火曜日に重要な会議があることはわかっていた。だから月曜日の夜にあった歓迎会では、飲み過ぎないようにビールやレモンサワーを飲んでいた。
飲み会の締めは上松町流で「よお。どすこい。どすこい。」で俺が締めた。それで、素直に帰ればよかったんだけど。
自転車を引きずりながらフラフラしていたら、いい感じのクラブがあったので、つい飲みに行ってしまった。そこで、2時間くらい飲んで、俺はまだ全然酔ってないと思っていたけれど、しっかり酔っていた。
家の近くの牛丼屋に寄って、でも窓からちょっと中を見たら混んでいたので、やっぱりやめにして、近くのセブンイレブンで買い物をして、家に帰って、買ってきたものを食べた。
朝、起きたら、脱ぎ散らかした服があちこちにあった。見るのも嫌だった。おまけに二日酔いでもう一度寝てしまおうと思ったけれど、大事な会議があったので、そんなことも言っていられなかった。
支度をして、家を出ようとしたら自転車のカギがない!そういえば、昨日、自転車をいつも停めている駐車場に停めた記憶がなかった。
俺はセブンイレブンにカギを付けっぱなしで自転車を放置してきたのだろうか?一応、セブンイレブンまで行ったけれど、自転車はなかった。鍵付きの自転車がコンビニの前に置いてあったら盗まれるよなあ、とも考えた。
いろいろと諦めて、職場まで歩いた。「結局、高い飲み代になったなあ。」と思った。自分への罰として、しばらく自転車は購入禁止ということにした。
その日の会議は二日酔いもあって辛かった。でも、いろいろと俺は反省していたので、そんな辛さもへなちょこだった。
夜、再びコンビニで買い物をした。コンビニの周りを歩いてみたけれど、自転車はなかった。それで、諦めた。でも、一応と思って、牛丼屋にも行ってみることにした。
そしたら、牛丼屋の前に、俺の自転車があった。鍵付きで。上田市民は牛丼屋に1日放置していた鍵付きの自転車も盗まないのかと驚いた。
自分を戒めるために、その後の1週間の残りの日々は、酒抜き、自転車禁止ということにした。
しかし、俺のことだ。土曜日にはもう飲み始めていた。
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水曜日には、パトロール業務があった。ほかの場所で経験はあったけれど、いろいろとルールが違うようだった。
それでも、秋の紅葉シーズンに爽やかな空気の中でパトロールができるのはいい気分だった。前の職場である北寄りの薄暗い部屋で、神経が煮詰まるような仕事をしているよりもずっとよかった。
一緒にチームを組んだ相手は初対面だった。巨体の男で、飴だのガムだのをくれた。断るのもどうかと思ったので、断らずに食べた。
「タバコは吸わないんですか?」
「吸わなくはないけれど、自分から積極的には。」正直にそういうとタバコもくれた。
秋の空を見上げながらタバコを吸った。
考えてみたら、タバコを吸ったのも久しぶりだった。高校の頃、秋の日に授業をサボって屋上でタバコを吸っていた頃のことを思い出した。あの頃からもう何十年も経ったなんて信じられないような気持がした。
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土曜日に、荷解きをすべて終えた。
先週の日曜日に受けたインバウンド実務主任者認定試験の解答速報が出ていたので、自己採点をしてみた。全87問中76問を正解していた。ここに、語学の加算が6点つくらしいので、82問の正解ということになるのだろうか?
合格レベルは8割の正解ということなので、よほど高得点の問題をミスしていない限り、そして、失格になっていない限り、受かったのではないかと思う。
合格通知が来るのは1か月ほど先のようだけど、その日が楽しみだ。
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再び太り始めて、今ではダイエットを始める前より太っている。完全なリバウンドだ。
こうなるともう食事制限も、適度な運動も何もしたくなくなる。しかし、それでは太る一方なので、どうしようかと考えてみた。
それで、せっかく上田市に来たことだし、湯治をすることにした。なるべく、温泉に行くことにする。
土曜日は、布引温泉御牧乃湯というところに行った。しばらく湯につかっているとだんだんと汗が出てくる。耐えられなくなったところで、体を冷水で拭いて、再び湯につかる。
温泉から出て、農産物を買っているときも、ずっと汗が止まらなかった。家のシャワーを浴びると、なんだか体がかゆくなるが、温泉ではそういうこともない。温泉はいいなあ、と思うし、これからも続けていきたい。
日曜日には、長野市に行く必要があった。帰りに裾花峡天然温泉宿うるおい館というところに行った。まだ午前中だったので、2時間くらいいるつもりだったが、結局30分くらいで出てきてしまった。どうも温泉に長くいることができない体質らしい。
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西加奈子の「サラバ! 下巻」(小学館文庫)を読み終わった。
女性の描く男性は、どこかリアルさが抜け落ち、バカを英雄視したり、偏った人間を標準的に描いていたり、といった無理があるものだが、この本はそうではなかった。この作者は男で、そして、若い頃は誰からも一目置かれるハンサムな青年で、今はすっかり禿げていると、なんの疑いもなく信じられる文章だった。
かつて、主人公が問題児だと遥か下に見ていた姉が立場を逆転して彼の前に現れる。今までのドラマはこの下巻への長い伏線だったのかと思うほど、この下巻の力は強かった。
そして、何が悲しかったのかは自分でもわからなかったが、この本を読んで俺はまた泣いてしまった。俺もまた、主人公同様に、信じられるものがない。何かを信じるということがどれだけ力強いことなのかをこの本は示している。いい本だと思う。できればもっと若いうちに読みたかった。
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佐藤正午の「鳩の撃退法 下巻」(小学館文庫)も読み終わった。
俺は最後まで主人公に感情移入ができなかった。
「沼本」を本人が何度も「ぬもと」だと言っているのに、「ぬまもと」と呼び続け、「ヒラコ」というあだ名の持ち主が「昔はハラコと呼ばれて嫌だった」と聞くと、それからはずっと「ハラコ」と呼び続ける。本当に子供じみて嫌な奴だった。
この本は全てがそんな感じだった。やたらと会話に略号を使う。「MSK」だの「SNO」だの。「MSK」は「マジっすか」の略で、「SNO」は「過ぎたるは、猶、及ばざるが如し」なのだそうだ。言わないし、くだらないし、つまらない。
この本は山田風太郎賞を受賞したそうだ。俺は「ふーん」としか思わない。ピーターパンとウェンディという本が読む価値がある本だと知ったことくらいで、他にこの本から得ることはなかった。きっと賞は、作家としての技術点なのだろう。読者である俺には関係のない話で、「ああ、つまんなかった。」というのが正直な感想だ。
ちなみに、俺が主人公だったら、偽札交じりの3000万円を目の前にしたら、消費者金融から金を借りてでも紙幣鑑別機を買い、真贋を確かめる。なぜ、そうしなかったのか、俺にはさっぱりわからない。
それから、なぜ、暴力団のボスが、部下の妻の不倫相手を執拗に殺すのかも意味が分からない。その意味するところはどこかに書かれていて、俺の読解力が不足しているからなのかもしれないが、いずれにしても殺す必要はない。殺す意味がわからない。
この本は糸井重里がほめていたから読んだのだけど、糸井重里ももういいや、と思った。

