Q&A3221 46歳、リプロで挑戦中 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 46歳

1  妊娠治療中における、経皮鎮痛消炎剤(モーラステープなど)や市販のシップや鎮痛消炎温感プラスターなどの使用は何らかの影響がありますか。使用によって卵子卵胞の成長や着床、妊娠継続、出産、卵巣や子宮への影響がないか気になっています。経皮鎮痛消炎剤は妊娠後期は使用しないよう注意書きがありますが、他のものは特にありません。


2  リプロに転院し始めての採卵を先日終えました。D3よりアンタゴニスト法でクロミッド1錠+フェリング150+富士150で刺激を始めました。D8で診察を受けた際にFSH15.7→57.0となり、HMGによる刺激が強すぎてFSH値が上がり卵胞が育っていないため、エナルモンとプロギノンでFSHを一旦下げ、D18からクロミッド1錠+フェリング150で刺激再開。D21診察時に卵胞0/1と0/2(E2値72.3)、D26で1/2と0/2(E2値160.1)、D31で採卵、採卵数1、未成熟、分割せず。採卵時に卵胞が増えており、小卵胞含め6-7個あったように見えました。


前医含め約8年治療をしています。クロミッドも長く服用していますが、処方されたり、HMG注射だったり。近年は注射のみ150又は300、フェリングか富士のどちらかでした。卵胞が数個育ち採卵数は1〜3個程度で、授精が1〜2個程度。年の半分は受精に至らず。リプロで初回だったので刺激の調整をしている段階かと思います。以前はサプリを飲んでいませんでしたが、転院してサプリをしっかり摂るようにしましたので(Basic、イノシトール、ビタミンD、DHEA、チラーヂン)、今後の採卵に希望を持ちながら過ごしています。
①クロミッド長期服用のリスク、がんリスクを踏まえた処方の間隔など

②クロミッドとHMG併用のメリット

③フェリングと富士をかけ合わせる目的

④刺激を長めに行い、小卵胞もターゲットに含めることは有益かどうか(以前、一番大きい卵胞が25-30になるころまで育て小卵胞が育つのを待ったことがあります)。


松林Drのブログに出会うまで、転院前までは、極力あまり考えないよう、医師に任せて、採卵移植を繰り返す年月を過ごしました。流産を繰り返し治療も長くなり精神的にもあがったりさがったりの経緯もあり、とにかく淡々と運命を信じて継続してきました。ブログを拝読しながら、最後のチャレンジ、自らの見識を深めDr.と共にベストを探り宿命を待ちたいと考えるようになりました。ニュートラルな気持ちで、ドンと構え、出来ることをする。若干、細かい事に興味関心が向かう傾向があるため、大変恐縮ですが、よいアドバイスがいただけると幸いです。
 

A 

1  内服も経皮も含め消炎鎮痛剤は、卵胞発育にはプラスに作用し、排卵を抑制(卵胞が破れにくくなる)する効果があります。しかし、着床を妨害する可能性がありますので、移植前後の使用は控えた方が良いです。妊娠中に服用可能なのは、アセトアミノフェンのみです。経皮製剤は妊娠初期は問題ないと考えられていましたが、問題があるかも知れないという論文もあります。こちらの記事をご覧ください。

 

2  

①これまでクロミッド長期服用によるリスクは問題視されていませんでしたが、先日ご紹介した論文では癌のリスクがあるとしています。ただしこれも賛否両論があり、現段階では結論は得られていません。

②一般的にクロミッドは卵子の数を増やして小さな卵胞を発育させる目的、HMGはある程度発育した大き目の卵胞を発育させる目的というイメージで併用されています。

③当院の刺激薬剤選択のポイントは、LHとFSHの配合比を年齢とAMHから算出することでベースの薬剤を決めています。一方で、それぞれの周期による好不調もありますので、刺激中のLHとFSHの値を見ながら微調整しています。AMH値の記載がありませんが、フェリングと富士はそのような判断基準で選択されているはずです。

④卵胞を大きくしてから採卵した方が良い方と、あまり大きくしない方が良い方がおられます。卵胞が25-30mmにして採卵した際に良かったのであれば、刺激を長くする作戦はありです。

 

鎮痛剤については、下記の記事を参照してください。

2018.3.22「☆イブプロフェンによる妊娠初期の胎児卵巣への影響

2017.6.5「妊娠中の鎮痛剤と赤ちゃんの停留精巣の関係は?

2017.1.12「☆妊娠前の鎮痛剤使用と妊娠成立の関係

2015.7.8「市販の鎮痛剤(NSAIDs)の影響

2013.12.18「☆着床にはやはり炎症が必要」

2013.11.12「☆☆着床率を上げる方法(NSAIDsとCOX)」
2013.11.10「☆鎮痛剤を飲んでよい時期と種類は?

2013.11.6「☆アスピリンを飲むのが心配です」

2013.11.5「☆NSAIDsは着床を妨害するのか?」

2013.11.3「☆NSAIDsとCOXとは? 基礎編」

 

妊娠治療による癌のリスクについては、下記の記事を参照してください。

2021.12.21「ART治療と乳癌リスク

2021.10.5「☆ピルによる癌のリスクは?

2021.8.3「☆卵巣刺激で乳癌リスクは増加しない

2021.4.18「☆妊娠治療と癌のリスク

2020.1.21「☆乳癌既往のART妊娠による乳癌再発リスクはない

2019.12.30「卵巣刺激によるART治療と卵巣癌のリスク

2016.12.3「☆☆妊娠治療に用いる薬剤と癌について:ASRMガイドライン

2015.8.7「体外受精による出産後の母体の癌のリスク
2015.1.28「妊娠治療薬と境界悪性卵巣腫瘍の関係」
2014.2.25「☆卵巣刺激(排卵誘発)と卵巣癌のリスク」
2013.11.29「☆不妊治療薬で子宮体癌は増加しません」
2013.7.12「☆不妊治療薬と卵巣癌の関係」
2013.4.28「不妊症の方は癌になりやすいか その2」
2013.4.23「不妊症の方は癌になりやすいか その1」

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。