火曜日に重要な会議があることはわかっていた。だから月曜日の夜にあった歓迎会では、飲み過ぎないようにビールやレモンサワーを飲んでいた。

 

飲み会の締めは上松町流で「よお。どすこい。どすこい。」で俺が締めた。それで、素直に帰ればよかったんだけど。

 

自転車を引きずりながらフラフラしていたら、いい感じのクラブがあったので、つい飲みに行ってしまった。そこで、2時間くらい飲んで、俺はまだ全然酔ってないと思っていたけれど、しっかり酔っていた。

 

家の近くの牛丼屋に寄って、でも窓からちょっと中を見たら混んでいたので、やっぱりやめにして、近くのセブンイレブンで買い物をして、家に帰って、買ってきたものを食べた。

 

朝、起きたら、脱ぎ散らかした服があちこちにあった。見るのも嫌だった。おまけに二日酔いでもう一度寝てしまおうと思ったけれど、大事な会議があったので、そんなことも言っていられなかった。

 

支度をして、家を出ようとしたら自転車のカギがない!そういえば、昨日、自転車をいつも停めている駐車場に停めた記憶がなかった。

 

俺はセブンイレブンにカギを付けっぱなしで自転車を放置してきたのだろうか?一応、セブンイレブンまで行ったけれど、自転車はなかった。鍵付きの自転車がコンビニの前に置いてあったら盗まれるよなあ、とも考えた。

 

いろいろと諦めて、職場まで歩いた。「結局、高い飲み代になったなあ。」と思った。自分への罰として、しばらく自転車は購入禁止ということにした。

 

その日の会議は二日酔いもあって辛かった。でも、いろいろと俺は反省していたので、そんな辛さもへなちょこだった。

 

夜、再びコンビニで買い物をした。コンビニの周りを歩いてみたけれど、自転車はなかった。それで、諦めた。でも、一応と思って、牛丼屋にも行ってみることにした。

 

そしたら、牛丼屋の前に、俺の自転車があった。鍵付きで。上田市民は牛丼屋に1日放置していた鍵付きの自転車も盗まないのかと驚いた。

 

自分を戒めるために、その後の1週間の残りの日々は、酒抜き、自転車禁止ということにした。

 

しかし、俺のことだ。土曜日にはもう飲み始めていた。

 

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水曜日には、パトロール業務があった。ほかの場所で経験はあったけれど、いろいろとルールが違うようだった。

それでも、秋の紅葉シーズンに爽やかな空気の中でパトロールができるのはいい気分だった。前の職場である北寄りの薄暗い部屋で、神経が煮詰まるような仕事をしているよりもずっとよかった。

 

一緒にチームを組んだ相手は初対面だった。巨体の男で、飴だのガムだのをくれた。断るのもどうかと思ったので、断らずに食べた。

「タバコは吸わないんですか?」

「吸わなくはないけれど、自分から積極的には。」正直にそういうとタバコもくれた。

秋の空を見上げながらタバコを吸った。

考えてみたら、タバコを吸ったのも久しぶりだった。高校の頃、秋の日に授業をサボって屋上でタバコを吸っていた頃のことを思い出した。あの頃からもう何十年も経ったなんて信じられないような気持がした。

 

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土曜日に、荷解きをすべて終えた。

 

先週の日曜日に受けたインバウンド実務主任者認定試験の解答速報が出ていたので、自己採点をしてみた。全87問中76問を正解していた。ここに、語学の加算が6点つくらしいので、82問の正解ということになるのだろうか?

 

合格レベルは8割の正解ということなので、よほど高得点の問題をミスしていない限り、そして、失格になっていない限り、受かったのではないかと思う。

 

合格通知が来るのは1か月ほど先のようだけど、その日が楽しみだ。

 

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再び太り始めて、今ではダイエットを始める前より太っている。完全なリバウンドだ。

 

こうなるともう食事制限も、適度な運動も何もしたくなくなる。しかし、それでは太る一方なので、どうしようかと考えてみた。

 

それで、せっかく上田市に来たことだし、湯治をすることにした。なるべく、温泉に行くことにする。

 

土曜日は、布引温泉御牧乃湯というところに行った。しばらく湯につかっているとだんだんと汗が出てくる。耐えられなくなったところで、体を冷水で拭いて、再び湯につかる。

 

温泉から出て、農産物を買っているときも、ずっと汗が止まらなかった。家のシャワーを浴びると、なんだか体がかゆくなるが、温泉ではそういうこともない。温泉はいいなあ、と思うし、これからも続けていきたい。

 

日曜日には、長野市に行く必要があった。帰りに裾花峡天然温泉宿うるおい館というところに行った。まだ午前中だったので、2時間くらいいるつもりだったが、結局30分くらいで出てきてしまった。どうも温泉に長くいることができない体質らしい。

 

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西加奈子の「サラバ! 下巻」(小学館文庫)を読み終わった。

 

女性の描く男性は、どこかリアルさが抜け落ち、バカを英雄視したり、偏った人間を標準的に描いていたり、といった無理があるものだが、この本はそうではなかった。この作者は男で、そして、若い頃は誰からも一目置かれるハンサムな青年で、今はすっかり禿げていると、なんの疑いもなく信じられる文章だった。

 

かつて、主人公が問題児だと遥か下に見ていた姉が立場を逆転して彼の前に現れる。今までのドラマはこの下巻への長い伏線だったのかと思うほど、この下巻の力は強かった。

 

そして、何が悲しかったのかは自分でもわからなかったが、この本を読んで俺はまた泣いてしまった。俺もまた、主人公同様に、信じられるものがない。何かを信じるということがどれだけ力強いことなのかをこの本は示している。いい本だと思う。できればもっと若いうちに読みたかった。

 

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佐藤正午の「鳩の撃退法 下巻」(小学館文庫)も読み終わった。

 

俺は最後まで主人公に感情移入ができなかった。

「沼本」を本人が何度も「ぬもと」だと言っているのに、「ぬまもと」と呼び続け、「ヒラコ」というあだ名の持ち主が「昔はハラコと呼ばれて嫌だった」と聞くと、それからはずっと「ハラコ」と呼び続ける。本当に子供じみて嫌な奴だった。

 

この本は全てがそんな感じだった。やたらと会話に略号を使う。「MSK」だの「SNO」だの。「MSK」は「マジっすか」の略で、「SNO」は「過ぎたるは、猶、及ばざるが如し」なのだそうだ。言わないし、くだらないし、つまらない。

 

この本は山田風太郎賞を受賞したそうだ。俺は「ふーん」としか思わない。ピーターパンとウェンディという本が読む価値がある本だと知ったことくらいで、他にこの本から得ることはなかった。きっと賞は、作家としての技術点なのだろう。読者である俺には関係のない話で、「ああ、つまんなかった。」というのが正直な感想だ。

 

ちなみに、俺が主人公だったら、偽札交じりの3000万円を目の前にしたら、消費者金融から金を借りてでも紙幣鑑別機を買い、真贋を確かめる。なぜ、そうしなかったのか、俺にはさっぱりわからない。

 

それから、なぜ、暴力団のボスが、部下の妻の不倫相手を執拗に殺すのかも意味が分からない。その意味するところはどこかに書かれていて、俺の読解力が不足しているからなのかもしれないが、いずれにしても殺す必要はない。殺す意味がわからない。

 

この本は糸井重里がほめていたから読んだのだけど、糸井重里ももういいや、と思った。

火曜日の夜、部のボーリング大会があった。俺は随分と前に申し込んでいた。引っ越しが決まってやめようと思ったけれど、幹事が許してくれなかった。逆に、ボーリング場まで幹事のために車を出すように頼まれた。

 

スコアは1回目が67で、2回目が140だった。ひどい有様だったので、表彰式も後ろの席でふてくされて状況を見守っていた。表彰式が終わって、じゃあ、帰ろうぜ、という段階になって、突然、俺は部長に呼ばれた。転勤に当たって、全員の前で何か挨拶をしろということだった。

 

偉そうな人たちの前で、当たり前のことを事務的に話して挨拶は終わった。いろんな人から「爆弾を投下するのではないかと期待したのですが。」と言われたが、そんなことはしなかった。俺ももう立派な社会人だということだ。

 

水曜日は、午前中に長野で最後の仕事をして、午後は上田の新しい引っ越し先に向かった。途中で、ガスコンロやらカラーボックスやらを買った。夕方にはガス会社が来て、開栓をしてくれた。お湯が冗談みたいにチョロチョロとしか出ないので文句を言ったら、「ガスのせいじゃないです。水道管が詰まっているんです。」ということだった。

 

俺が悲しい気分でカラーボックスを組み立てていたら、気の毒に思ったのか、俺が買ってきたガスコンロを箱から出してセッティングをしてくれた。ガス用のホースを買っていなかったので、設置できずにいたのだが、サービスでつけてくれた。いい人だった。

 

そして、木曜日は新しい職場で普通に仕事が始まった。みんなの前で挨拶をしたが、仕事内容は難しくて、あまりよくわからず、なんとなく漂っていた。金曜日も同様だった。

 

土曜日は、朝から忙しかった。荷ほどきで大量に発生した段ボールの空き箱を縛ってまとめると車に積み込んだ。それから不動産屋に行って契約書をもらってきた。不動産屋に「水道管が詰まっていて、お湯がほとんど出ない」と文句を言ったら、水道会社から連絡させると言われた。

 

今まで、プレミアム・モバイルとかいうモバイルwifiの会社と契約をしていて、全くwifiが機能していなかったので、この機会に新しく光回線に繋げることにした。引っ越しの最中にその手続きをしたら、いろんな器具が送られてきたので、とりあえずセッティングをした。

 

その間に水道会社から連絡があって、夕方5時から状況確認をすることになった。しかし、その前に午後2時から長野のアパートの引き渡しがあったので、とりあえず長野に向かった。途中、リビング用品を売る店で、段ボールを捨てて、足りなかった天井灯を買う。それから、スペアキーを作ってもらおうとしたら、発注しないとだめだと言われて、発注もしてもらった。

 

アパートの引き継ぎは30分ほどで終わった。クリーニング代だの、凹んだタイルカーペット代を出せだのいろいろと言われた。言い返すのも面倒だったので、妥協した。

 

帰り道、ふと携帯電話の更新期間であることに気が付き、ヤフーモバイルのお店に入った。SIMカードをソフトバンクからヤフーモバイルに替えたらどのくらい安くなるのか試算してもらった。9700円くらいだった携帯使用料が3千円台になるのだという。おまけに今よりもデータ通信量が増える。「そんなにいらないよ。」といったら、アンドロイドのタブレット端末を120円で買えという。余った通信量は、これでシェアすればいい。なんだかとてもいい話だったので、すぐに乗り換えることにした。ソフトバンクの解約も、ヤフーモバイルの乗り換えもすぐにしてくれて、タブレット端末までもらって帰ってきた。

 

それからまた上田に戻った。5時にはギリギリ間に合い、水道会社と状況確認をした。やはり、水道管が詰まっているということだった。「とりあえずは、お湯を高温にして、それを水で薄めて使ってください。」と言う。仕方がなかった。

 

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日曜日は、東京の駒場にある東京大学で「インバウンド実務主任者認定試験」があった。転勤になってよっぽどやめようかと思ったけれど、受験料が1万円を超えることに思いが至って、受けに行くことにした。

 

朝10時からの試験なので、上田を朝6時台の新幹線に乗らないと間に合わない。日曜日は朝5時30分に起きて、上田駅の駐車場に車を駐めて、新幹線に乗った。新幹線のなかではずっと勉強をしていた。

 

今回の試験に直結する問題集は、市販のものでは1冊しかない。一般財団法人全日本情報学習振興協会の「インバウンド実務主任者認定試験 公式過去問題集」だけだ。載っている問題数は200

俺はこれを今まで3回、回していた。3回目に、それは土曜の夜だったけれど、試してみたら、2問しか間違えなかった。だから、新幹線のなかと、湘南ライナーのなかでずっと解いていたけれど、もう間違えるようなことはなかった。

 

駒場東大前の駅は、渋谷駅から2駅だった。そう記憶していたので2駅目で降りたら、そこは明大前だった。都会の電車には急行というものが走っていることを忘れていた。

 

それで、急いで引き返すことにして再び駒場東大前を目指した。少し焦ったけれど試験時間である10時までには、余裕を持ってたどり着いた。

 

試験は、思ったよりは難しかった。問題集にも出てこない知らないことを聞かれて、戸惑った。訪日客は、中国、韓国、台湾、香港、アメリカの順だと覚えていたが、その次がタイなのかフィリピンなのかまでは覚えていなかった。そして、そこを聞かれた。

 

合格ラインは8割の正解だから、かなり合格は堅いとは思うけれど、疑問があるものにクエスチョンマークを付けてみたら、意外と多くて落ちていても文句は言えないことがわかった。

 

試験は2時間もあって(俺は勝手に1時間くらいだと思っていた)、かなり疲れた。どこにも寄らず、また新幹線に乗って上田に戻ってきた。

 

それから、また段ボールを捨てて、クリーニングを取りに行って、なんてことをしていた。今、とても疲れている。日曜日をもう1日欲しい。

転勤が決まって、先週末はアパート探しに行った。職場の近くに1か月5万円のアパートを見つけて、そこを借りることにした。広さは2LDKもあるが、とても古く、下見に行ったときには押し入れのなかに虫がいた。網戸もボロボロだった。正直、ボロアパートだった。

 

水曜日に、職場の引継ぎのあと、不動産屋に行って本契約をしてきた。

「部屋はクリーニング済みですので、アパートを出るときにはクリーニングをしてください。ふすまも全部張替え済みですので、それも張り替えて。まず敷金は返らず、実費がさらにかかると思っていてください。」

不動産業者の話は胡散臭かった。クリーニングをした気配がなかった。仮にしていたとしても、どれだけの日が経っているんだろう?その不動産業者は経年劣化分も借主の負担だと言い切った。今どきこんな不動産業者がいるんだと、かなり呆れたし、24時間サービスとかで万単位の金を取るくせに、水漏れがあったら自分で業者に連絡して自費で直せなど言いたい放題だった。よっぽど別の業者にしようかとも思ったけれど、時間もなかったし、妥協した。

 

明日の日曜日の夜はもう引っ越しで、それからはホテル住まい。長野の職場には水曜日までいて、木曜日から上田の職場に行く。水曜日はガスの開栓があるので、午後は休みを取る予定だ。

 

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自分の仕事の引継ぎもほぼ終わった。俺はそんなにいい仕事を持っていない。どれも手間ばかりがかかって、文句を言われる割合が多く、報われないことが多い。なんだか爆弾をパスしたような気がする。

 

金曜日の夜に帰るときに、いくつか荷物を持ち帰った。職場にいた人たちから「まだ3日もいるのに、もう明日転勤かというくらいに引っ越しモードになっている」と指摘された。

「転勤できてうれしそうだね。」

「そんなことないよ。」

「声に張りがある。」

正直言って、転勤したくて仕方がなかった職場だった。言われて気が付いたが、俺は仕事上であまり怒らない。だけど、嫌いにはなる。俺は今の職場が嫌いだった。

 

水曜日に次の仕事の引継ぎに行ってきた。決して楽そうではなかったし、正直、自分に務まるのか不安だが、なんとか頑張りたいと思う。

 

来週の今頃は、別の場所で別の仕事をしているのかと思うと不思議な気がする。そういう運命なのだと思うしかない。うまくいくように祈りたい。

 

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西加奈子の「サラバ 中巻」(小学館文庫)を読み終わった。

 

この本が圧倒的に優れているのは、映画と音楽に対する作者の造詣が深いことだ。俺が知らない映画や音楽が描かれているが、知っている映画や音楽から逆算して、相当にセンスがいいものを紹介している。俺もいつか、そういう音楽を聴き、映画を観てみたいと思う。

 

俺は一時期、自分の音楽センスがわからなくなって、迷っていたが、その間に聞き逃した音楽が相当あることを、この本を読みながら痛感していた。俺の周りにはもう映画を見たり音楽を聴いたりする友達がいなくて、いてもセンスがスットコドッコイだったりして、なかなか話せる友達がいないことを、この本を読んでいっそう残念に思った。

 

この本を読むと、俺はもっといい人間になれるような気がする。この本には、人生の失敗例も多く載っている。

 

どういう人間がダメで、どういう人間が優れているのかが至極、真っ当な判断で描かれており、この本を中学、高校生時代に読んでいれば、俺の人生ももう少しマシになったように思う。

 

ストーリー的には、主人公同様、怪しい姉に腹立たしさばかりを感じるが、この複雑な物語がどのように最後に収れんされ、落ち着くのか、とても気になっている。下巻は手元にないが、買いたいと思っている。

履歴書を転職サイトに送っていた。ドイツの老舗のワイン会社が人材募集をしていて、俺にも興味を持ってくれたらしい。申し込むか少し迷った。

 

仕事でワインに詳しくなるってことは人生全体を考えると決して悪くない気がした。そして、海外への出張もあるだろうなあ、なんてことを考えた。それはかなり楽しそうだ。

 

問題は収入が今の半分とは言わないまでも、それに近いところまで下がることだった。

「どうしようか。」俺には相談できる相手がいなかった。

 

木曜日になって、突然、俺は上司に呼び出され、上田市に転勤になった。正確には左遷なのかもしれないが、俺は嬉しかった。給料は下がらない。仕事の内容は今とは全く違うが、肉体的に厳しいといった仕事ではなさそうだった。

 

金曜日は送別会があり、俺はそのあと一人で2時くらいまで飲んでいた。

 

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土曜日の朝起きたとき、腕と足に大きな打撲跡があった。この痛みはなぜ?酔っぱらって喧嘩でもしたんだっけ?それとも転倒した?昨日の記憶を呼び戻す。

 

起きてジャケットを見たが、特に擦ったような跡は見つからなかった。ズボンに穴が開いているということもなかった。外でケガをしたのではないということか。

 

そういえば、パジャマに着替えようとして、足がもつれてベッドに激突したことを思い出した。カーペットの上でしばらく悶絶して、骨が折れてはいないことを確認して、それからベッドに潜りこんだ。そうだった。しばらくカーペットの上で動けなかったんだ。そのときのカーペットの匂いを思い出した。

 

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土曜日の昼過ぎから、二日酔いの快復期に入り、断続的な吐き気が襲ってきた。一時期は便器を抱えるようにトイレに座り込んでいた。

 

夕方から葉加瀬太郎のコンサートに友達と行く約束をしていた。彼女が迎えに来てくれて、車に乗り込む。

 

車の中でもまだ気持ちが悪く、吐き気をこらえていた。

 

俺一人では葉加瀬太郎のコンサートに行くわけがなかった。「すごく面白いから。」と彼女は言った。羽根つきの扇子とシェーカーも必要だという。扇子は彼女のものを1本借り、シェーカーは会場で買った。

 

実際、葉加瀬太郎のコンサートは楽しかった。しゃべりがうまく、何度も笑った。シェーカーは正直言って不要だったが、羽根つき扇子は重要なアイテムだった。

 

帰りにラーメンを食べて別れて帰ってきた。上田に行ったら彼女とも会わなくなるよな、と思った。今までも1年に2回くらいしか会ってなかったから、なおさらだ。

 

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日曜日の今日は、上田に行って、アパートの契約を結んできた。一時金が随分とかかったが、仕方がない。

 

これから、ガスコンロを買ったり、今度のトイレにはウォシュレットも取り付けられるので、それも取り付けたりするんだと思う。冬のボーナスを待ちたい。

 

午後には引っ越しの見積もりをしてもらい、いろんな裏話を聞いた。なかなか面白かった。

 

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佐藤正午の「鳩の撃退法 上巻」(小学館文庫)を読み終わった。

 

俺の理解力が低いのか、上巻を読んだところでは、ほぼ鳩は出てこない。

 

1つの家族が失踪し、その家族にも、その家族の不倫相手にも、主人公が絡んでいる。そしてこの主人公は大量の偽札も持っている。

 

俺がこの本を読んだのは糸井重里が思わせぶりなキャッチコピーを書いていたからだ。俺は、どこか、彼の言うことをなんとなく信じてしまうところがある。いろいろで、彼に対して残念だなあと思うことも多いけれど。

 

しかし、そんなにはこの本はそれほど面白くもなかった。下巻も買ってしまい、たぶん読むとは思うけれど、下巻になってもそんなに面白くもなさそうだと、今は思っている。

毎年、年に1回、実家の同じ地域に住んでいる同学年の6人で旅行に行く。そのために毎月3000円ずつ積み立てをしている。今まで、岐阜、浅草、川崎に旅行に行った。目的地の特性がわかる人にはわかるかもしれない。わからない人は別にわかる必要もない。今年は、福岡だった。金曜日を1日休み、1泊2日で行ってきた。

 

6人は同じ地域に住んでいることと、同学年というだけで職種もバラバラ。6人もいても誰一人として「観光地に行きたい」という人がおらず、飲み会の時に、会計と幹事から次の目的地が発表されると「で、馬とかボートはあるの?」くらいにしか興味がない。

 

朝、小牧空港から福岡に行き、昼に福岡のパルコの地下でもつ煮込みを食べてビールを飲んだ。それからタクシーに乗って競艇場へ行った。

 

福岡の競艇場ではその日、「GⅢオールレディース福岡なでしこカップ」が開催されていた。

 

馬は15頭も走ったりするが、ボートレースは6艇しか出ないので、当たる確率は高い。基本的にインが有利なので、1号艇と2号艇を絡めていけば確率はさらに跳ね上がる。

 

逆に言うと大穴を当てたければ5号艇や6号艇を買うという手もある。でも基本的にボートは固いので、そういう艇はなかなか来ない。

 

競艇場に到着して、最初のレースが6レースで、俺はいきなり大きく負けた。7、8、9レースと俺はかすりもしなかった。周りで友達たちが「6000円勝った」とか「290円しかつかなかったから、取ったのに負けてしまった。」などと話している。「取って負け」の話すら俺にはできずに凹んでいた。

 

第9レースもまるでダメで、俺は暗い気持ちで出艇前に1艇ずつ走る展示を見ていた。5号艇の栢場選手の走りがすごくきれいなのに気が付いた。彼女が勝ちそうな気がした。

 

1号艇と2号艇も絡むことは想定していた。それで、5-1-2と5-2-1を3連単で500円ずつ買った。

「俺、今度のレース外したら、競艇から引退する。」と俺はみんなに言った。「センスがなさすぎ。全然当たらない。今まで1レースも取ってない。」このレースを外したら、あとは舟券を買わずに、どこかでふて寝でもするつもりだった。

「なんだよ、引退って。」みんな苦笑いをしている。ボートは固いので、ちゃんと買っているのに1レースも当たらないなんてことは普通はない。

 

第10レースが始まった。ボートは第1コーナーで8割がた決まる。きれいなスタートで、インの2艇がやはり速かった。そして、第1コーナーでその2艇が大きく外にふくらんだ。そして、その間隙を突くように、シャープな走りで黄色の5号艇が飛び出してきた。

 

「行け!5号艇!」周りで5号艇を応援している人など誰もいなかった。翌日の新聞を見たら、5-2-1の3連単は69番人気だったらしい。2着、3着争いは若干あったが、順当に2号艇と1号艇が入った。

 

3連単5-2-1が入った。配当は79,410円。100円買っておけば8万円近くになるというこの券を俺は500円も買っていたので、大きな勝利になり、引退はお預けになった。

 

そんなわけで、夜は屋台でビールのはずが、高級フグのお店に急遽変更。そのあとクラブ(踊らない方)に行って、それも全部俺がおごった。だから一晩で軽く20万円は使ったけど、勝ったんだから当然。あの5号艇の抜け出してきたシーンは美しく、いつまでも記憶に残りそうだった。

 

翌日は朝からダラダラ。俺は友達と朝からクラブに飲みに行った。昼にはみんなで牛タンを食べて、それでまた飛行機で小牧空港に帰ってきた。

 

飛行機に乗っているとき、月曜日からのつまらない仕事が頭をよぎり、「着陸に失敗して、全治6か月くらいの重傷にならないだろうか。次の転勤まで仕事に行きたくないからなあ。」なんて思ったけれど、無事に着陸してしまった。

 

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西 加奈子の「ふくわらい」(朝日新聞出版)を読み終わった。

 

「なんだ、この小説は!」というのが正直な感想だ。俺の人生が3回あってもとても書けそうにない。荒唐無稽な話なのに、地面に足がしっかり着いていて、俺はかつてプロレスに詳しかったけれど、プロレス・ファンが読んでもプロレスラーを正確に捉えている。

 

似たような感覚の小説を乙一も書いていたけれど、乙一よりも世界というか視野が広い。大量の材料を全部使って、極上の料理をしたという感じだ。

 

彼女は直木賞も受賞しているらしいが、当然だと思う。これだけの本が書ける人が取らなくて誰が取るというのだ。すごい本で驚いた。最後は風呂に入って読んでいたが、悲しいシーンなど特になかったのに、最後は涙が落ちそうだった。他の本もぜひとも読んでみたい。久しぶりにそんな気持ちになった。

 

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川崎直孝の「ちおちゃんの通学路」(MFコミックス)が9巻で終わってしまった。ここのところの数巻は不発な感じがしていたが、この9巻は久しぶりに面白かったので、これからに期待していたのだが、まさかの最終回とは。さびしい。

 

蛇蔵の「決してマネしないでください」(モーニングコミックス)は3巻で終了。小林まことの「JM」(イブニングコミックス)と堀尾省太「ゴールデン・ゴールド」(モーニングコミックス)はなかなか単行本化しない。

 

俺が読みたいと思う漫画がなかなかなくて困っている。

雑誌「ニュートン201811月号」は「今度こそよく分かる!微分と積分」で、しぶとく読み続けている。

 

 

その中で加速度の話があって、俺はなかなか理解ができず、それでいろいろと調べていた。

 

加速度と言えば重力。そういえば、俺は小学生の頃からガリレオがピサの斜塔で行ったという実験結果に納得ができていなかった、ということに改めて気が付いた。

 

実際には鉛の大小の球だったらしいが、小学校の時に読んだ本では木と鉄の球で、「同時に落としたら、地面に同時に着いた」という実験結果だった。

 

「鉄の方が早く落ちるだろう。」と小学生の頃、思っていて、そのまま大人になってしまった。高校の頃、物理を学んだはずなのだが、そのあたりの疑問は解決しないままだった。

 

それから毎日、昼休みになると速度や加速度のことを考えたり、調べたりしていた。いろいろ調べると、本当に真空状態であれば、木と鉄の球は同時に落ちるらしい。違う質量でも体積でも同時に落ちるという。

 

ネットでは、こんな説明がされていた。

「同じ質量で同じ体積の鉄球を2つ同時に落下させたら、同時に落ちる。これが納得できたら、次に同じ鉄球を3つ同時に落下させることを考える。この場合にも、全ての鉄球は同時に落ちる。そして、そのうちの2つを1つの袋に入れても、全ての鉄球は同時に落ちる。さらにその2つを溶接しても全ての鉄球は同時に落ちる。質量や体積が倍になっても、同時に落ちるのは当然。」

 

「なるほど。本当に、同時に落ちるのか。」

木と鉄の球は同時に落ちないという俺の主張の根拠は、つきつめて考えると「空気抵抗に差があるから。」だった。物理の世界では、とりあえずは真空状態で考えるという前提が理解へのネックになっていた。小学校以来の疑問をようやく理解することができた。

 

そして、ここからは雑誌「ニュートン」を元に理解した話。

 

どこか高いところから、モノを落とした時を考える。空気抵抗は考えない。

重力加速度gは9.8m/s・sだけど、簡単に10m/s・sとする。

 

落としたモノはt秒後には、5×t×tメートル落ちることになっている。

モノを落とすと、どんな重さのものでも、3秒後には45メートル、5秒後には125メートル、10秒後には500メートルも落下しているということだ。

 

そして、そのモノのt秒後の速度は10×t(m/s)になっているのだという。

3秒後には秒速30m、5秒後には秒速50m、10秒後には秒速100mになっているということだ。秒速だとピンとこないけれど、時速にするとそれぞれ。10.8km/h、180km/h、360km/hになる。ものすごい加速だ。

 

以上の話を計算式で書く。10と5はgと(g/2)に切り替える。

t秒後の落下距離は(g/2)×t²(m)。

t秒後の速度はg×t(m/s)

そして、そもそも加速度はg(m/s²)

 

この3行を見ていると、落下距離(g/2)×t²を時間tで微分するとgt、つまり速度になり、さらに速度を時間tで微分するとg、つまり加速度になることがわかる。

 

逆でも同じことだ。加速度gを時間tで積分すると、gtで速度になり、さらに速度を時間tで積分すると(g/2)t²で距離になることがわかる。

 

「へえ。そうだったんだ。」とその仕組みに驚いた。

 

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週末は、日曜日の夜、高校時代の友達と飲む予定だった。ところが、その友達が鈴鹿にF1を見に行くことになった。それで、飲み会は中止。

 

今は日曜日の午前中。俺は実家ではなくまだ長野にいる。

実家では今日は地元の運動会があり、いったんは断ったけれど、ノコノコ出かけていけばそれなりに歓迎してくれるだろうとは思う。

その一方で、つまらない仕事上の積算や、くだらない事務仕事もある。ずっと長野にいて、それをしてもいいし、本屋に本を買いに行くのもいい。部屋の掃除もしたいところだ。ああ、ベッドのシーツも交換したい!

「どうしようか」と思う。ちょっと大げさに言うと人生の岐路に立っている。どの道行ったところで、たかがしれてはいるけれど。

 

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映画「殿、利息でござる!」を観た。

 

俺よりも20歳以上若い部下が、飲んでいるときにこの映画の存在を教えてくれた。

「阿部サダヲが出ていますけど、コメディじゃなくて、ちゃんとした映画で面白いです。」「へえ。」と俺はウイスキーの水割りを飲みながら返事をしていた。でも、阿部サダヲと言われた段階で、そうは言ってもどうせコメディだろ、と思っていた。そしてまさか本当に観るときが来るとはそのときは思わなかった。

 

思ったよりも遥かにしっかりと脚本が練られたいい映画だった。

 

昔も今も、日本の社会ってあんまり変わらないんだなと思いながら見ていた。それから、歴史に名も残さずに亡くなっていった多くの立派な人のことを考えて、それぞれが真剣にその時代を生きていたことに思いが至って、この映画はあっさりできているけれど、この背景は重い映画だと思った。

 

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映画「ミスティック・リバー」も観た。

 

俺が驚いたのは、この立派な映画をクリント・イーストウッドが監督していたことで、彼は映画界の本当の宝だと改めて認識した。すごいドラマだ。

 

少年時代、車に乗せられて性的暴行を受けた友達。彼が車に乗せられて運ばれていくのを見送った主人公は、今度もまた彼を裏切ってしまう。

 

静かで悲しく、そしてショーン・ペンの演技がすごすぎて、何度も映画を観るのを止めて考えた。

 

不幸が連鎖していくこの映画に救いはないが、最後まで見て、重くそして考えさせられる映画だった。そして、どんな役でもこなせるショーン・ペンの能力も見直した。

 

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箕輪厚介の「死ぬこと以外かすり傷」(マガジンハウス)を読み終わった。

 

今のように、みんながどこか閉塞感を感じている時代には、こういう本が売れるんだろうと思う。夢中は努力に勝るし、熱狂も素晴らしい。他人の評価を無視しろという声にも共感は得やすい。

 

でも個の力を発揮できる場を得られる人は限られているという事実にこの本は触れていない。確かに、世の中には将棋だけをして裕福な生活をしている人だって、野球だけをして美人と結婚している人だっている。だけど、そこを目指してもたどり着けない人も山のようにいる。

 

偏った世界にこだわって成功すればいいけど、失敗することはないのか?と俺は考えてしまう。成功するには狂気も必要。でも、人にそれを勧めるのはどうかと、貧乏で、つまらない仕事をして生活をしている俺は思う。だから俺はダメなのかもしれないけれど。

 

そしてこのタイトル。俺はきっとたかが骨折で悲鳴を上げたり泣いたりしそうだから、かすり傷だなんて思えない。

 

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「ハワイ・ファイブ・オー シーズン1」(24話もある!)をすべて見終わった。

 

刑事もので、シナリオはまあまあ。納得できない回もあるけど、そんなに真剣に見るようなドラマでもない。主人公たちの卓越した運動能力には毎回驚かされる。

 

ハワイ州の州知事に管轄以上の権限が与えられているファイブ・オー。ファイブ・オーはアメリカ50番目の州という意味だ。

 

シーズン1最終話では、ファイブ・オーのリーダーが州知事殺害の容疑で逮捕されたところで終わっている。

 

きっと続きも観るんだと思う。シリーズは続いているし、長い長い視聴になりそうだ。

 

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アマゾン・オリジナルのシリーズ「CIA分析官 ジャック・ライアン シーズン1」も観終わった。

 

賢いテロ組織と、それを防ぐCIAの攻防。圧倒的な軍事能力を持つアメリカと、その監視の目をかいくぐってテロを実現するテロリスト。科学力と技術力を持ち、良心を捨て去れば、テロはあらゆる方法で可能なのだと、このドラマを見ていると思う。あらゆる手段を駆使してターゲットに迫るテロを食い止めるのは大変な話だ。

 

テロとの戦いの最先端ではこんなに激しい戦いをしているのかと思わせるほど、緊迫感のあるいいドラマだった。続きにも期待したい。

せっかく覚えた微分と積分も時が経つにつれて忘れてしまう。俺の覚えた範囲は狭いものだけど、それでも必要な時に取り戻したいと思っていた。

 

それでいろいろと考えていたんだけど、円の面積πr²を微分すると円周2πrになることを知って、この方法で覚えていればいいことが分かった。

 

つまり、微分の作業は、乗数を前に持ってきて、乗数をひとつ減らせばいい。

x²→2xにすればいい。

積分の作業はその逆で、1を加えた乗数で割って、乗数をひとつ増やせばいい。

2x→x²ということだ。

 

円の面積や円周の公式はさすがに忘れないと思うので、この方法なら覚えていられると思う。

 

微分 πr²→2πr

積分 2πr→πr²

 

ちなみに球で確かめてみる。

球の体積は4/3*πr³。これを微分すると4πr²になって円の表面積になる。

 

微分は瞬間を捉える方法なので、球の体積を出す瞬間を捉えると、シャボン玉の様な表面積がつかめてしまう、という理解をとりあえずしてみた。それで、なんとなく合っているような気がする。

 

なんてことを書いていて、先日、東京に行ったときに、キヨスクでニュートンの11月号を買ったら、そこに『「円周」を積分すると「円の面積」が求められる』って記事が載っていた。「円周を積み上げていくと面積になる」のだそうだ。ふーん。やっぱりそうだったんだ。

 

ちなみにこの号では、「宇宙は、なぜ暗い?」という特集記事があり、俺はこのことも以前から不思議だったので、読んで納得した。さらにニュートンは11000円以上する。俺はそのことにも驚いた。

 

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相変わらず、仕事はつまらなく、辞めたくて仕方がない。が、辞めたいときに辞められるほど俺には経済力がなく、仕事に引きずられたつまらない人生を送っている。

 

俺の祖父の研究をしているという人がいて、会って話を聞いた。祖父は芸大を出てそれから連続で7回、日展に出展し、無鑑査となって、以後は出品すれば出展できるようになったのだそうだ(このあたりの仕組みを俺はさっぱりわからない。)。

 

祖父が25歳の頃の写真があって、それを見せてもらった。隣に目のあたりを隠した裸の女の人が立っていて、ほほお、と思ったのだが、それが本当の裸の女ではなく、祖父の作品だと気づいたのは、祖父が粘土を扱うヘラを持っていたからだった。女の足元には、粘土の山が写っていた。リアルな、本当の女性のように見える。写実的な作風だったらしい。

 

東京から長野の田舎に疎開するにあたって、作り上げてきた像はすべて破壊したのだそうだ。もったいない話だった。

 

俺はどうやら、まともなサラリーマン生活が送れそうにないという点だけを祖父から譲り受けたらしく、話を聞きながらも情けなさばかりで胸がいっぱいになった。俺が25歳の時は、司法試験を諦めて、サラリーマンになった年だった。ちょっと考えただけで、申し訳ない気しかしない。

 

金曜日には残業を途中までして、すっかりすべてが嫌になって、8時くらいから飲み屋のお姉さんに誘われて飲みに行った。誘いに簡単に乗ることが、俺の長所でもあり当然、欠点でもある。

 

二日酔いの間だけは、長所だとは1ミリも思わないが、結局5軒もハシゴをして、2時頃帰ってきた。

 

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土曜日は強烈な二日酔いで、起きたのが11時だった。それから間欠的に強烈な吐き気に襲われる。全てのやる気を根こそぎ持っていくような吐き気で、そうなるとまたベッドに倒れこんでしまう。

 

夜は東京で、昔の職場の仲間たちと飲み会だったが、とても行けそうになかった。

 

2時頃に無理やりシャワーを浴びると、少しは体調もマシになったような気がした。長野駅から東京駅に向かう。10分くらい遅刻しただけですみそうだった。

 

ところが、お店がどこにあるのかさっぱりわからず、地図を見てもわからなかった。同じように道に迷った仲間がいて、彼女と落ち合うと、わからないままにあちこちを歩いた。最終的には幹事に連絡して、なんとかたどり着いた。お店の前を通過していたりもした。

 

お店に着いたとき、最初は水を飲んでいた。水が飲めることがわかったので、それからだんだんとビールを飲み始め、最終的には日本酒も飲んだ。

 

もう20年近く前の同僚たちなのだが、基本的に変わっていなかった。年を取っただけで大人になれなかったんだろう。当時の課長も来ていて、彼は大手の旅行会社の監査役にまでなって、それから大学の教授までしていて、今は無職で、いろんな国に旅に行っているのだと言う。理想的な生活をしているようだった。

 

他の同僚たちも、今の仕事に多少の不満は持ちつつも満足しているようだった。仕事に人生をかけている姿が、うらやましかった。俺は全然、そんな気にはなれない。一緒に飲んで話をしているうちに、だんだんと体調が回復してきた。

 

2次会では、迎え酒効果なのかすっかり体調は元通りになり、ウーロンハイをガブガブ飲んで、1次会でほとんど食べられなかったつまみも食べた。言いたい放題言って笑っていた。これが日常だった頃があったなんて信じられないような気がした。

 

そして、終電でまた長野に帰ってきた。長野でよかったことなんか何もない。また、つまらない人生をこの地で続けるのかと思ったら、本当にいろいろと嫌な気分になった。

 

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日曜日は仕事だった。

でも思ったよりも大したことはなく、早々に帰宅することができた。

 

明日からの仕事の方が大変で、やる気もないものだから苦痛で仕方がない。

 

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映画「人のセックスを笑うな」を観た。

 

こんなつまらなくてダラダラした映画を最後まで見た俺は本当に偉い、と意味もなく自分を褒めたくなるくらい本当につまらなかった。

 

それでも、どこか心を打つって書いた時点で嘘くさいけど、どこか気にはなった。俺は本当に恋をしたことないなあとか、蒼井優は本当にかわいいなあとか、そんなことを思った。

 

でも、蒼井優は俺と付き合うことは絶対ないだろうなあ、と当然のことを思い、それはある意味、幸運だったに違いないと思った。

 

この映画の英語の題名はDon‘t laugh at my romanceらしいが、その題名が正しく、セックスを笑うような場面はどこにもない。ひたすら、だらだらした映画だった。

 

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映画「ダイバージェントネオ」を観た。

 

アクションもCGも優れていたけれど、映画でSFの本質部分を訴え始めちゃうと途端につまらなくなってしまうという、マトリックスのときと同じ感覚を味わった。

 

それなりに面白かったし、元の映画よりも説明が丁寧で状況はわかりやすかったけれど、どこか今一つという感じで、のめりこめなかった。

 

そもそも、人を5つのタイプに分けられるというその前提が誤っている。そして、この映画の結論も「前提が間違っていました。」というものなので、「今までの話はいったいなんだったのか」とどこか釈然としない。当然だと思う。

今週もストレスフルな1週間が終わった。仕事がつまらないうえに俺もやる気がない。

 

金曜日の夜、友達と、といっても20歳くらいは違うが友達と2人で飲みに行った。なんだかんだで、4軒くらいはしごをして、さらにそばのお店とラーメンの店に寄って、それぞれ食べて帰ってきた。

 

翌朝起きて、あたりを見回すとあらゆる服が放り投げてある。そして、俺は下着姿で寝ていた。とりあえず熟睡感はあった。2日酔いは思ったよりも軽かったので、そんなにスナックでは飲んでいなかったのかもしれない。

 

気になって、財布とカギと携帯電話を確認した。財布の中の現金はほとんど残っていなかった。でも、カードもすべてそろっている。携帯電話もカギもちゃんとあった。

 

毎回、朝の惨状を目にするたびに、酔った俺について困ったものだと思っていたが、最近は「まあ、楽しかったからいいか。」と思うように心がけている。そんなに世間に迷惑をかけてはいないみたいだし、許してあげようと思う。

 

それから、土曜日はキンドルでアメリカのテレビドラマを延々と見続けて、ほとんど寝ていた。そして、日曜日の今日、実家に帰ってきた。今日の夜は姉の家で寿司を食べることになっている。

 

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映画「ダイバージェント」を観た。全く期待をしていなかったけれど、緊張感があふれた締まったアクション映画だった。

 

人を「無欲」「勇敢」「平和」「博識」「高潔」の5つの派閥に分類する。そして、分類された人間はその世界で一生を過ごす。分類から外れると異端者として抹殺されるか、社会のお荷物となる。

 

なかなか難しい設定で、人を5種類に分けることに無理があるが、アクションの質が良くて、この世界観を無理やり納得させられた。2時間を超える長い映画だったが、時間を感じさせない面白さがあった。

 

この話は、まだ続編がある。観ないわけにはいかない。

 

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映画「イントゥ・ザ・ブルー」も観た。

 

昔沈んだ船から、お宝を回収しようとしていたら、すぐ隣にコカインをたっぷり積んだ飛行機が沈んでいた。

 

幸せな家庭だけを夢見ていた男の元に、弁護士として成り上がった旧友が帰ってくる。そして、その旧友とその彼女が暴走を始める。

 

全編にわたって、アクションとユーモアがほどよくマッチしていて、なかなかいい映画だった。この映画をほめる人はそんなにいないかもしれないけれど、俺はこういう映画が好きなんだから仕方がない。

先日、ある若者が開発途上国に行くきっかけを話していた。「私は、自分のことをポンコツだと思っていて、たまたま日本にいるだけで、豊かな生活ができているのがおかしいのではないかと考えている。貧しい国には、私より優れた人がきっといて、その人たちにもチャンスを与えるべきではないかと考えた。」と彼は話した。

 

彼は見た目もきちんとしていて、物事をはっきりと言えるタイプだった。ポンコツ感はなかった。俺としても、高い金を出して訓練をさせてポンコツを輸出するのを見過ごすつもりはなく、こうした決意表明の場では開発途上国で日本の国のために貢献をしてくるといった前向きな意見が聞けるものと思っていたので、ちょっと驚くと同時に、現場では思わず笑ってしまった。

 

それから、彼は本当にこんなことを話したかったんだろうか?ということも考えた。俺の部下に、考えていることと言っていることが違う女性がいて、俺は随分と前からそのことに気が付いていた。彼女は温泉につかったサルの写真を見て「わあ。おいしそう。」とか言うのだ。

 

彼の本心がどこにあるのか俺は知らないし、彼が本当に言いたかったことも俺はわからない。ちょっと歪んだ冗談だったのかもしれないし、俺に「そんなことはない。君は立派だよ。」と突っ込んでほしかったのかもしれない。そして本当に、自分をポンコツだと思い込んでいるのかもしれない。客観的にどうであれ、そう信じていればどんな名車だってポンコツだ。

 

そんなに反省もしていないけれど、俺は多くの人がいるなかで思わず笑ってしまって、ほんの少しだけだけど、申し訳なかったな、と思ってもいる。

 

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実家にはトイレが3つあり、どれもウォシュレットが付いている。長野で暮らすことになったとき、一番気になったのがトイレにウォシュレットが付いていないことだった。

最初は自分で取り付けるつもりだった。しかし、トイレにコンセントが付いていないことに気が付いて諦めた。それで、携帯用のウォシュレットを使うことにした。

 

初めて使った時、実家の便座型のものとは違ってパワーがないことに気が付いた。でも電池のパワーだから仕方がないと諦めていた。

 

それから1年半が過ぎた。スイッチを入れてもチョロチョロとしか水が出ない。最初からこの程度だったような気もしたが、3連休で時間もあったので、電池を変えてみることにした。

 

ちょっと驚くような勢いで水が出るのを感じて、もっと前に電池を変えるべきだったと後悔をした。俺の認識がどこか歪んでいるだけで、手入れをきちんとすればまともに動く道具がほかにもありそうだった。

 

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日曜日の今日は実家に帰ってきた。今日はこれから同じ地区に住む同学年の仲間が集まって、焼き肉をする。そのあとはスナックに飲みにも行く。そのスナックは、日曜日は休みだというのに、俺たちが行くというので営業をするらしい。

 

水晶の球がなくても、月曜日に二日酔いで「苦しい、苦しい。」と言いながらベッドで丸くなっている自分の姿が見える。あほだとしか思えないが、俺は自分に優しいので、「まあ、楽しかったからよかったじゃん。」と言ってあげる。

 

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映画「イントゥ・ザ・ストーム」を観た。

 

同じ題名のウィンストン・チャーチルを描いた映画もあるが、俺が見たのはパニック映画の方。巨大な竜巻を追いかけるチームと、竜巻に巻き込まれた家族が軸になった話だ。

今でもハワイにオリビア、アメリカ東海岸にフローレンスという巨大なハリケーンが、そしてフィリピンには台風22号が迫っているが、これらの強力な熱帯低気圧は本当に人命や財産を奪う。
 

きっとダン・ブラウンの「オリジン」あたりから着想を得たと自覚があるんだけど、俺の台風というものの存在についての見方はこうだ。

 

基本的に「自然」は散らかしたい。いつの間にか片付いているということはこの世の中では起きない。洗濯物が、いつのまにか靴下とTシャツとパンツに分けられているなんてことはない。散らばって混在する方向にしか自然は動かない。簡単に言うと自然はエントロピーを拡大させたい。

 

赤道付近に熱がたまって、極付近に冷気がたまって、2つにきれいに分かれていることが自然は気に入らない。なんとしても、熱を分散させたい。

 

そのために、無秩序大好きな自然があえて作り出した、熱分散装置が台風だ。自然は散らかすためには手段を選ばない。無秩序の形成のためには、秩序も作り上げ、装置を組み立ててしまう。


この映画では、竜巻の力を見くびった人たちが多大な犠牲を払う。なかには、最後まではしゃいでいるやつもいて、それはそれで微笑ましいけれど。

災害映画としては、出来がよかった。災害にはドラマがつきものだが、竜巻を経験することで1つの家族が立ち直る様を描いていて、好感が持てた。もっとも俺の部下はこの映画を観て感動して泣いたそうだが、どこに泣くほどの場面があったのかは、俺にはさっぱりわからなかった。

 

この映画でも、自然は散らかすためには手段を選ばない。すごいことを考えるなあ、と自然に対して思った。巨大な竜巻に駐機中のジェット旅客機が巻き込まれると、もともと飛ぶように設計された乗り物だから簡単に飛ぶものなんだな、とCGにも感心した。

この映画を見た日の夜、台風の目にドライアイスを打ち込んだり、海にドライアイスを放り込んだり、陸地を冷やしたりして台風の威力を弱めるという夢を見た。

台風の目にドライアイスを打ち込むのは昔からある方法だけど、海や陸そのものを冷やすって発想は今までなかった。起きた瞬間には天才的な夢だと思ったけれど、ちょっと冷静に考えたら、海や陸を冷やすことに莫大な金がかかることに思いが至って、やっぱり無理だった。でも、台風の構造なんてそんなに難しくないんだから、弱らせる兵器くらい簡単にできそうにも思う。

それができたら、それはそれで、自然からの大きなしっぺ返しが襲ってきそうではある。それがどんなものなのか、少し興味がある。

週末は実家のある地元で祭りがあった。

 

土曜日の朝、長野は雨で、高速道路を走っている間に土砂降りもあった。雨のなか、みこしを担ぐのは辛いなあ、と思っていた。

ところが、実家近くまで来ると雨がやみ、そして道路も乾いていた。

 

実家について、股引きを履く。毎年、履き方がわからなくなり、インターネットの動画で勉強する。「紐をここから通すのかあ。」毎年、新鮮な気持ちで動画を見る。法被を着て、それからどこか遠くで鳴っている太鼓の音を頼りに、みこしを追いかける。

 

久しぶりに仲間たちに会う。1年ぶりに会う人も多かった。

 

久しぶりに担ぐみこしは重かった。右肩が壊れそうに痛む。それでもあちこちで振舞われるビールを飲み、ごちそうを食べていると、そんなこともだんだんと気にならなくなってくる。

 

夜、神社まで行ったが、その帰りは土砂降りになった。夜になると担ぎ手も増えるので、俺はもうみこしは担がず、みこしを置く脚を担いでいた。

 

夜は集会所で宴会になり、その後、俺は一人で街まで飲みに行って、ドンペリを開けて飲んだ。

 

おかげで、今日の日曜日は全身が痛く、しかも気持ちが悪い。また長野まで帰らなくてはならないのかと思うとうんざりする。

 

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車検に車を出した。出したといっても、車のスペアキーをディーラーに渡して、「駐車場から持って行って、また返しておいてください。請求書は助手席に置いておいてください。」と言っただけなので、特別に何かをしたわけではない。

 

あちこちが壊れていて、12万円くらいかかった。ため息が出るが、仕方がない。

 

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積分で球の体積が出せるようになったことがよっぽど嬉しかったらしく、最近、酔っぱらうと「俺は科学の子」だとしゃべっているらしい。そこまで言うなら、そのうちに対数もマスターしてもらいたいものだ。

 

もともと俺は数学が嫌いだった。でも30歳を過ぎてから中学数学をやり直して、それから小学校数学も、方程式をガンガン使って大人の力でやり直してねじ伏せた。だから、俺は客観的には中学数学レベルしかできていないんだけど、世の中には、中学校レベルの数学でもできない人が多いので、不必要に威張っているんだと思う。

 

「俺が好きなのは、宇宙、気象、地球。それから時間と空間。」なんてことを残業のときに話していたら「オデッセイという映画を観たことありますか?」と聞かれた。エイリアンの監督が撮っているらしい。「マット・デイモンが火星に取り残されて、生活する話です。」という。そういうことなら、俺は観ないわけにはいかない。

 

それでリドリー・スコット監督の「オデッセイ」を観た。長い映画で飽きるんじゃないかと思ったけれど、最後まで一気に観た。

 

観ていて思ったのは、これが日本だったら、彼を救い出すことよりもきっと責任問題に焦点が置かれるだろうなということ。政府もマスコミも冒険や探検に援助をすることを知らないから仕方がない。

 

この映画の中では、アメリカのピンチを中国が救う。映画の売り上げでもそれだけ商業的な貢献を中国がするようになったということの反映だと思う。そして、実際に中国が救うことにはリアリティがある。最近、仕事上でつくづく中国の経済力の増加と日本政府の予算規模のへなちょこさに驚かされているので、日本が救うなんてことはありえないことは理解ができている。

 

かつては日本も豊かだったのになあ。映画「コンタクト」では、日本が実験場になっていたのに。いったいどこで失敗したのか。映画を観ながら悔しい気分も味わった。