前回の投稿から3年、皆様ご無沙汰です。
ドイツの田舎町から米国アリゾナ州に移り住み早2年半。
窓の外ではNo Kingsプロテストで大騒ぎ。
米国助教授生活の近況を発信しようにも、
留学生のビザ政策や研究費の変動など、大きな変化が続く昨今、
政府、大学、学生、誰が読んでも安心安全な内容を発信する難易度はかなり高く、
デジタルタトゥーとして未来に炎上するリスクまで考えると、
SNSやブログでの発信は、いつ誰にどう受け取られるか分からず、正直怖く感じるようになった。
もう誰も見てないであろう16年前から続くこのブログにも、
ごく少数ではあるが物好きな読者はおり、
読み返すと恥ずかしすぎる、クソ生意気な22歳の自分が、
38歳のおっさんになり、今何を感じて、何を目指しているのか、
ご報告する義理を通そうと、久々に発信してみようと思った次第です。
(教員一年目にカメのようにゆっくり生きようと描いたアクリル画)
ハッピーエンド後の物語
魔王を倒し、ハッピーエンド後の勇者一行を描く漫画が、
世界中で高い人気を誇っているように、
あまり語られないが、気になるハッピーエンド後の物語。
昆虫少年が学者を志し、就活という魔王を倒し、
ほぼ強運だけで大学教員になれてしまった後の物語。
米国大学で大学教授になればやりたい研究を好き放題できると思っていた。
でも現実は、
周りから期待されている仕事が思っていた仕事と違ったり、
これは面白いと自信満々に書き上げた研究費アイディアがかすりもせず、
なぜか10分の1以下の労力で書き上げたアイディアが評価されたり、
チームのメンバー集めも業績も結果が出ない焦りや不安、
美化され憧れた大学教授の姿と現実の自分の姿はかけ離れていた。
最初の2年間で一番辛ったのは、
「学者への道」と掲げ、実際に学者(PI:Principal investigator)になる夢を叶えたことで、
ずっと目指していた夢や目標を失ってしまったと感じたこと。
新しい夢を探してやろうと色々模索するも、
子供の頃から憧れ続けてきた夢に匹敵する夢なんて、そう簡単に見つかるわけもなく、
夢が叶わなくても、
夢を叶えても、
夢は失うものなのかもしれない、
という、不のスパイラルに陥っていた。
空島での転機
3年目と5年目の審査で結果を示せなければ大学をクビになるので、
どうせダメならと、
自分が本当に面白いと思う研究をやろう、
と覚悟を決めて、研究の原点に立ち返った。
所属する健康科学の先生たちや周りの理解が得れなくとも、
見よう見まねな中途半端な応用科学ではなく、
アリゾナの砂漠の海に囲まれた山々、空島(sky island)を舞台に、
野生ネズミたちの腸内細菌はどこからきて、
どのようにネズミと細菌が共に進化してきたのか、
というバリバリ基礎科学な研究テーマに舵を切った。
灼熱の砂漠から、空を貫く山頂まで、ネズミを捕まえる大冒険。
ネズミ調査未経験なポスドクと博士の学生、船員は2名。
行き先を決める頼りない船長は、わたくしDr.T。
共同研究者のすご腕集団にも加わってもらい、
2泊3日、シャワーもないテント生活。
早朝のトラップ回収からサンプル収集とみんな体力の限界まで働き、
夜はキャンプファイヤー、恥ずかしげもなく自慢話を繰り広げ、
教員初のフィールドワークは大成功。
無事調査を終えた安堵感と心地よい疲労感に酔いながら、
日本の入浴剤を入れた、アメリカあるあるの浅めのお風呂に横たわり、
「自分の研究室を持って、大自然に飛び出し、チームで一緒に自然科学を語り合うのが夢だった。
二人はその夢を叶えてくれた。本当にありがとう。」
とチームにテキストを送ると、
チームメンバーも同じワクワクに共感し、楽しんでくれたことが伝わる返信をくれた。
久々にボロボロ涙がこぼれ、
夢を叶えた、とカッコつけていた自分が急に恥ずかしくなり、
まだ始まったばかりだったこと、
学者への道が間違いでなかったこと、
やっと夢の先の夢が見つかった気がした。
面白いものでこういう転機の後には朗報もあり、
アリゾナ州政府からヒトと腸内細菌のゲノムの組み合わせによって免疫や代謝に影響が出るのか調べる研究費獲得の知らせや、
アメリカ国立衛生研究所(NIH)から空島の野生ネズミの共進化を調べる、若手教員では最大規模の研究費の獲得可能性を示す知らせなど、
3年目にしてようやく仲間に恵まれ、結果も出てきた。
夢の先の夢
この世界はカオスそのものだが、
その中にも美しいヒトやモノやルールが存在し、
それを進化学のレンズで解き明かしていく面白さや楽しさを、
次の世代につないでいくのはおそらくライフワークとして今後も変わらない。
春学期終わりを祝う研究室ピクニック&ハイキング。
いいリーダーを気取りたい自分と無料ブランチを食べられる学生との共生。今の若い世代は(老害発言で恐縮)、本当に達観していて成熟している子が多い。そんな彼ら彼女らが活躍できる環境を整えて、早くバトンを渡して引退したいと思わせてくれる。
そう思わせてくれるもう一つの理由は、趣味が爆発していて、いくら時間があっても足りないから。
ハゼとテッポウエビの共生。
エビが巣穴を提供し、ハゼが敵を見張る。ハゼが美味しくないと思う餌は口に咥えて、エビにプレゼント。
イソギンチャクとクマノミの共生。
イソギンチャクの毒はクマノミを外敵から守り、クマノミの食べ残しや泳ぎ回ることで舞い上がる餌をイソギンチャクがキャッチ。
一時帰国するたびに足をはこぶ高校時代から通う横浜市の里山。
ヒトはコメを食べるために水を張り田植えをするが、コメはヒトを使って世界中に分布を拡大する。米騒動もお構いなし。
仁和寺に近い京都の祖母の家近くの山。
青緑の地衣類は、キノコ類が体を提供し、藻類とシアノバクテリアが太陽からエネルギーを提供する複合生物。コケや落ち葉は樹木ベービーの乾燥を防ぎ、木々はコケや樹木ベービーの成長に絶妙な湿度と日陰を提供している。
今年亡くなった東京の祖母の墓の前で集合写真。
祖父母が残した遺伝子と飲みっぷりはしっかり次世代に受け継がれ、いとこ会の約束、家族ゴルフに、60代の両親と30代の息子二人で深夜2時すぎまでサイコロ振ったり、相変わらず仲がいい。
ヒトも、魚も、エビも、イソギンチャクも、コメも、木も、苔も、
みんな利己的に行動して欲望のまま楽しんでいるだけなのに、
結果として、他の生き物の役に立ったり喜ばれたり、利他的な行動になっている。
そんな共生が進化生態学的に一番美しい。
水槽の生き物も、ヒトの集団や国も、地球の生態系も、
時間や空間のスケールが違うだけで、そこまで大差ない。
そんな美しいルールを一つ一つ見つけて、シェアして、
毎日に感謝できたら、それは理想であり、
今の夢の先の夢だ。
と、こんな時代だからこそ、
きれいごとっぽい真実をまとめてみました。
ChatGPT編集長から「炎上リスク低い」とのお墨付きをいただいたので、
またこっそり更新します。










