幸せになるために頑張るな | "学者への道"

"学者への道"

ドイツ研究生活を舞台にした生物学者の奮闘記。"学者への道" in Arizona、"学者への道" in California Berkeleyの続編ブログです。

突然、家賃を2倍にすると大家さんに告げられ、

 

キッチンとシャワーが屋外にある友達の庭の離れに転がり込み、

 

アメリカ生活8年間のシェアハウス生活とおさらばし、

 

31歳にして初めて自分だけのトイレをゲットし、

 

ご機嫌なDr.Tです。

 

 

みなさん明けましておめでとうございます。

 

ほぼ半年ぶりのブログ更新。

 

心配して生きているか連絡をくれた方ありがとう笑。

 

PhD programの卒業を今年の5月に延長して、

 

6月からドイツのマックスプランク研究所でポスドク(研究職)として3年間働くことが正式に決まり、

 

相変わらずドタバタ元気にやっております。

 

 

 

昨年の秋学期は、就職が決まって気が緩むのかと思ったら、その逆だった。

 

ドイツ側から、「研究費、スタッフ、最新の研究施設を自由に使って、好きにプロジェクトを進めていい」、と夢のようなチャンスをもらったのだが、

 

その分、自分でいいのか?バカがバレるのではないか?とこれまで経験したことのない期待やプレッシャーを感じた。

 

ポスドクのプロジェクトを進めながら、授業を教え、研究室の雑用をこなし、残った時間で卒業研究を論文にする作業をするのだが、

 

その忙しさ上、研究の面白さを見失ってもがいている時期があった。

 

 

 

そんな時友達に、

 

「幸せになるために頑張るのではなく、幸せだから頑張れる」

 

(正確な英語を思い出せない)

 

という言葉をもらった。

 

 

 

最初に言われた時はよく意味がわからなかったが、

 

秋学期を戦い抜き、一時帰国を終えた今の自分には、

 

少しその意味がわかる気がする。

 

なぜ幸せになるために頑張るのには限界があるのか?

 

なぜ幸せだからもっと頑張ろうと思えるのか?

 

この半年のイベントを交えてまとめてみた。

 

 

 

 

幸せになるために頑張る限界

 

「勉強が嫌いでも、いい大学に行けば、きっと幸せになれるから頑張ろう」

 

「仕事が辛くても、有名な会社で働いていれば、きっと幸せになれるから頑張ろう」

 

「研究が面白くなくても、学位をとれば、きっと幸せになれるから頑張ろう」

 

勉強、仕事、研究がたとえやりたくないことでも、

 

きっと幸せになれると信じれば、歯を食いしばって頑張るモチベーションにはなる。

 

 

 

幸せになるために嫌なことに耐えて頑張ること自体は何も間違っていないし、

 

自分も留学するためのテスト勉強、好きじゃない単純作業、大学院を生き残るための雑務など、

 

頑張る以外に選択肢がない時は、この耐える頑張りを使うし、それがなければ今の自分がいないのも確か。

 

 

 

でも、この耐える頑張りには限界がある。

 

耐える頑張りだけでは、勉強、仕事、研究が好きで好きでしょうがないやつらには勝てないからだ。

 

例えば、

 

同じ研究室の同僚で今年コーネル大学の助教授になるA博士の「会話の中で科学の話の頻度が高い人ほど優秀な研究者である説」というのがある。

 

毎年恒例となった研究室メンバーでのサンクスギビング3泊4日旅行で、セコイヤ国立公園近くの大きなAirB&Bを借りて、みんなでご飯を作って、ひたすら飲んで食べる。

 

 

せっかくの旅行なのだから仕事(科学)の話はせず楽しもう!という雰囲気なのだが、人によって、気づくと科学や研究の話になってしまう人とそうでない人がおり、業績と正の相関がある笑。

 

学科の友達を考えても、確かに大学教授職をとるであろう優秀な人ほどシチュエーションに関係なく自然と研究の話をしてしまう傾向がある。

 

特にお金にならない自分の分野は、耐える頑張りだけではその分野のトップには到底なれない。

 

 

 

この夏、高校時代の友人で現在は高校教師をやっているTくんとその教師仲間が遊びに来てくれた。

 

 

皆部活の顧問をしており、貴重な休みを合わせてわざわざ来てくれたはずなのに、休暇中もメールで生徒に対応し、指導している。なぜ休暇中まで仕事をするのか尋ねると、

 

ぶつぶつ文句をいいながらも、生徒の性格や彼らの進路を楽しそうに話してくれて、すごく真剣に生徒と向き合っているのがわかる。本当に教師って職業が好きなのだろう。

 

学園祭のステージで熱唱する先生バンドが、女子学生をキャーキャー言わせすぎて、飛び跳ねる生徒の重みで体育館の床が壊れるという伝説を残したこともある普通じゃない先生たち。

 

生活するため、仕事だから、って理由だけで耐える頑張りでしか仕事をしていない高校教師と比べると、そんなやつらがいくら頑張ってもこのスーパーな先生たちには勝てっこない。

 

 

 

幸せになるための耐える頑張りも、生きていく上ですごく大事。

 

でも耐える頑張りだけでは誰にも負けない何かは手に入らないだろうし、何より耐える頑張りだけだと今生きてる自分が幸せじゃない。

 

たとえ現在の耐える頑張りが未来の自分の幸福度への投資だとしても、現在と未来の自分の幸せを常に天秤にかける必要はあるはず。

 

 

 

幸せだからもっと頑張れる

 

「幸せだから頑張れる」と頭を切り替えるために大事なことは二つあると思う。

 

一つは、やりたいことを続けたいという気持ち、

 

もう一つは、今ある幸せに気づけるかどうか。

 

 

 

例えば、

 

一年に一度のペースで日本に一時帰国するのだが、

 

忘年会や新年会では当然「最近どうよ?」って話に毎年なる。

 

31歳にもなると、みんな結婚した、子供ができた、車買った、マイホームを買った、という話が多いのだが、

 

自分だけ毎年、こんな論文を出した、こんな授業を教えた、また引っ越した、3年後はどこでなにをしているかわからない(笑)、という話が多い。

 

変わり者の友達が多いが、その中でも変わり者扱いされるのは嫌いじゃないし、研究と教育にずっと携われたら幸せだって気持ちは昔から変わってない。

 

好きなことを続けさせてもらえるのは幸せなことだし、その幸せを続けたいから頑張れる

 

だからどれだけ頑張れるかは、どれだけ続けたいかの気持ち次第。

 

 

「頑張ってもダメならしょうがない なんて言わないで

 

ダメなら意味もないよと 君に言い切ってほしい」

 

カラーボトル、「10年20年」より歌詞抜粋)

 

 

 

一時帰国最終日前日、大学時代屋上で将来を語り合った仲間と横浜のバーで飲みまくった3次会後の翌日、Rくんがプレゼントしてくれた歌の一部。

 

この歌詞を聴いてハッとしたのは最近の自分の口癖だ。

 

「学位をとった後の3−5年が勝負。もし大学教授になれなかったら、こんな仕事もあるし、こんな仕事もできると思う」

 

という、もしダメならしょうがない発言。バックアップを考えておくことは大事なことだが、勝負の数年を目前にしてビビっている自分、ダメだった時の逃げ道を無意識に探している自分を自覚した。

 

まだまだ大好きな仲間と最先端で科学を続けたい。

 

 

本気でそう思うなら、頑張ってダメなら「しょうがない」じゃなく「意味もない」って言えるぐらいやってやろうって続けていく力をもらった。

 

 

 

 

「幸せだから頑張れる」もう一つの秘訣は、

 

今ある幸せに気づくこと。でも実はすごく難しい。

 

昔できなかったことができるようになったり、当たり前のように支えてくれる人がいたり、

 

日常の中でどんなに小さいことでも幸せだと思える瞬間に気づければ、この幸せのために頑張ってみようって気持ちにさせてくれる。

 

そんな生きていてよかったと思える瞬間たちをどうぞ。

 

 

 

同じ世代で、同じ時期に、同じベイエリアに住んでいる、平日の深夜過ぎまで馬鹿騒ぎできてしまう社会人たちと、近所迷惑で苦情を頂いた瞬間。

(この立派な家の持ち主は出張で留守なのに場所を提供してくれるという愛)

 

 

住所Pacific Oceanって言いたくて、昔本気で船に住もうとしていた人間が、キッチンやベッドルームを完備した豪華ヨットにタダで乗せてもらい操縦をしているフリをさせてもらった瞬間。

(このボートの持ち主はアスリートなどのメンタルをサポートするドクター)

 

 

 

弟が病気になるなんて考えたこともないのに、この夏胸膜炎で大手術をすることになり、家族全員で立会い、無事成功したとわかった瞬間。

(文字通り生きててよかった瞬間)

 

 

 

アリゾナの小さな田舎町で学び、川で一緒に溺れ死にかけたメンバーが、今では金融、スポーツ、宇宙開発などあらゆる分野で活躍し、東京の大都会でおでんを食べている瞬間。

(灼熱砂漠の厳しさを経験した絆は強し)

 

 

 

亡き祖父が残してくれたお金で、鈴木家4代(祖母、親世代、孫世代、ひ孫世代)が思い出話をしながら、これでもかというほど日本料理を食べまくる瞬間。

(従姉妹の子供達がめちゃくちゃかわいい)

 

 

 

混雑を避けるため子供の学校を休ませてまでよく家族旅行に連れて行ってくれた両親とその影響を受けた兄弟の深夜高速家族リレー(京都−神奈川間を6時間!)で、朝の3時に帰宅した翌朝9時からの家族テニスで真剣勝負をする瞬間。

(テニスの他にゴルフ、ボーリングでも真剣勝負)

 

 

 

「青春ごっこを今も 続けながら旅の途中

 

夢の中で暮らしてる 夢の中で生きて行く

 

いこうぜ いこうぜ 全開の胸で

 

もっと もっと 見たことない場所へ

 

生きててよかった そんな夜を探してる。」

 

フラワーカンパニー、深夜高速より歌詞抜粋)

 

 

 

一時帰国を理由に昔の仲間と飲んで、

 

終電ギリギリで家に帰る帰り道にこの曲を聞いては、

 

2017年の生きててよかった瞬間たちをかみしめてた。

 

2018年、卒業とドイツでの新たな挑戦が待っている。

 

「幸せになるために頑張るのではなく、幸せだから頑張れる」

 

今ならそう言い切れそうだ。