役所が国策を打ち出す前から、素材産業の製造工程における省エネ化に向けて進められている研究開発の事例を一つ見てみましょう。
ガラスです。
日経産業新聞 2006年12月5日(火) 10面、2006年12月6日(水) 10面
[概要]
・板ガラスの現在の製造方法は、「原料の塊を溶解炉に投入し、1400℃で溶かし、成分を均質にするために数日から10日かけて徐々に混ぜる」方法。1860年以来この方法が使われている。
・現在の製造方法だと、溶解炉が巨大なために温度が均一に行き渡りにくく、原料が溶け残るために歩留まりは平均70%程度となっている。
・(社)ニューガラスフォーラム、(独)物質・材料研究機構、一部大学、民間企業などが協力して、「ガラス原料を粒子状に加工した後、プラズマ発生装置内で溶かして板ガラスを製造する手法」の研究開発を進めつつある。
・気体のアルゴンと酸素に高周波の電磁場をかけて10000℃の「高周波プラズマ」を発生させる。このプラズマによって原料粒子を数ミリ秒で(1秒の1000分の1の何倍か、の間に)溶かすと同時に均質に混ぜ合わせることができるようになった。(均質に混ぜ合わせれば、板ガラスができる)
・実験では直径10cm、厚さ1cmの円盤状の板ガラスを製造できた。
・この新しい製造方法だと、溶解炉が小型に出来、極めて高い温度を均一に行き渡らせられるため、溶け残りが少なくなる。
・この手法が実用化されれば、従来の方法と比べて消費エネルギーを60%減少させることができると試算されている。
・国内のガラスメーカーのエネルギー消費は産業界全体の1%。重油換算で年間200万キロリットル。
・現状、この新しい製造方法は、高周波プラズマを安定して長時間発生させられるかどうか検証できていない上、実際に工場に設置するとなるとプラズマ発生装置への設備投資が従来方法と比べて大幅に高くなる。よって実用化はまだ先。