「人間の口に入れるか、自動車の給油口に入れるか」が問題となるだろう、と以前書きましたが、だんだんそういう議論がメディア上で目立ってくるようになってきました。
日経ビジネス1月22日号では、アメリカのエタノール関連企業の代表、Archer Daniels Midland が取り上げられました。
「穀物争奪の隠れた主役 エタノールメジャー ADMが食糧も燃料も支配する」と題した全14ページの特集記事を組んでいます。
この記事を読んで行きましょう。
前回の投稿で「いちいち保存していない」と書きましたが、1月下旬に一つとっておいてあります。
「フジサンケイ ビジネスアイ」という新聞があります。前身は「日本工業新聞」で、「日刊工業新聞」や「日経産業新聞」と並んで、産業界のニュースを専門に報ずる日本三大紙でした。
現在はノリが変わって、強いて言えば「産経っぽくニュースを選択する方向性は残しつつ、『文字を大きくして内容を少なめに抑えた日経』を目指し、流行の中国株をやっている人向けに中国株市況も載せている」とでも言うべき内容になっています。(ちょっと言い過ぎですか... ^^;)
私はたまに駅の売店で買います。たまたま1月31日(火)版を手に入れました。
11面に、石油メジャーの設備売却動向が報じられていました。
(Quote)
米の精製施設など売却
1970億円 シェルが石油下流合理化
英蘭系メジャー(国際石油資本)、ロイヤル・ダッチ・シェルは29日、米カリフォルニア州の精製施設やガソリン小売り網を米石油精製テソロに売却すると発表した。売却額は16億3000万ドル(約1970億円)に達する見通し。...(中略)...
シェルは下流事業の合理化などによる経営基盤強化を進めており、フランスやドミニカの精製施設の売却も決めている。
...(中略)...
報道によると、石油精製事業は過去2年、利幅が安定していたが、英BPや米シェブロンなどのメジャーも事業規模の縮小を進めており、「精製の黄金時代」が終わりつつあるとの分析も出ている。 (坂本一之) (Unquote)
こういった報道を見ると、私は「オイルメジャーの幹部連中は分かっているんだな」と思いますね。
世界各地で油田権益を持っている会社です。買収戦略でどんどん油田権益を買いつつある企業です。そういう会社が北米という大市場にある製油所を売却しつつあるわけです。
一方で、石油の需要は伸び続け、IEAも「2030年に向けてまだまだ需要は伸びる」と発表しているわけです。
その一方で、製油所の売却を進めているわけです。普通なら逆ですよね。需要がどんどん伸びると信じているなら、その市場へ供給しようと狙うはずです。新たに設備投資を積極化するべき局面のはずです。
一体これが何を意味しているのか。
私には、こういうことに思えます。
(1) 原油の産出量がこれから減少する。
(2) 原油の産出量がその精製設備の処理能力量より少なくなる。
(3) 井戸元の権益の重要性が精製設備の重要性より相対的に高くなる。だから油田権益はできるだけ買収しておく。
(4) 産出量減少が進行すると、いずれ精製設備は原料不足に悩まされる。
(5) 精製設備が原料不足に悩まされると稼働率が落ちる。だから現在新規に設備投資するのは危険だ。古い設備をだましだまし使うのが良い。
(6) 古い設備もいつの日にか原料不足に悩まされて稼働率が深刻に低下し、ついには精製工場閉鎖に追い込まれるだろう。さっさと誰かに売却し、設備を除却して損失を計上する役を誰かに押し付ける方が得だ。
ほかにも例えば、こういう情報もあります。
↓
http://aspo-ireland.org/newsletter/Newsletter69.pdf
上記のPDFファイルの9ページ目にある "746. The Retreat from Marketing" という部分を参照してください。
私はいわゆる「サラリーマン」であり、「ブロガー」でもありますが、同時に「個人投資家」でもあります。
もちろん、株式投資をしています。商品先物のポジションも多少持っていますが、現物株式が多いですね。
投資家の立場に少し立っていることと職業上会計に携わっている(※)ということとあいまって、どこかの企業を観察するときに「株主としての立場から見ると、その会社はどう見えるか?」ということを考えたりします。
エネルギー産業についても、そういうことを考えることがあります。石油メジャーと呼ばれる数社についてもです。
石油メジャーは設備投資に近年消極的です。いちいちこの手の記事を保存していませんのでここにはほとんど掲載するつもりもありませんが、新聞に時々載ってます。
石油メジャーの経営者達は「株主からの配当への要求が強くて、投資にまわせない」と回答しています。
私はこの回答に疑問を抱いています。
もし私が石油メジャーの大株主だったら、一時的に配当してくれるよりも長期にわたって成長してくれることを望みます。
その方が節税になりますからね。小口だったらともかく、大口の株主であるとしたら、そう考えます。
もし「長期にわたる成長を期待できない会社だ」と判断したら、自分が購入した時点の判断が間違っていたと認識し、株を売却します。
最初から「長期にわたる成長を期待できない」と思っていたら、はじめから多額の投資はしません。
「高成長すると確信できるなら配当がゼロでも構わない」という私のような投資家は少数派かもしれませんが、それでも「高成長して価値がどんどん膨れ上がってくれるのなら、配当を後回しにしても構わない」という株主なら大勢いるはずです。
一昔前のマイクロソフトの株主はそういう人たちでした。長い間配当してませんでしたよね。それは「高成長期待」を株主の側が持ち続けていてくれたからです。
実際、本当に高成長を維持できると期待できるのなら、配当するよりも儲けた金を更に事業につぎ込んで更に事業を拡大する方が得です。
石油産業は既に成熟産業と言えると思います。ですから、いかに資源高時代とは言っても、安定成長が関の山なのかもしれません。
それでも、「事業の将来に備えての設備投資を削ってまで配当に回してくれ」とまでは、なかなか言いにくいものがあるはずです。設備は建設した直後から少しずつ老朽化します。事業を続ける限り設備をいつか更新する必要があります。
事業を拡大するなら、新規に設備を増設しなければなりません。
そのことが分かっている合理的な判断ができる人物が株主であり続けたいと思っているなら、将来の成長に何がしかの期待を持っているはずであり、設備の更新に何が何でも反対する理由は無いはずです。
「配当と設備投資とのバランスをとってくれ」というところまでなら、言っても不思議ではありませんけどね。
今は資源高基調で先行き増益が期待し得る状況に見えますから、本来なら設備投資に対して積極的になってもおかしくないはずです。
これを別の言葉で言い換えますと、「一生懸命その事業に投資しようとしていない会社の経営者は、その事業の将来に悲観的になっている可能性がある」ということです。
「株主の配当要求が厳しい」という石油メジャー経営陣の言い分に対する私の疑いはこれです。
私の見るところ、実際には事態はもっと進行しつつあります。彼らは製油設備を売却し始めています。
少し事例を挙げてみましょう。
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※ 企業の決算書類は、「所有者=株主に対して経営者が会計報告をする」ということを第一の前提として作成されます。ですから、企業会計に携わると、「株主からどう見えるか」ということを、どこかの時点で必ず気にすることになります。
日本経済新聞 1月25日(木) 11面
(Quote)
国産バイオ燃料 石連が購入へ
石油元売りの業界団体である石油連名は二十四日、大阪や北海道で生産する国産バイオエタノールを購入する方針を明らかにした。...(中略)...
石連は購入した国産バイオエタノールを貯蔵し、二〇〇八年末に新日本石油精製の根岸製油所(横浜市)内に建設するETBEの製造装置で利用する。当初ETBEはフランスから輸入するが、順次、国内製造を増やしていく方針だ。
国内では、大成建設や丸紅などが出資するバイオエタノール・ジャパン・関西(大阪府)が堺市で廃木材を原料にしたバイオエタノールの生産を始めた。北海道でも地元の農業協同組合がテンサイなどを原料にしたバイオエタノールの工場を建設、〇八年度中の稼動を目指している。
いずれも自動車用燃料としての利用を前提にしているが、自前で販売できる量に限界があるため、石油元売りとの連携を模索していた。 (Unquote)
ということは、
(1) 今年4月以降から来年末までの期間は、フランスから輸入するETBEをガソリンに製油所で(石油業界の勢力下で)混ぜる。
(2) 今年から大阪で生産される(既に生産されている)エタノールは、石油業界が買い取って来年末まで貯蔵する。
(3) 来年から北海道で生産開始予定のエタノールも、石油業界が買い取って来年末まで貯蔵する。
(4) 来年末にETBE製造設備が稼動開始するので、貯蔵しておいたエタノールとイソブテンを合成して自前でETBEを製造し、製油所でガソリンに混ぜて販売する。
こういうことですね。
政府が立法化しようとしている「製油所外でのエタノール直接混合の認可」を何としても実質的に阻止したい、という強い意志を感じます。
リンク先に「もったいない学会」という団体があります。ここは、ピークオイルを研究しているスウェーデンに本拠のある組織ASPO(The Association for the Study of Peak Oil & Gas)と交流のある日本の団体です。
昨年11月24日にこの団体が東京で一般に公開したシンポジウムを開催しました。
ちなみに、11月29日のASPO関係者来日講演会には、いつも読んでくださっているSGWさんとforever2xxxさんは参加されたそうです。
さて、11月24日のシンポジウムでは、電力中央研究所の天野さんという方が、エネルギー収支について電力(発電)を例に発表されています。
↓
http://www.mottainaisociety.org/1124eprppt.pdf
天野さんは昨年半ば頃からこの件について積極的に情報発信されている方で、エネルギー収支が高いことを理由に原子力発電推進を主張されています。
上記のPDFファイルの9ページに載っていますが、天野さんの試算では原子力発電がエネルギー収支上有利と出ています。
この資料もご他聞にもれず、エネルギー収支の計算の前提を僅かしか記載していません。
しかし、昨年末ようやく天野さんの計算の前提が載っている論文を見つけました。
「日本原子力学会誌 2006 Vol.48 No.10」(社団法人日本原子力学会が発行)
29~35ページに天野さんの論文が載っています。
で、この投稿ではその詳細には立ち入りません。
私が注目したのは、論文に載っている「原子力発電所が発電するにあたっての、エネルギー input の構成」だったからです。
原発におけるエネルギーinputのうち、55%が発電所の設備建設までの過程に投入されます。ただし、ウラン濃縮を全てガス拡散法による、と仮定した場合です。遠心分離法だけを使う場合は、ウラン濃縮に必要なエネルギー投入量が大幅に減りますので、この55%よりずっと高い割合(90%程度)を「発電所の設備建設までの過程」が占めることになります。
この55%の内訳は以下のようになっています。
設備を構成する素材を製造する過程: 46%
素材を加工し、加工した製品を工事現場に輸送し、工事現場で建設する過程: 9%
計: 55%
となっています。
素材産業がどれだけエネルギー収支に深刻な影響を与えているか、これでよく分かりますね。
セメント、鉄鋼、銅や鉛などの非鉄金属、ガラス...といった素材です。
天野さんの論文によると、素材を製造する過程の(全体に対する)46%のうち、「石炭の投入」が(全体に対して)30%だそうです。
これは、「製鉄業に投入する石炭の持つエネルギー量」が原発での発電に投入される全エネルギーの4分の1以上を占めている可能性大(一部セメント製造に投じた石炭が混じっている?)、ということです。
火力発電所でも水力発電所でも、石油産業の製油所でも、原発同様に巨大な装置産業であることに変わりはありません。
自動車や建機や農機や鉄道車両の製造にも影響していること、間違いありません。それらの機械は素材の塊ですから。
バイオ燃料の増産に当面重要であろうと思われる化学肥料だって、巨大な化学工業設備で生産されているわけです。その生産設備の建設までの過程に投入されたエネルギーに、上記の素材生産に投入されたエネルギーが間接的に影響しているわけです。
ということは、「素材の製造にかかるエネルギーを節約することが実現すれば、社会全体としてエネルギーを生産する産業におけるエネルギー収支を大きく改善できるはずだ」と推論できるということです。
細かく言うと、「製鉄業で省エネできるかどうか」が、社会全体のエネルギー収支を向上させる上で特に重要であることがわかりますね。
社会全体としてエネルギー収支を改善できれば、今は非効率という向きもある風力やバイオ燃料などの再生可能エネルギーも、今よりエネルギー収支が改善される可能性が出てくるはずです。
化石燃料が減退するのと相俟って、素材産業の省エネ化進展が再生可能エネルギー利用の将来における普及の重要な要因となるのではないかと私は考えています。
役所が国策を打ち出す前から、素材産業の製造工程における省エネ化に向けて進められている研究開発の事例を一つ見てみましょう。
ガラスです。
日経産業新聞 2006年12月5日(火) 10面、2006年12月6日(水) 10面
[概要]
・板ガラスの現在の製造方法は、「原料の塊を溶解炉に投入し、1400℃で溶かし、成分を均質にするために数日から10日かけて徐々に混ぜる」方法。1860年以来この方法が使われている。
・現在の製造方法だと、溶解炉が巨大なために温度が均一に行き渡りにくく、原料が溶け残るために歩留まりは平均70%程度となっている。
・(社)ニューガラスフォーラム、(独)物質・材料研究機構、一部大学、民間企業などが協力して、「ガラス原料を粒子状に加工した後、プラズマ発生装置内で溶かして板ガラスを製造する手法」の研究開発を進めつつある。
・気体のアルゴンと酸素に高周波の電磁場をかけて10000℃の「高周波プラズマ」を発生させる。このプラズマによって原料粒子を数ミリ秒で(1秒の1000分の1の何倍か、の間に)溶かすと同時に均質に混ぜ合わせることができるようになった。(均質に混ぜ合わせれば、板ガラスができる)
・実験では直径10cm、厚さ1cmの円盤状の板ガラスを製造できた。
・この新しい製造方法だと、溶解炉が小型に出来、極めて高い温度を均一に行き渡らせられるため、溶け残りが少なくなる。
・この手法が実用化されれば、従来の方法と比べて消費エネルギーを60%減少させることができると試算されている。
・国内のガラスメーカーのエネルギー消費は産業界全体の1%。重油換算で年間200万キロリットル。
・現状、この新しい製造方法は、高周波プラズマを安定して長時間発生させられるかどうか検証できていない上、実際に工場に設置するとなるとプラズマ発生装置への設備投資が従来方法と比べて大幅に高くなる。よって実用化はまだ先。
前回ご紹介した「省エネルギー技術戦略」PDFファイルの13ページ目には、超燃焼 - 素材産業の製造工程における省エネ化に向けて、どういう研究開発をするべきかが書かれています。
もちろん、まだまだ未開発の分野です。研究開発の本格化はこれからです。
私は、この分野の実用化が、それなりに遠い将来 - 30年後くらい? - には、結構進んでいるだろうと考えています。
理由は単純です。
これまで日本人が目茶苦茶に「製造業の省エネ化」に熱心だったからです。
この背後には、
・製造原価を下げるには、原料・エネルギー消費を減らすのが極めて有効である。原料消費を減らすには、省エネ・省資源がその第一歩となる。
・原料、エネルギーは大部分が輸入品であり、70年代の2度の石油ショックによって、「原料確保は決して簡単なことではない」という考え方が行き渡った。
という2つがあると私は考えています。
特に一番目は重要ですね。営利事業ですから、結局カネの問題になります。製造原価を下げられるなら、そんな良いことはありません。会社の競争力も上がります。競争相手より安く製造できるようになるわけですから。
資源の節約にあまり留意しなかったアメリカの製鉄業界は、結局日本勢に負けてしまいました。80年代の通商摩擦時代を最後に鉄鋼貿易は日米間では重要でなくなってしまいました。
エネルギー不足に直面すれば、必ず節約する方法を産業界は取り入れるだろう、或いは開発するだろう、と私は考えています。
もちろん、その際に何らか妥協する可能性はあります。例えば「一定時間内の生産量を最大化することを諦める」といった選択はあり得ます。
エネルギー不足が深刻になれば、民間企業はそうやってでも適応しようとするだろうと私は考えています。
そういう場合は、我々一般の消費者も、「消費量を削減しつつ、生活に支障ないようにするにはどうしたら良いか?」問われます。
こうやって「民間企業のサプライチェーンに乗っかって、省資源化が全体として進行していく」のが、私が思い描いている将来像の大きな部分ですね。
逆に言うと、「民間企業のサプライチェーンが締め付けられない限り、消費者の側もなかなか節約に向けて努力しないだろう」と考えている、ということでもあります。
身の周りの現実はそうなっているでしょう?
私の周囲もそうですよ。
実を言うと、世間一般ではほとんど認識されないまま(メディアもほとんど指摘しないまま)「素材産業の省エネ化」は今や国策となりつつあります。
新・国家エネルギー戦略」という書類を昨年5月に経済産業省/資源エネルギー庁が策定し、昨年7月にその内容が閣議決定されたことは、以前から何度か申し上げてきました。
この「戦略」を具体化するため色々な施策が実行に移されつつありますが、その一つとして「省エネルギー技術戦略」という書類が策定されつつあります。
「省エネルギーセンター」という財団法人のウェブサイト上で、その策定途上の原稿が公開されています。
↓
http://www.eccj.or.jp/rodemap/pdf/1zenbun.pdf
「省エネルギー技術戦略」は今後省エネ化進展を目指す分野を5つ取り上げています。その1つに「超燃焼」という分野があります。これが「素材産業の省エネ化」です。
PDFファイルの4ページ目から少し抜粋してみましょう。
(Quote) 産業分野の中でエネルギー消費比率の上位にある鉄鋼・非鉄、石油精製、化学、窯業・セラミックスなどのプロセス産業では化石燃料を燃焼させて得た熱エネルギーの利用がエネルギー消費の多くを占めている。特に無為の燃焼利用は最小化したうえで、燃焼行程そのものを最大限高効率化し、精製される熱エネルギーを極限まで有効利用することが、産業分野における抜本的な省エネルギー/CO2排出量削減につながるとの認識から、燃焼利用を可能な限り省いた革新的な製造システム実現に向けた技術開発を積極的に進めること、同時に従来型燃焼とは異なる反応制御型燃焼、熱物質再生燃焼やプロセス複合型燃焼など燃焼高度化技術を併せて「超燃焼システム技術」と定義する。
具体的には、高温をうまく作り、化石燃料の持つエネルギーを高効率に利用するという観点から、上述の燃焼高度化・複合化技術の開発を進め、素材製造工程にプラズマ技術、マイクロ波、化学反応、バイオプロセスなどを活用することにより、燃焼工程を代替・補完する革新的な技術開発を推進していく...(後略) (Unquote)
こういうことを目指している人達がいるわけです。
これまでは自動車の液体燃料の話を中心にしてたために、農機や建機など自動車っぽい機械の話だけしましたので、あまりピンと来ないかもしれません。
私が思うにこの効果が大きく現れるのは、以下の産業で省エネ化が推進された場合です。
・鉱業
・製鉄業
・非鉄金属精錬業
・化学工業
・窯業
・運輸業
主に素材産業ですね。そうでない6番目だけは、すでに一部述べました。
これらの産業は非常に多くのエネルギーを消費します。
これらの産業のエネルギー消費は、エネルギーを生産する産業 - 石油・天然ガス・石炭・ウラン採掘(鉱業の一部)、石油精製業(化学工業の一部)、電力業(発電)などのエネルギー産業のエネルギー収支に響きます。
もしバイオテクノロジーを駆使して、荒地から大量にエタノールを採れるようになったら、どうなるでしょうか?
あるいは既存のエネルギー作物 - 先の例のサトウキビなど - のエタノール原料の生産性が大幅に高まったらどうなるでしょうか?
それも、ごく僅かな肥料や農薬の投入で済むようになったら? かつまた、農機の燃費が向上したら? 生産物を運ぶトラックの燃費が向上したら?
とりあえずエタノール原料=蔗糖の生産力が増大する、ということだけ考慮しつつ、先のブラジルの例で考えて見ましょう。
現在と同じだけのサトウキビ畑の面積を品種改良したサトウキビの生産に充て、かつサトウキビの生産性が仮に50%上がったとしましょう。
前回、第一段階について考察したとき、
ガソリン供給量:エタノール供給量 = 100:40
と計算されました。
これが更に改善するわけです。エタノール供給量が一気に60になります。
ガソリン供給量:エタノール供給量 = 100:60
エタノール増加分20に相当するガソリンの量は11.7くらいですから、
ガソリン供給量:エタノール供給量 = 88.3:60
で、変化が起こる前と同じだけのカロリー量のエネルギーを供給できることになります。
分かりやすく換算すると
ガソリン供給量:エタノール供給量 = 100:68
ということです。
これでだいぶエタノールの存在が大きくなりましたね。
しかし、「これでは代替していないじゃないか」という方もいらっしゃると思います。
100:68なら確かにそうです。
私は、「バイオテクノロジーの進歩により、将来はバイオ燃料の土地生産性が何倍にも増加するだろう」という仮説を立てています。
信じられないかもしれませんね。
なぜこういう仮説を立てているのかについては、別のブログテーマで新聞記事を紹介しながら別途論じたいと思います。
ここでは、「何倍にもなる」と私が想定している、ということをご理解ください。
上記の例はまだ控えめな想定だと私が考えているということです。
省エネ化とモーダルシフトなどを前述の通り実行した上で、さらに「プラグインハイブリッドシステム」と「システム生物学による燃料作物や加工工程の大幅な改善による数倍以上もの生産性の向上」があれば、石油を代替できる日が来るに違いない、というのが私の意見です。
ま、今のところは「夢」ですが。証明されたわけでも何でもありませんからね。