慢性子宮内膜炎と反復流産の関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、慢性子宮内膜炎と反復流産の関係を示しています。

Fertil Steril 2016; 105: 106(カナダ)
要約:2012~2015年に反復体外受精不成功の方46名と反復流産の方53名を対象に、子宮鏡検査と子宮内膜検査を行い、子宮内膜のCD138免疫染色により慢性子宮内膜炎の診断を行いました。採取した組織不十分のため5名は慢性子宮内膜炎の有無の判断ができませんでした。慢性子宮内膜炎は、反復体外受精不成功で14%(6/43)、反復流産で27%(14/51)に認められました。また、子宮鏡検査による慢性子宮内膜炎の診断率は40%(8/20)でした。

解説:慢性子宮内膜炎(CE)は、持続する子宮内の炎症であり、通常は無症状です。子宮内膜のCD138免疫染色(形質細胞)によりCEの診断がつきます。CEの原因となる細菌として多い順に、大腸菌、エンテロコッカス、連鎖球菌、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、クラミジアが示されています。子宮鏡検査によるCEの所見として、粘膜の浮腫、うっ血、マイクロポリープ(<1mm)があり「いちご状」に見えます。しかし、本論文は、子宮鏡検査によるCEの診断率はわずか40%しかないことを示しています。つまり、子宮鏡検査だけではCEの判断はできません

CEは着床障害の原因(子宮内膜受容能の低下)として知られていますが、近年、反復流産との「関連が示唆されています。本論文は、反復体外受精不成功の方(14%)よりも反復流産の方(27%)でCE頻度が高いことを示しています。つまり、着床障害のみならず、不育症の方もCE検査の必要性があることを示唆しています。

下記の記事を参照してください。
2015.10.18「慢性子宮内膜炎と反復流産の関係」
2015.5.21「☆慢性子宮内膜炎と異常子宮収縮の関連」
2014.12.8「☆慢性子宮内膜炎と着床障害」