☆慢性子宮内膜炎治療の有用性について:メタアナリシス | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、胚移植反復不成功における慢性子宮内膜炎(CE)治療の有用性について、メタアナリシスにより検討したものです。

 

Fertil Steril 2018; 110: 103(イタリア)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.03.017

要約:胚移植反復不成功(2回以上不成功)における慢性子宮内膜炎(CE)治療と妊娠成績についてのメタアナリシスを行ったところ、該当論文は5編796名(米国、中国、イタリア、アルゼンチン、日本)ありました。抗生剤治療後に慢性子宮内膜炎が消失した場合には、消失しなかった場合と比べ、妊娠継続率が6.81倍、臨床妊娠率が4.02倍、着床率が3.24倍に有意に高くなっていました。しかし、抗生剤治療後に慢性子宮内膜炎が消失したか否かを確認せずに胚移植を行った群は無治療群に対して妊娠成績の改善は認めませんでした。また、慢性子宮内膜炎治療後消失群と慢性子宮内膜炎の無い群の妊娠成績には有意差を認めませんでした。なお、全ての群で流産率には有意差を認めませんでした。

 

解説:本論文は、胚移植反復不成功における慢性子宮内膜炎(CE)治療の有用性について、メタアナリシスにより検討した初めての報告です。なお、該当論文のうち1編はチームリプロからのものです(2017.10.31「☆慢性子宮内膜炎の治療戦略:前方視的検討」の記事でご紹介すみ)。慢性子宮内膜炎(CE)については未だ不明な部分が多いですが、本論文から得られる重要なポイントは下記です。

1 慢性子宮内膜炎が治ったかどうかの確認が重要→治療後の再検査が必須

2 慢性子宮内膜炎の有無は流産とは無関係不育症の方に実施するメリットはない

3 胚移植反復不成功のデータしかない→タイミングや人工授精などの一般妊娠治療で実施すべきかは不明