Q&A977 受精率低下、PGS正常胚率低下 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 41才、治療歴4年、Aクリニックにて着床前診断実施中(夫婦とも染色体の検査は異常なし)
年齢のこともあり、胚盤胞まで育っても、なかなか正常胚が見つからず、採卵を繰り返していますが、受精率の悪さにも悩んでおります。すでに採卵は10数回行い、移植は2回のみです。行き詰まり、治療をやめるか、最後の望みをかけて転院するかを迷っております。
着床前診断未の胚盤胞移植で1回陰性。着床前診断正常胚盤胞移植で妊娠、hCGは上がるも胎嚢は見えず、子宮外妊娠を疑われMTX注射を2回。
初回の体外受精で5個中1つも受精しなかった為、以後は顕微授精をしておりますが、顕微授精でも受精率は大体半分か悪いときには8割受精しません。先月はクロミッドと隔日のHMG注射にて7個採卵できたうち成熟卵は6個、うち5個は受精しませんでした。残り1個も初期胚にて分割停止しました。卵子活性化法(カルシウムイオノフォアなど)というものがあると聞き質問しましたが、あまり効果はないためAクリニックでは行っていないとのことでした。先生の以前のブログにカルシウムイオノフォアのことを書かれていましたが、貴院では行われていますか。
仮に受精率がよくなったとしても染色体異常率がここまで高いと結局は意味がないのかなとも思うのですが、このような状態での効果はあると思われますか。
また、貴院に転院させて頂く場合、検査などは最初から全てやりなおしになるのでしょうか。
なお、精子の状態にはムラがあり、悪いときは精子数は3桁後半で運動率は20~30%、いい時で精子数は2000代で運動率は40~50%です。
私の方には年令以外は特に大きな原因は指摘されておりません。内膜がいつも薄く、線筋症の可能性は言われています。AMHは年令相当だと言われています。

A 当院のデータでは、カルシウムイオノフォアは、顕微授精を行ってもなお受精率が低下している場合や、非運動の精巣精子を用いた顕微授精の場合に有効な方がおられますので、ひとつのオプションだと思います。

PGSが行われるようになると、このようなケースが増えるものと考えます。つまり、染色体異常の胚が多いため、移植できる胚が少なくなります。しかし、受精率が改善すれば、母集団が増えるため、移植できる胚も増加すると思います。

他院で実施した検査をお持ちいただければ、使えるものは使います。ただし、感染症や術前検査は過去1年以内のもののみを有効としています。

また、一度、男性外来の受診をお勧めいたします。