落合監督・・・
私、愛知には何のゆかりもないのですが、なぜか小さい頃から中日ドラゴンズのファンでした。親によると、私は青色が好きだったからじゃないか、とのこと。納得できるのですが、だったら大洋ホエールズ(懐かしい)や西武ライオンズでもよさそうなものですが・・・。
近藤の初登板ノーヒットノーラン や今中の超スローカーブ なども印象に残っていますが(歳がばれる)、落合のライトスタンドへのホームラン もいい思い出です。
その落合が監督になり、そして誰も文句の付けようのない成績を8年間も維持しました。名選手名監督という希有の存在でした。
山井のパーフェクトゲームを中断しての岩瀬投入 、タイロン・ウッズの優勝を決定付けるホームランの後の涙 、WBCに対する(異論はいろいろあるものの)毅然とした態度。私は、落合監督は「実に論理的な、しかし感性も同時に維持した、稀代の名監督」だと思っています。
どんなにすばらしい人物であっても、長い間トップであり続ければ、その人がいなくなったら途端にダメになってしまうというのは、大いにありうることです。なので、フロントの「新しい風を入れたい」という判断も間違ってはいないと思います。
思いますが、やっぱり寂しいですねえ・・・。8年間、ありがとうございました、落合監督。今日もヤクルトに勝ちましたし、ぜひ最後は優勝をしてほしいです。
溶かしすぎた
左は"Times Atlas of the World"という、世界で最も有名な地図帳の最新版に記載されたグリーンランドの地図です。なんだか私が小さい頃に見たグリーンランドの地図に比べ、白い部分が小さくなったようい見えます。特に東海岸側。
ところがこれに氷河の研究者達が噛み付きました。「この地図は氷を溶かしすぎだ!」というのです。右の図が現状のグリーンランドをよく表しているものだ、と言うのです。しかも、地図帳には「NSIDCのデータに基づいている」「この氷床の面積減少は地球温暖化による」と明記されているのだそうです。
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/09/atlas-shrugged-outraged-glaciologists.html?ref=hp
なるほど、東海岸や南海岸では明らかに左図のほうが氷が後退しているように見えます。もし左図が正しければ、グリーンランドの氷床は約15%が失われたことになり、その場合海面は1mは上昇しているはずだ(もちろん現実にはそんなことはない)、と氷河の研究者たちは指摘しているとのことです。
なんでTimes Atlasがこんな地図を作ってしまったのかは分かりませんが(*)、気になったのは氷河学者の反応。Times Atlas最新版が発売されたのは1週間前だそうですが、すでに質問状を送っているとのことで、非常にすばやい反応ではないかと思います。やはり以前のヒマラヤ氷河消失に関するミス は教訓になったのでしょうね。"いろんな意味"で。
また、気候変動研究に関わる多くの科学者は、決して気候変動を誇張したがっているのではないことも分かりますね。それと同時に、「このようなことを、地球温暖化に懐疑的な人たちに利用されることを危惧している」とも述べられています。「ほらやっぱり陰謀だ」という感じですかね。それを避けるためにも科学者はこのようなミスがあった場合、即座に指摘すべきなのでしょう。大変ですが。
最後に、グリーンランド氷床は15%も溶けてはいませんが、大規模に融解しつつあることは間違いない ことは強調しておきます
*:例えば、地図の製作者が、氷床から山が頭を出しているようなところを氷床ではないとみなしてしまったのではないか、とか、空から観察すると氷床と地肌の区別は案外難しく、雪があったりするとさらに困難になるからではないか、とか推測は述べられていますが。
2011/09/24追記
「気候変動千夜一夜 」のページでも取り上げられています。詳しい紹介があるのでこちらもぜひ。
気候変動と戦争
近代の内戦とエルニーニョ現象には関連がある、だそうです。
http://www.natureasia.com/japan/nature/updates/index.php?i=84634
1950年以降の国内紛争の21%で、ENSOがその一因となっているって、刺激的ですねえ。額面どおりに読めば「温暖化すると熱帯諸国で内戦増えますよ」となりますが。
あまり信用しすぎないほうがいいような気もしますが(笑)、ちょっと読んでみます。
南極海に供給されるダストと気候の関係
http://www.nature.com/nature/journal/v476/n7360/full/nature10310.html
過去400万年、陸から南極海に輸送されたダストの量と気候には強い相関がある、との報告です。
寒冷化が進むと、陸は基本的に乾燥に向かいます。また、寒冷化が進むと地球の平均風速が増す傾向があります。この2つが主因となり、寒冷期には陸から海に送られるダストの量は増加します。
さて、陸から海に送られるダストには鉄が含まれています。以前紹介しましたが、 陸地から遠い海では、海水に含まれる鉄濃度がプランクトン増殖の律速になっています。つまり、
気候の寒冷化→海洋への鉄供給の増加→プランクトンの増加
というストーリーがあるわけです。
問題はこの次。プランクトンが増加したときに起きる現象です。
有孔虫 や円石藻 など、石灰質の殻を持つプランクトンがいます。鉄が増加するとこれらのプランクトンも増加します。すると、多くの二酸化炭素が炭酸カルシウムとして固定されることになります。そして、炭酸カルシウムは一部は海底に沈殿してしまい、炭素循環から切り離されてしまいます。結果、大気中の二酸化炭素は減少し、さらなる寒冷化を招きます。よって、
気候の寒冷化→海洋への鉄供給の増加→プランクトンの増加→大気中の二酸化炭素の固定→さらなる寒冷化
という、生物由来の「正のフィードバック」が起きてしまうのです。寒冷化がさらなる寒冷化を招いてしまうのです(この効果を生物ポンプ と呼びます)。
時に「温暖化すると植物の光合成が活発化するので問題ない(生物による負のフィードバックがはたらく)」という意見を耳にします。実際には陸上植物でもそう単純な話ではないのですが、生物ポンプの効果(正のフィードバックとしてはたらく)まで含めると、とてもそう楽観できるものではないことが分かります。
さて、この論文では、南極海の海底からコアを採取し、ダスト量と鉄の相関およびそれらと気候との相関を、過去400万年に渡り再現しています(ダストの量は、堆積物中のワックス(植物の葉に含まれる)を用いて再現)。
上段青:海底の堆積物から再現されたδ18Oの変化。δ18Oは氷床の消長(≒気候)と強い相関があることが分かっている。
上段灰色:堆積物に含まれる植物ワックス由来炭化水素の量≒ダストの量。δ18Oとよい相関がある。
上段赤:堆積物中の鉄の濃度。これもδ18Oとよい相関がある。
下段:海底の堆積物から得られた鉄濃度(赤)と南極のアイスコアに含まれるダスト(黒)の過去80万年分の相関。極めてよい相関がある。
Natureより。
すばらしいですね、ここまではっきりとダストの量と気温に相関が見られるとは。
アイスコアは100万年弱のデータしか得られませんが、海底の堆積物なら数百万年分(場所によってはおそらくそれ以上)のデータを得ることも可能です。過去の気候変動を理解するための新たなツールが手に入った、といえるでしょうか。
いやがらせ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110817-00000169-yom-soci
そろそろ科学的に反論することが厳しくなってきたようで、嫌がらせや脅しに頼らざるをえない状況になっていると見えます。
これも「気候変動覚え書き」さんのページですでに指摘されていました 。
ある意味、まだ笑い話ではありますが、深刻な問題でもあります。日本でも原子力発電事故に関し少しでも政府や東電を擁護している(彼らにはそう見えるらしい)と感じただけで「エア御用」とレッテルを貼り、はなはだしい場合は訴訟まで起こすということが起きていますが、自分の意に沿わない学者に対し訴訟を起こすというのは、残念ながら嫌がらせとしてはそれなりに有効なんですよね。その分、本来なら研究にまわせるはずだった時間を、訴訟対応に振り分けなければならないのですから。かといって、これらの訴訟をシャットアウトしてしまうわけにもいかないですし。
近年、患者からの訴訟に悩む医師は、訴訟対策を学ばざるをえないという状況になっているそうですが、気候変動問題を研究する学者もそういうことになってしまうのですかねえ。私には思いつきませんが、何らかの対応策が必要なのかもしれません。
7:42追記
「「温暖化の気持ち」を書く気持ち 」でも紹介されています。