慢性子宮内膜炎と全身の炎症は無関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、慢性子宮内膜炎(CE)と全身の炎症や自己免疫異常には関連がないことを示しています。

Am J Reprod Immunol 2016; 75: 672(米国)
要約:2014~2015年に反復流産あるいは反復体外受精不成功の方55名を対象に、慢性子宮内膜炎検査、全身の炎症検査、自己免疫検査を行い、その相関関係を後方視的に検討しました。なお、慢性子宮内膜炎は子宮内膜のCD138細胞の免疫染色により診断し、全身の炎症はアディポネクチン、CRP、レプチン、IL6を、自己免疫は免疫グロブリン濃度、抗核抗体、甲状腺抗体、抗リン脂質抗体を検査しました。反復流産あるいは反復体外受精不成功では、慢性子宮内膜炎が45.5%、全身の炎症が32.7%、自己免疫異常が61.8%に認められました。しかし、慢性子宮内膜炎の有無により、全身の炎症や自己免疫異常の頻度には有意差を認めませんでした。

解説:慢性子宮内膜炎(CE)は、着床(反復体外受精不成功)のみならず、不育症(反復流産)の方に認められるとの報告があります。この原因が感染である場合には抗生剤服用で治療が可能ですが、抗生剤が効かない方がおられるのも事実です。このような方は原因不明となりますが、慢性子宮内膜炎の原因として、感染の他に自己免疫や全身の炎症が関与するのではないかと考えられています。本論文の研究は、このような背景のもとに行われました。本論文は、慢性子宮内膜炎と全身の炎症や自己免疫異常には関連がないことを示しています。