☆慢性子宮内膜炎の診断に子宮鏡が有効か? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、慢性子宮内膜炎(CE)の診断に子宮鏡が有効か否かを検討したものです。

 

Fertil Steril 2019; 111: 772(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.12.007

Fertil Steril 2019; 111: 679(スペイン)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.12.022

要約:2016〜2017年に、子宮鏡+内膜細胞CD138染色を同時に実施した方1189名(平均32.9歳)を対象に、慢性子宮内膜炎の診断精度を後方視的に検討しました。CD138細胞免疫染色による慢性子宮内膜炎は27.1%(322名)に認められました。一方、子宮鏡では38.2%(454名)に異常所見が認められ、内訳は充血34.7%(412名)、浮腫3.5%(42名)、マイクロポリープ2.1%(25名)でした(重複あり)。CD138細胞による慢性子宮内膜炎は、充血のみられた方の39.5%、浮腫のみられた方の51.9%、マイクロポリープのみられた方の53.5%、2個以上の異常所見のみられた方の64.0%に認められました。子宮鏡による慢性子宮内膜炎の診断は、感度59.3%、特異度69.7%、陽性的中率42.1%、陰性的中率82.8%、診断精度66.9%となりました。

 

解説:慢性子宮内膜炎(CE)の診断のゴルドスタンダードは、CD138細胞免疫染色です。かつて、子宮鏡検査でマイクロポリープが認められると慢性子宮内膜炎であるとされていたようですが、その後の検討により否定されています。本論文は、慢性子宮内膜炎の診断に子宮鏡が有効か否かを後方視的に検討したものであり、診断精度が67%ではCD138細胞の代用にはならない(つまり、子宮鏡を用いてはならない)としています。

 

コメントでは、検査センター(ラボ)により使用薬剤や染色方法などに違いがあるため、CD138細胞免疫染色の推奨されるべき方法を決める必要があるとしています。また、子宮内フローラおよび起因菌については今後の検討課題であり、現状では判断(診断)できるような情報は得られていません。

 

下記の記事を参照してください。

2018.8.10「☆慢性子宮内膜炎治療の有用性について:メタアナリシス

2018.1.7「原因不明不妊症の方へ慢性子宮内膜炎検査は?

2017.10.31「☆慢性子宮内膜炎の治療戦略:前方視的検討

2016.5.27「慢性子宮内膜炎と全身の炎症は無関係

2016.4.17「☆正常胚が着床しないのは何故? その2

2016.1.22「慢性子宮内膜炎と反復流産の関係

2015.10.18「慢性子宮内膜炎と反復流産の関係」
2015.5.21「☆慢性子宮内膜炎と異常子宮収縮の関連」
2014.12.8「☆慢性子宮内膜炎と着床障害」