【マンガ感想】
『へうげもの 9巻 (山田芳裕)』
へうげもの 9服 (モーニングKC)
講談社 2009-07-23 by G-Tools |
過去記事はこちら → 1巻 2巻・3巻 4巻 5巻 6巻 7巻 8巻
【あらすじ】
茶の湯と物欲に魂を奪われた戦国武将・古田織部。天才・信長から壮大な世界性を、茶聖・千利休から深遠な精神性を学び、「へうげもの」への道をひた走る。利休執念の「わび」数奇革命は、未完に終わった。新時代到来、織部はひたすら「へうげ」を目指す。生か死か、武か数奇か、それがますます問題だ!!
功名よりも茶器に興味を示す人物・古田織部を主人公とした戦国時代を舞台とするマンガ。
この古田織部は実在した人物で、利休の弟子で、利休七哲のひとりであり、
織部焼・織部流の創始者としても有名な人物です。
戦国時代のマンガといえば、戦争で生き残り、立身出世が主流でありますが、
このマンガは『文化』・・・特に茶の湯の世界が中心に描かれています。
そのおかげで、このマンガは非常に新しい視点から戦国時代を描かれております。
千利休の影響で、茶の湯が多くの大名に流行ったことは有名ですが、
漫画というジャンルで、本格的に安土・桃山文化の世界を描いた作品は他に読んだことがありません。
そういった意味で、多くの読者にとって、『新しい作品』であると思います。
『戦国時代のもう一つの顔』である安土・桃山文化を描いているということで、
どうしても地味な印象を受けるかもしれませんが、文化的なことだけでなく、
ちゃんと戦国マンガらしい部分(独自解釈が多いけど)も描かれているので
そういった意味でも、戦国ファンが安心して買える作品だと思います。
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ここからは9巻の感想。
9巻では、ついに『千利休』の切腹が行われ、『千利休』の壮絶な最後が描かれると共に、
その『千利休』の後を継いで、主人公・『古田織部』が茶頭筆頭を引き受けることとなりました。
今巻のメインとなるのは、もちろん『千利休』の切腹ですね。
説明不要だと思いますが、『千利休』とは、“わび茶”という茶の湯の一様式を完成させた茶人で、
『豊臣秀吉』の茶頭筆頭を勤めていたため、豊臣政権化で絶大な権力を持っていたとされる人物です。
この作品では、主人公・『古田織部』の師匠として初期から登場し、それ以降、活躍し続けた人物で、
実質上、この作品の“真の主人公”というポジションのキャラクターでありました。
そんな『千利休』の死が描かれる事となったのが今巻です。
前巻で、彼の最大の支持者・『豊臣秀長の死』で、実質的な権力は『石田三成』に移ったことにより、
『徳川家康』を巻き込んで、『豊臣秀吉』を暗殺し政権を奪うという反乱を起こそうと企てたのですが、
その『徳川家康』より、『明智光秀』の辞世の句を聞かされたことで、反乱自体を取りやめ、
誰も巻き込まず、たった一人で『豊臣秀吉』に対して、宣戦布告をしました。
当然のことながら、この行為は反乱としてみなされ、堺屋敷に閉門となり処罰を待つ事になるのですが、
『豊臣秀吉』自身、『千利休』に死罪を言い渡す事にためらいを持っており、保留をしておりました。
しかし、そんな『豊臣秀吉』に対して、謎の暗殺者が送られてきたことから、仕方なく『千利休』の切腹を
命じる事となり、ついに、『千利休』は切腹をすることとなります。
これ以上は完全ネタバレになってしまうため詳しくは書きませんが、主人公・『古田織部』も
この『千利休の切腹』に大きく関わってきまして、このことがこのシーンをより面白くしております(^^ゞ。
しかし、まさかあの場面で、『古田織部』が登場するとは思っていなかったので、本当に驚きました。
『千利休』と同じような顔をして、「おまえがここで登場するのか!?」と思いました(笑)。
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【総評】
ついに、『千利休』の死が描かれました。
その死に様は凄まじく、これほどインパクトのあるシーンは見た事がありません。
必見という言葉は、この場面にこそ使われる言葉だと思いました。
点数的には
94点
です。
では、ここまで。