2013.4.23「不妊症の方は癌になりやすいか その1」では、フィンランドのデータから、不妊症(治療)と癌の関連はほとんどないことを紹介しました。本論文は、イスラエルからのもので、不妊症(治療)と癌にはほとんど関連がないことを示しています。
Fertil Steril 2013; 99: 1189(イスラエル)
要約:1994年以降に不妊施設で登録された87,403名(不妊治療あり67,608名、不妊治療なし19,795名)の方のうち、2011年の段階で癌になった方がどの程度いるか調査したところ、乳癌522名、子宮体癌41名、卵巣癌45名、子宮頚癌(0期)311名、子宮頚癌(1~4期)32名でした。不妊治療の有無で乳癌、子宮体癌、卵巣癌、子宮頚癌(1~4期)のリスクは変わりませんでした。しかし、子宮頚癌(0期)のリスクは、不妊治療を行った方より不妊治療を行っていない方で有意に高くなっていました。
解説:本論文の結果も前回のフィンランドのデータと同様に、不妊症(治療)と癌の関連は否定的というものです。子宮頚癌については、不妊治療群でリスクが少ないというのも同様です。子宮頚癌は癌検診でみつかる確率の高い癌のひとつです。つまり、早期発見が可能ですので、0期の癌が多くなります。0期の子宮頚癌は上皮内癌と言い、癌という名前がついていながら癌保険で必ずしも全額カバーされないという癌です。また、パピローマウイルスが原因の癌でもあり、性感染症との位置づけもできます。このような背景から、子宮頚癌(0期)のリスクはむしろ不妊治療をしていない方に多くなっていると考えられます。
2013.2.24「体外受精が保険で無制限に治療できたらどうなるか」で紹介したように、イスラエルでは、2人の子どもを授かるまで、かつ45歳までは体外受精が保険で受けられる国です。その他の保険制度もしっかりしていて、HMO(健康維持機関)が全ての医療のデータを所有しています。つまり、国全体として体外受精のデータベースと疾患のデータベースが同一のアクセス可能な状態にあります。本論文のデータはイスラエルのHMOの約25%をカバーするMHS加入者のデータを用いています。
また、HMO の調査によると、全体の87%の方は3人目4人目の子どもを授かるまでに利用できる保険にも加入しているということです。