前期後期なんて単純な話じゃなかった・・・
淑女に搭載のR型エンジンは、当初はシルビア、フェアレディ、ブルーバードのスポーティ車3種に採用されたH型エンジン系列の1600ccOHVエンジンです。
H系列とは、基本になったエンジンがH型というセドリックに搭載された1900ccだからなのですが、その系統には、元になるG型1500ccエンジンがあります。
G型は当初、セドリックに搭載され、その後フェアレディにも搭載されました。当時の日産はエンジン型式名が排気量ごとに違う名前がつけられていましたので構造も違うように感じますが、基本は同じエンジンです。その後のL型やA型では、L20,L24,A12、A14といったように数字を添えて排気量がわかりやすい表記になりました。H系列ではH20型がその例です。G型については、スカイラインやローレルに搭載されたG型エンジンがありますが、これは、プリンス自動車設計によるもので全く別物エンジンです。
H系列エンジンは、汎用エンジンでしたので、商用車のトラック、バス、フォークリフトにも搭載され、キャブオール、ホーマー、クリッパー、キャラバン、ジュニア、エコー、シビリアン、日産と小松のフォークリフトと一大勢力を誇っていました。
フォークリフトからスポーツカーにまで搭載されたエンジンはこの系列くらいかもしれませんね。
1960年代初頭から2000年代まで45年近くにもわたって製造されていました。
その中でもH25型はフォーク用ですが、どのようなスペックなのかが気になるところです。
G型の1500ccに対して2500ccですから!
また、上記4気筒エンジンのほかに、6気筒化したK型 (2800cc)、H30 (3000cc)があり、セドリックスペシャル、プレジデントに搭載されていました。
その他の派生型式として、OHC化したU20をフェアレディSR311用に、ディーゼルのSD22,SD23。H20の製造設備を利用したFJ20エンジンがあります。これは特に互換があるわけではなく、シリンダーのボアピッチが同じH20型の生産設備をそのまま利用して製造だというレベルのようで別物です。
さて、R型エンジンについて大きな分類には、前期と後期があるというのが良く知られた話です。
前期は「鉄ヘッド、3ベアリングブロック」、後期は「アルミヘッド、5ベアリングブロック」というものが語られていますが、概ね1966年から67年頃に順次変更されているようです。この時期にインチ規格ねじからミリ規格へと変更になっています。(国内向けのみ)
今回はヘッドについて考察していきます。
まず、我が淑女についていたオリジナルの鉄製ヘッドを、物置から出してきました。
本来はこれを再生してというのが筋なのですが、錆によるウォーターアウトレットの固着が激しく、壊さずに外すことを断念しそのまま保管ということになっていました。
(最近、上手く取り外せそうな妙案が頭に浮かんできましたので、時期が来たらやってみようと思っています。)
4つのヘッドを比較してみます。
左から、65年鉄ヘッド、66年頃アルミヘッド、67年以降と思われるアルミヘッド、対米輸出用と、国内用
右の国内用以外はインチ規格のねじでした。
日産発行のサービス週報やパーツカタログから調べていくといろいろなことがわかってきました。
まず、R型を最初に採用したのはCSP311シルビアで、65年3月発行のサービス週報によるとG型との違いは、外観、形状は変わらずに燃焼室の容積と形状を変更しているとあります。同4月発行のSP311のサービス週報でも同様の旨が記載されていました。
ところが、同6月発行のブルーバードのサービス週報では、アルミ合金を採用し、CSP311と同じウェッジ形燃焼室を採用となっています。ウォーターアウトレットもあわせてアルミ合金製を採用ともあり、取り付けも3本ボルト締めから2本ボルト締めになったことが記載されています。
つまり、ブルーバードSSS(R411)が最も早くアルミヘッドになったことがここでわかります。なお、ブローバイ還元をヘッドカバーに戻したのもこの時点でブルーバードで実施されています。
したがって、その後、順次シルビアとフェアレディに実施されたようです。
簡単な比較をしてみます。
正面から見たところです。まず一番気になったのは、ウォーターアウトレットのホース取り付け高さに差異があったというのは始めて気が付きました。
これは恐らく、何らかのトラブルで冷却水が減少してしまっても、ある程度までは空気をミックスすることなく冷却水が循環して冷却作用の効率が落ちることがないように配慮した為と思われます。
シルビアとフェアレディは共通なのでこの変化があったわけですが、ブルーバードではキャップなしのアウトレットなので形状は全く違います。
オルタネーターステイの取り付け部分も、鉄製ではエンジンハンガーを兼ねた別部品であるのに対し、アルミでは成型によって増設されています。
上から見てみます。
ボルト3本締めか2本締めかの違いがわかります。
サービス週報には、2本締めにすることで、ヘッドの長さを短くしたとも記載があります。
上方から全体の比較です
上記のほかに、大きな変化としては、バルブシート部分の形状が変わっています。
鉄製と、初期のアルミ製については、段つき形状になっており、後期以降については段つきがありません。
鉄 製
アルミ合金製 初期
アルミ合金製 後期
そして、それぞれに使う「バルブステムシール「「リング」は、こんな感じです。
左から、後期用、前期用に近いもの(J型エンジン用)、リング、参考の為に並べたL型エンジン用となります。
後期用は、これ以降のアルミ、鉄ヘッドすべてに採用されています。(H20,R,U20)
初期の段付きヘッドに取り付けは可能ですが、段のある分浮いてしまい、バルブスプリングも圧縮気味になって好ましくありません。このためには、段付を切削して無くす加工も必要になります。
初期の段付ヘッドでは、元々、リングのみの採用で、ステムシールは採用されていませんでした。
写真は、ツバ付のJ型エンジン用ですが本来はツバのない形状と思われます。ただ、ツバがついていても、上にあるスプリングシートの代わりとなりますので問題ありません。アウター側のみスプリングシートを使用してセットします。因みにスプリンシートはアルミ合金製ヘッドへの鉄製スプリングからの影響を回避するために採用されていると推測しています。
また、何故段付である必要があったのか?
ということに関しては、今では当たり前に思えるダブルのバルブスプリングも60年代ではシングルでの使用は珍しくありませんでした。エンジンの高回転化の必要性からダブルスプリングの採用となっていったいきさつがあります。
したがって、シングルで組む場合にスプリングがずれないようにあえて段付き形状となっているのではないかと推測しています。
次に、それぞれの刻印を見てみます。
上から、鉄、アルミ初期、アルミ対米輸出用、アルミ後期国内用です。
鉄製が一番しっかりと刻印されています。
初期アルミはうっすらとしていて鋳造技術も途上だったのか巣が多いです。
対米輸出用には、刻印はそこそこで、排気ガス対策の為の2次空気導入用の穴が開けられています。
国内用は刻印が前のオーナーによって削られてしまっています。2次空気導入用の穴の台座?が未加工で確認できます。国内ものだけ見ていると何のための突起かわかりませんよね。
今回、R型エンジン用のヘッドを調べていてわかったこと、なんと、わかっただけで、8種類のヘッドが存在するということでした。
66年と67年に一番変更点が多いようですが、シルビアとフェアレディの同年のパーツカタログが手元にない為に調べ切れませんでしたが、ブルーバードのものとほぼ同様と思われるので、そんなに違いはないことでしょう。
65年から67年のブルーバードのアルミ合金ヘッドは、5種類確認できました。
①当初の初期ヘッド、②その改良型、③ミリ規格に変更と段付を無くしたもの、④⑤その改良型が2種、です。
その他、レース用オプションヘッドがありました。
商用車に関しては、66年のキャブオールで採用されたH20用の鉄製ヘッドは、R型のホーマーとも共通部品として採用され、少なくとも1983年まで同一部番で同じ部品が使い続けられたようです。
系列としての、H型、G型にも数種類の鉄製ヘッドが存在します。
U20のOHCヘッド、フォークリフト用H20、タクシー用H20・・・・・
まだまだありますが、こんなところで、やめておきます。