最高の一日 | "学者への道"

"学者への道"

ドイツ研究生活を舞台にした生物学者の奮闘記。"学者への道" in Arizona、"学者への道" in California Berkeleyの続編ブログです。

やりました!

やってやりました!

ついに昨日、

進級試験に合格しました(´∀`)



進級試験とは、PhD(博士号)にふさわしいか審査するプロセスで、

うちの学科の場合、卒業研究計画書の提出、30分の研究プレゼン、教授4人と密室で2.5時間の口頭試験です。

これに合格すると、PhD student (学生) からPhD candidate(候補生)のステータスに変わります。

日本で博士課程中に進級試験/適性試験があるのはまだ稀ですが、アメリカではほとんどのPhDプログラムでなんらかの審査があり、

PhD candidateになると、卒業論文を提出すればいつでもPhDを獲得できるというお墨付きがもらえるようなものです。TAの給料が上がったり、応募できる助成金が増えたり、学費が下がったりするメリットもあります。



正直そんなメリットはどうでもよく、

アメリカに留学してからの約5年間、

必死に勉強してきたことが評価されたことに、

もううれしくてうれしくてしょうがないので、

最高の一日の話しを聞いてやってください。



その前に、テスト開始までの一週間のハプニング集をどうぞ。


テスト一週間前、応募していた研究奨学金の書き直しを言い渡される。


テスト4日前、うちのボスから研究計画書の一部書き直しを言い渡される。


テスト前日お昼、同研究室のDちゃんが進級試験に通らず、秋学期再試験を言い渡される。Dちゃんとだれも連絡とれなくなり姿くらます。

(バークレーのうちの学科の進級試験は1/3が落ちるというデータがあり、一回目の試験に落ちることはよくあるらしいのですが、Dちゃんは思い詰めちゃったらしい。)


テスト前日午後、これにうちのボスが不安になったのか、急きょ自分とマンツーマンで模擬口頭試験、プレゼン発表練習を行う。

(うまくこなせたからいいものの、ボスからしてみればアリゾナから連れてきた生徒が二人連日試験に落ちたとなったら顔が立たない。ハンパないプレッシャーを感じる。笑)


テスト当日朝、試験開始は午後1:30。試験を受ける生徒は食べ物などを教授陣に振る舞う伝統があるのですが、ベーグルとコーヒーを準備するよう頼んでた友達と連絡がつかず。

(不思議なことで自分からのメールは届くけど、友達からのメールは受け取れないというiPhone七不思議が試験当日に発生。でもちゃんと準備しててくれました)


テスト2時間前、何をしていいのかわからなず、緊張からかその辺をうろうろする。

(大学院の先輩からはとにかく食べろと言われたので、ヨーグルト、フルーツ、チョコレートをひたすら食べる笑)


テスト1時間前、緊張がピークに。冷静にならなければと、フェースブックの仲間の写真を眺めて、ちょっと涙ぐみ、過去の日記を読み返し、BGMはジブリのリッラクスピアノ集!笑

(瞑想モード。今まで自分がやってきたことを信じるしかないと、モチベーションを上げる)


テスト30分前、試験室へのカギをとりに行ったら、昼休み休憩を終えた太ったおばちゃんにカギは15分前にとりにこいと言われる。

(昼休み休憩が終わっているのに、カギがそこにあるのに、なぜか15分待たされる)



そしてテスト開始

部屋には黒板、質問をする教授が4人、見守る指導教官(ボス)が1人。

対戦するのは、自分vsお偉い教授たち計4人

最初の30分は準備していたお絵描きチョークトークで自分の研究の面白さを力説。

自分が本当に面白いと思うことがどれだけ通用するのか試したいという気持ちが勝ったからか、始まってしまうと不思議と緊張はどこへやら。

その後は教授がそれぞれ約30分ずつ、それぞれの分野の質問をマシンガンのように浴びせてきます。

基礎的な質問に答えていくと、だんだん答えがないんじゃないんかという質問が増えてきます。

質問の答えがわからなくても、「自分はこんなことを知ってるから、こう考えられるんじゃないか」って必死で話してるうちに、自然と質問からディスカッションに。

自分は特に微生物学者、生態学者、生物地理学者、集団遺伝学者と、バラエティーに富んだ教授たちを選んだので、それぞれの分野間のコネクションをつくるたびにすごく喜んでもらえたようです。


試験開始から3時間後、自分は部屋から閉め出され、数分の会議後、

"Congratulations" (おめでとう)

って全員と握手して、無事合格。



これには一安心。

でも一番うれしかったことは、S教授に、

"It was the best qualifying exam I've seen in my career"

(私のキャリアで最高の進級試験だった)

って言ってもらえたこと。

最高の褒め言葉です。



自分の研究がいかにおもしろいのか伝えることができたこと。

異分野の教授陣に自分の考えやアイディアが通用するということ。

大きな自信になりました。



試験後、頭がもうろうとしながら研究室に帰ると、

研究室メンバーがシャンパンとケーキを用意してくれていて、

学科の連絡網にも流れたので大学院生たちとキャンパス近くのバーで一次会、

電車で一駅のカラオケができるバーで二次会、

みんなから祝ってもらえて、おごってもらえて、試験勉強から解き放たれ、

もう最高の一日でした。





人生、山あり谷あり。

試験勉強に苦しんであきらめそうになった谷。

試験に通ってオアシスを熱唱する山。

この先またどんな谷が待っていようとも、

登り終えてこんな景色が待っているなら、

もっと高い山に登った景色を見てみたくなります。



でも今はまず今見える景色を楽しみまっせ!