私は実写BLドラマではタイの作品が一番好きです。
理由は、タイ作品は日本を含めた様々な国が作るBLドラマに於いて作り手の立ち位置が違うように感じるからです。
現在、様々な国でBLドラマが作られるようになりました。
どの国のどの制作会社も視聴者として圧倒的多数の女性に向けてどうヒットさせるかを考えていると思います。勿論タイBLも。
しかしタイBLの制作者側には性的マイノリティに属する人たちがプロデュースや監督として関わっていて、視聴者層を女性だけでなく当事者の人たちが納得できたり勇気を得ることができるよう作られています。そして尊厳をもって作品を制作しています。また性的マイノリティに属さない人たちもあらゆる方面に所属する人に対して敬意をもって作っている、ということを感じるからです。
様々な機会にそれをはっきりと視聴者に可視化させています。
例えば様々なインタビューで監督も俳優もBL作品を作ることの意義や、差別や偏見のない世界を目指すことの重要性を語っています。作品にもそれは如実に表れています。
そういったことに関してはタイは先進国です。
さて久々にFODに入り、最近ではかなり意欲的にBL作品を作っている韓国のドラマや、そして同性愛にに関してまったく不寛容である中国の作品をいろいろ見ています。
中国では1997年までは同性愛行為は犯罪だったそうです。1997年にやっと合法化。そして2001年に精神障害のリストから外されたそうです。しかしたびたびBL作品への厳しい検閲があり、中国に存在していたLGBTコミュニティは圧力をかけられ閉鎖させられたそうだです。
近年は特に中国の若い男性の美しさが女性的になりすぎているとして、もっと男性らしい男性という価値観を復刻させようとしています。中国で作られたボーイズグループ養成番組「ChuangAsia」も、男らしくないということで中国での制作は中止されました。
ただ、ここからが非常に面白いところなのですが、それ以降のChuangAsiaは出資は中国の企業ですが撮影はタイで行いました。
BLドラマは多くの意味を演出の下にそっと隠しながらもブロマンス作品として制作しています。
しかしその大ヒットブロマンス作品のキャストたちも、その後共演することに規制がかけられたり、または中国芸能界から封殺されたり・・・。これでは出演することさえ命がけじゃないですか。
作品が途中で配信中止になることもしょっちゅうです。
それでも!それでも中国からはブロマンス作品が次々と制作されているんですよ。それを欲する中国の同志たちとそして制作サイドに敬意を表して観るしかないじゃないですか。
というわけで2025年中国制作の『逆愛』、当時ものすごく話題になっていたこの作品をやっと観たのでした。
これ、ブロマンスじゃないよ!
正々堂々、完全無欠のBL作品じゃないですか!
まずそのことに感動しました!
以前、楽天TVで配信されたときに無料の第1話だけ観たのですが、主人公同士の衝突・格差・富裕層側の超絶ワガママと放蕩、という設定が私にはもうメンドクサイんですよ(笑)その第1話の間によほど第2話に向かわせる引きがあれば購入するのですが、その時は購入に至らずやめてしまったのです。
物語は、主人公のスオウェイは、自分は異性愛者なのだけれど自分を捨てた元彼女ユエ・ユエに復讐するためにその彼女の恋人である裕福な男チー・チョンを誘惑する、という設定です。
「本当は異性愛者で同性愛は受け入れがたいのだけれど、チー・チョンの気持ちが自分に向かうことにより、彼がかっこよく見えてきてときめくようになり」・・・という設定が、BLとしては旧式タイプだなあと思うし、正直BL最先端のタイ作品ばかり観ているとちょっと腰が引けてしまうのですよ。とはいえ、メインカップルとサブカップルの4人中、スオウェイ以外の3人がゲイを自認しているという設定にこれまでの中国BLドラマにないものを感じて視聴を続けました。
また富裕層側のチー・チョン及び、サブカプで彼の古くからの友達チョンユーにはそれぞれお付きの男がいるのですが、どちらも彼らの性志向に肯定的なところもなんだか良いのです。
物語は全24話。その中で様々な復讐を絡めつつ成功や転落、疑いや別離や愛情の交歓などその起伏の多さやエモーショナルな物語の運びなどはとても中国BLならではだと思います。見進めていくごとに中毒性を増しやめられなくなるのが中国作品の特徴です。
『逆愛』の後半になるあたりでとても驚いたのは、主人公たちの将来への人生設計まで描いているところです。
多くの中国BLは、古装物ファンタジーやミステリーが多く、現代モノでも学生時代だけで完結する物語だったり、またはそれがどちらかの死による強制終了だったりする作品が多かったのです。しかしこの作品では、幸せな今だけではなく、この先どう生きていくかをふたりの会話を通して描かれます。
「老後」というワードさえ登場します。そして現在の中国では認められていない結婚という言葉も。
中国BLで何よりの障壁は家族でした。
この作品でも家族からの犯罪とも言えるような妨害が入ります。
その家族がなによりも優先させるものは、結婚して後継者を残すこと。
しかしそれに反して『逆愛』では最後に家族の理解を得るのです。
現実の中国でのLGBTに対する姿勢は極めて封建的です。しかし作中で海外生活しているらしきチー・チョンの姉が封建的な両親に向かって「もうそんな時代じゃないのよ」と言います。この辺りは私は心が震えました。
最近、SNSでBLをめぐって様々な意見が飛び交っています。否定的な意見は殆ど古いBLしか知らないのでは、と思います。その中で
「BLはファンタジー」という言説を最近よく目にします。
ファンタジー。架空の世界、ということですね。
しかし同性愛者がいる世界は架空ではないのです。
中国には多くのBLを愛する人たちがいます。その中国の同志たちが例えば『逆愛』を観ることによって「もうそんな古いジェンダー規範に縛られている必要はない」と感じたり、現実にたくさんいるLGBTQの人々の権利を尊重したいとか、みんなが自由で生きやすい世界とはどういう形なのか、ということを感じることができれば、もうそれはファンタジーの域を越えて現実に繋がっていくじゃないですか。
私は、エンタメにはそういう力があると思っています。
物語の設定や構成が『ハイロイン』に似ているなあと思っていたら原作者が同じなんですね。というかこの原作者は2023年版『ハイロイン Stay with Me』では脚本も担当しているそうです。
どちらの作品もキャストが秀逸です。『逆愛』でもキャスト4人の笑顔を観ていると、昨今のあちこちで分断しているこの世界がこんな風に笑顔でいられたらなあと思うのです。





















