5000年も前につくられたピラミッドは,数学的には,極めて正確な四角錐の形をしているそうです。また,当時は,ナイル川が氾濫するたびに土地を区画整理する必要があり,そのために土地の上に正方形を描く必要があったのだそうです。古代エジプトには,「縄張り師」と呼ばれるプロの測量技師みたいな人がいて,等間隔に結び目がついた縄を使って直角をつくる方法を知っていたといいます。
5000年も前のエジプト人がこのような知識を知っていて,その知識が文化遺産としていまの数学に結びついているというのは,驚きです。縄張り師の話は,このような文化遺産としての数学の価値を教えるのに役立つ話題だと思います。
ところで,
3^2+4^2
=3×3+4×4
=9+16
=25
=5^2
∴3^2+4^2=5^2(3の2乗と4の2乗の和が5の2乗)
※ 「○^2」は「○の2乗」を表します。
つまり,(3,4,5)という3つの数の組み合わせは,ピタゴラスの定理の関係式にあてはまっています。
このようにa^2+b^2=c^2にあてはまる正の整数の組をピタゴラス数といいます。ピタゴラス数の例としては,他にも(5,12,13),(8,15,17),(7,24,25),(20,21,29),(12,35,37),(9,40,41)などが知られています。
ピタゴラス数は,m,nを正の整数(自然数)とし,m>nとするとき,次の式を利用して求めることができます。
a=m^2-n^2 , b=2mn , c=m^2+n^2
例えば,m=5,n=2とすると,先程例に挙げた(20,21,29)が見つかります。
a=5^2-2^2
=25-4
=21
b=2×5×2
=20
c=5^2+2^2
=25+4
=29
縄張り師たちは,3:4:5の辺の比になる三角形の5の辺に向かい合う角が直角になることを経験的に知っていたのでしょう。
ところで,辺の長さがa,b,cの三角形△ABCで,a^2+b^2=c^2の関係が成り立つとき,長さcの辺に向かい合う角が直角になること(ピタゴラスの定理の逆)を示す証明は,「同一法(どういつほう)」と呼ばれ,中学生(大人でも)にはややわかりにくい(納得しにくい)証明法が使われます。何となくだまされたような感じを抱いてしまう「間接証明法」といわれる証明法です。
三平方の定理逆
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今日の板書は,この「同一法」に関するものです。生徒が自力で証明ができることは目標にする必要がないそうなので,いままでに学習してきた「直接証明法」とは異なる証明法があることを理解させつつ,生徒のノートと教師の板書が同時進行するような形で空欄を埋めさせながら証明を完成させるような授業を行うとよいと思います。
「△ABCで,BC=a,CA=b,AB=cとすると,a^2+b^2=c^2
ならば,∠C=90°」
<仮定>a^2+b^2=c^2
<結論>∠C=90°
<証明>
∠C’=90°,B’C’=a,C’A’=bである直角三角形をかく。
A’B’=χとして,三平方の定理を使うと,
a^2+b^2=( )・・・①
また,仮定から,
a^2+b^2=( )・・・②
①,②から,χ^2=c^2
χ>0,c>0であるから,χ=( )
よって,△ABCと△A’B’C’で,( )がそれぞれ等しいので,
△ABC≡△A’B’C’
したがって,∠C=∠C’=( )
空欄は,順に
χ^2,c^2,c,3辺,90°
辺の長さがa,b,cで,その長さの間にa^2+b^2=c^2の関係が成り立つ三角形△ABCとは別に,直角をはさむ2辺の長さがa,b,斜辺がχであるような直角三角形△A’B’C’を準備し,両者が合同になる(同一のものと見なせる)ことを示し,もとの三角形△ABCの長さa,bの辺にはさまれた角は直角であることを導きます。
つまり,この「同一法」という証明法は,仮定から結論を導くのに,結論に合う三角形をつくっておいて,これが仮定で示している三角形と一致することを示すことによって結論を導くというものだったわけです。