毎年、年に1回、実家の同じ地域に住んでいる同学年の6人で旅行に行く。そのために毎月3000円ずつ積み立てをしている。今まで、岐阜、浅草、川崎に旅行に行った。目的地の特性がわかる人にはわかるかもしれない。わからない人は別にわかる必要もない。今年は、福岡だった。金曜日を1日休み、1泊2日で行ってきた。
6人は同じ地域に住んでいることと、同学年というだけで職種もバラバラ。6人もいても誰一人として「観光地に行きたい」という人がおらず、飲み会の時に、会計と幹事から次の目的地が発表されると「で、馬とかボートはあるの?」くらいにしか興味がない。
朝、小牧空港から福岡に行き、昼に福岡のパルコの地下でもつ煮込みを食べてビールを飲んだ。それからタクシーに乗って競艇場へ行った。
福岡の競艇場ではその日、「GⅢオールレディース福岡なでしこカップ」が開催されていた。
馬は15頭も走ったりするが、ボートレースは6艇しか出ないので、当たる確率は高い。基本的にインが有利なので、1号艇と2号艇を絡めていけば確率はさらに跳ね上がる。
逆に言うと大穴を当てたければ5号艇や6号艇を買うという手もある。でも基本的にボートは固いので、そういう艇はなかなか来ない。
競艇場に到着して、最初のレースが6レースで、俺はいきなり大きく負けた。7、8、9レースと俺はかすりもしなかった。周りで友達たちが「6000円勝った」とか「290円しかつかなかったから、取ったのに負けてしまった。」などと話している。「取って負け」の話すら俺にはできずに凹んでいた。
第9レースもまるでダメで、俺は暗い気持ちで出艇前に1艇ずつ走る展示を見ていた。5号艇の栢場選手の走りがすごくきれいなのに気が付いた。彼女が勝ちそうな気がした。
1号艇と2号艇も絡むことは想定していた。それで、5-1-2と5-2-1を3連単で500円ずつ買った。
「俺、今度のレース外したら、競艇から引退する。」と俺はみんなに言った。「センスがなさすぎ。全然当たらない。今まで1レースも取ってない。」このレースを外したら、あとは舟券を買わずに、どこかでふて寝でもするつもりだった。
「なんだよ、引退って。」みんな苦笑いをしている。ボートは固いので、ちゃんと買っているのに1レースも当たらないなんてことは普通はない。
第10レースが始まった。ボートは第1コーナーで8割がた決まる。きれいなスタートで、インの2艇がやはり速かった。そして、第1コーナーでその2艇が大きく外にふくらんだ。そして、その間隙を突くように、シャープな走りで黄色の5号艇が飛び出してきた。
「行け!5号艇!」周りで5号艇を応援している人など誰もいなかった。翌日の新聞を見たら、5-2-1の3連単は69番人気だったらしい。2着、3着争いは若干あったが、順当に2号艇と1号艇が入った。
3連単5-2-1が入った。配当は79,410円。100円買っておけば8万円近くになるというこの券を俺は500円も買っていたので、大きな勝利になり、引退はお預けになった。
そんなわけで、夜は屋台でビールのはずが、高級フグのお店に急遽変更。そのあとクラブ(踊らない方)に行って、それも全部俺がおごった。だから一晩で軽く20万円は使ったけど、勝ったんだから当然。あの5号艇の抜け出してきたシーンは美しく、いつまでも記憶に残りそうだった。
翌日は朝からダラダラ。俺は友達と朝からクラブに飲みに行った。昼にはみんなで牛タンを食べて、それでまた飛行機で小牧空港に帰ってきた。
飛行機に乗っているとき、月曜日からのつまらない仕事が頭をよぎり、「着陸に失敗して、全治6か月くらいの重傷にならないだろうか。次の転勤まで仕事に行きたくないからなあ。」なんて思ったけれど、無事に着陸してしまった。
+++
西 加奈子の「ふくわらい」(朝日新聞出版)を読み終わった。
「なんだ、この小説は!」というのが正直な感想だ。俺の人生が3回あってもとても書けそうにない。荒唐無稽な話なのに、地面に足がしっかり着いていて、俺はかつてプロレスに詳しかったけれど、プロレス・ファンが読んでもプロレスラーを正確に捉えている。
似たような感覚の小説を乙一も書いていたけれど、乙一よりも世界というか視野が広い。大量の材料を全部使って、極上の料理をしたという感じだ。
彼女は直木賞も受賞しているらしいが、当然だと思う。これだけの本が書ける人が取らなくて誰が取るというのだ。すごい本で驚いた。最後は風呂に入って読んでいたが、悲しいシーンなど特になかったのに、最後は涙が落ちそうだった。他の本もぜひとも読んでみたい。久しぶりにそんな気持ちになった。
+++
川崎直孝の「ちおちゃんの通学路」(MFコミックス)が9巻で終わってしまった。ここのところの数巻は不発な感じがしていたが、この9巻は久しぶりに面白かったので、これからに期待していたのだが、まさかの最終回とは。さびしい。
蛇蔵の「決してマネしないでください」(モーニングコミックス)は3巻で終了。小林まことの「JM」(イブニングコミックス)と堀尾省太「ゴールデン・ゴールド」(モーニングコミックス)はなかなか単行本化しない。
俺が読みたいと思う漫画がなかなかなくて困っている。
