再生可能エネルギーで賄い、原子力による電力を代替する。この間、原子力発電のより高い安全性を追求する。

E:より高い安全性を追求しつつ、寿命に達した原子炉は設備更新し、現状の原子力による発電の規模を維持し、同時に再生可能エネルギーの導入拡大を図る。

F:より高い安全性を追求しつつ、原子力発電を将来における中心的な低炭素エネルギーに位置付ける。


 さて、どれがもっともよいと皆さん思われたでしょうか?間違いなく言えるのは2つ。どの道も決して楽なものではないこと。そして、どれを選んでも必ず誰かの不満が生じること、です。

 私ならどのシナリオを選ぶでしょうか?「これが一番だ!」と言い切れるようなものがあればそれが一番かもしれませんが、私にはどれも短所がある意見に思えます。よって、「消去法」にならざるをえませんでした。


A:あまりにリスキーです。この道を選択することは、原油などの価格の変動や国際政情の影響をもろに受けすぎて、綱渡りの国家運営が強いられます。むろん、気候変動の観点からも非常にリスキーです。

B:30%もの電力を再生可能エネルギーと省エネルギーで置き換えられるかというと、確信は持てません。地震直後の今年の夏、東京電力管区内ですら、電力消費量は昨年比-14%にとどまりました。

http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110926e.pdf

人類は数年間も緊張感を持続させることは困難な生物でしょう。来年以降も節電意識が徹底できるのか。徹底できたとして今年の倍近くも電力消費を削減可能なのか。あまり楽観的にはなれそうにありません。

また、わずか5年で再生可能エネルギーを飛躍的に増加させることはちょっと無理があると思います。法律や条令の改正はどうしても数年程度のスパンは見る必要がありそうだからです(よほど強力な政府が現れれば別かもしれませんが)。

C:これは見込みがあるように感じます。ドイツは、2050年までに全電力の80%を再生可能エネルギーに置き換えることを目指すとする目標を立てています。そのように、再生可能エネルギーの研究および普及に予算を集中的に投入すれば、決して不可能な目標ではないと感じます。予算を投入する余裕があるかどうかが問題になりそうです。

D:これはCとほぼ同じということでいいでしょう。ただ、個人的には、20年と30年の違いは、極めて重大な差異を産む可能性はそれなりに高いかもしれないとも感じます。東海~南海にかけての巨大地震の影響です。地震の発生確率が正規分布を描くのであれば、20年後~30年後にかけては、急激に発生確率が増加していく時期に当てはまってしまいます。

E:数値目標がはっきりしません(原子力発電は現状維持(±0%)という目標があるとも言えますが)。最もフレキシブルな案とも言えますが、同時に玉虫色の案とも言えそうです。

F:これはどうでしょう、個人的にはこれもアリかとは思うのですが、国民感情が受け入れるかどうか。少なくとも今の段階では無理なようにも思えます(来年になれば変わっているかもしれませんが・・・)。


 というわけで、私の中ではA、B、Fはちょっと難しいだろう、という思いがあります。Eも、やや漠然としていて評価が難しい気もします。よって、私としては、C、Dを推したいと思っています。再生可能エネルギーのコストがどこまで下がるか、そこに多くがかかってくる目標ですが、そのように目標が明示されれば努力もしやすくなります。

 もちろん、これら以外のいわば「第7の道」が明らかになる可能性もあるでしょう。

 そして、個人的には最重要だと思うことが一つ。私たち」がどの道を選択したとしても、「私たち」は一度選択されたらその目標を達成するために協調しあうこと。

 一歩間違えば、全体主義に繋がる危険性はあるのですが、これなくしてはどうしようもないこともまた事実だと思うのです。ただし、その際にも多様な意見の存在を否定することは許されません。

 重要なのは、中庸・寛容・多様。気づいてみれば、私の考えはいわゆる「漸進主義 」に非常に近いものになっていました。いつの時代でも漸進主義は適用可能かというと、そうではないでしょう。急進が求められる時代もありえるとおも思います。しかし、今ならまだ「ゆっくり進む余裕」がある、私はそう思っています。

 まだまだがんばれば何とかなる。私たちはそういう時代・世界に生きている。つくづく、いい時代・世界に生まれてきたものだ。私はそう信じています。


 科学的ではない上に、なんともクサいエントリーになってしまいました(笑)まあたまにはいいかな?