私はいわゆる「サラリーマン」であり、「ブロガー」でもありますが、同時に「個人投資家」でもあります。

もちろん、株式投資をしています。商品先物のポジションも多少持っていますが、現物株式が多いですね。

投資家の立場に少し立っていることと職業上会計に携わっている(※)ということとあいまって、どこかの企業を観察するときに「株主としての立場から見ると、その会社はどう見えるか?」ということを考えたりします。

エネルギー産業についても、そういうことを考えることがあります。石油メジャーと呼ばれる数社についてもです。

石油メジャーは設備投資に近年消極的です。いちいちこの手の記事を保存していませんのでここにはほとんど掲載するつもりもありませんが、新聞に時々載ってます。

石油メジャーの経営者達は「株主からの配当への要求が強くて、投資にまわせない」と回答しています。

私はこの回答に疑問を抱いています。

もし私が石油メジャーの大株主だったら、一時的に配当してくれるよりも長期にわたって成長してくれることを望みます。

その方が節税になりますからね。小口だったらともかく、大口の株主であるとしたら、そう考えます。

もし「長期にわたる成長を期待できない会社だ」と判断したら、自分が購入した時点の判断が間違っていたと認識し、株を売却します。

最初から「長期にわたる成長を期待できない」と思っていたら、はじめから多額の投資はしません。

「高成長すると確信できるなら配当がゼロでも構わない」という私のような投資家は少数派かもしれませんが、それでも「高成長して価値がどんどん膨れ上がってくれるのなら、配当を後回しにしても構わない」という株主なら大勢いるはずです。

一昔前のマイクロソフトの株主はそういう人たちでした。長い間配当してませんでしたよね。それは「高成長期待」を株主の側が持ち続けていてくれたからです。

実際、本当に高成長を維持できると期待できるのなら、配当するよりも儲けた金を更に事業につぎ込んで更に事業を拡大する方が得です。

石油産業は既に成熟産業と言えると思います。ですから、いかに資源高時代とは言っても、安定成長が関の山なのかもしれません。

それでも、「事業の将来に備えての設備投資を削ってまで配当に回してくれ」とまでは、なかなか言いにくいものがあるはずです。設備は建設した直後から少しずつ老朽化します。事業を続ける限り設備をいつか更新する必要があります。

事業を拡大するなら、新規に設備を増設しなければなりません。

そのことが分かっている合理的な判断ができる人物が株主であり続けたいと思っているなら、将来の成長に何がしかの期待を持っているはずであり、設備の更新に何が何でも反対する理由は無いはずです。

「配当と設備投資とのバランスをとってくれ」というところまでなら、言っても不思議ではありませんけどね。

今は資源高基調で先行き増益が期待し得る状況に見えますから、本来なら設備投資に対して積極的になってもおかしくないはずです。

これを別の言葉で言い換えますと、「一生懸命その事業に投資しようとしていない会社の経営者は、その事業の将来に悲観的になっている可能性がある」ということです。

「株主の配当要求が厳しい」という石油メジャー経営陣の言い分に対する私の疑いはこれです。

私の見るところ、実際には事態はもっと進行しつつあります。彼らは製油設備を売却し始めています。

少し事例を挙げてみましょう。

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※ 企業の決算書類は、「所有者=株主に対して経営者が会計報告をする」ということを第一の前提として作成されます。ですから、企業会計に携わると、「株主からどう見えるか」ということを、どこかの時点で必ず気にすることになります。