「火祭り」('06)
イランの名匠アスガー・ファルハディの監督第3作で、家政婦の目を通して1組の夫婦の波乱の一日を描いたドラマ映画です。主演はハミッド・ファロクネジャード、ヘディエ・テヘラニ、タラネ・アリドゥスティ、共演はパンテア・バハラム、サハル・ドラチャヒ他。
「結婚って…」と考えさせる映画なのですが、それ以上に、激しすぎる夫婦喧嘩に巻き込まれた若い家政婦が気の毒で、彼女が巻き添えで不幸な目に遭うんじゃないかと心配でハラハラしちゃうという意味では確かにサスペンスフルな映画でした。
「美しい都市」('04)
イランの名匠アスガー・ファルハディの監督第2作で、死刑執行が迫った親友の命を救うべく、同じ少年院の仲間の少年が必死で奔走するさまを描いたドラマ映画です。主演はバーバック・アンサーリ、共演はタラネ・アリドゥスティ、ホセイン・ファージ・ザーデー、ファラマルズ・ガリビアン、アフー・ケラドマンド他。
イランの死刑制度の問題点を扱った映画はこれまでにもいくつか観てきましたが、それらとはちょっと違う点を中心に描かれていて興味深く観ることができました。
死刑を執行するにあたり、死刑を望む被害者遺族が死刑囚の遺される家族に対して金銭を支払う必要があるというのはビックリ (@o@)
確かにイスラム教も「赦し」を重視している宗教ではありますが、イスラム教国では比較的簡単に死刑が宣告されるイメージがあるのでかなり意外。
ただ、そういった制度のない世界で生まれ育った人間としては、罪の償いを含め、人命が金銭で左右されてしまうように見える世界の話はただただ不気味で、何か異世界ファンタジーを観ているような気分にさせられました。
「砂塵にさまよう」('03)
イランの名匠アスガー・ファルハディの映画監督デビュー作で、愛する妻との離婚を迫られて苦悩する青年の悪戦苦闘を切なくもコミカルに描いたドラマ映画です。主演はユーセフ・ゴダパラスト、共演はバラン・コーサリ、ファラマルズ・ガリビアン他。
アスガー・ファルハディ監督の最近の作品は全て観ていますが、初監督作品がこんなコミカルな作品だったのは意外。最終的には切ない話でしたけど。
ただ、主人公をとことん「幼稚な愚者」として描き、そのわかりやすい「言動の可笑しさ」だけで笑わせようとするスタイルが、当時のイランでは良かったのかもしれませんが、少なくとも今の自分の感覚からすると不快でしかなく、しかも主演俳優の演技が下手すぎて、視聴自体がただただ苦痛…。
もう1人の主人公とも言える、毒蛇を捕まえる仕事をしている寡黙な初老男性のキャラクターが実に魅力的で、こっちを主人公にした方が(コメディにはなりませんが)物語としては遥かに面白くなったはずなのに、何故そうしなかったのか、本当に残念でなりません。
「CHASE/チェイス 猛追」('22)
実家に帰る途中で失踪した妻を必死に捜そうとする夫の暴走を描いたアクションサスペンスです。主演はジェラルド・バトラー、共演はジェイミー・アレクサンダー、ラッセル・ホーンズビー、イーサン・エンブリー他。
ジェラルド・バトラーは出ずっぱりなので、彼のファンならそれなりに楽しめるかもしれませんが、多くの人が「ジェラルド・バトラー主演のアクションサスペンス」に期待するものとはかけ離れた駄作![]()
最初から主人公を「わけあり」に描き、警察も妻の両親も主人公を怪しみ、実際に主人公の言動も常軌を逸しているので、「どんな秘密が主人公にあるんだろう?」と思わせ続けておきながら、この結末![]()
観る者をバカにするにもほどがあるというもの。
「ネイビーシールズ ローグ・ネイション」('21)
特殊部隊とテロリストたちの死闘を、いわゆる「ワンカット」で描いたミリタリーアクションです。主演はスコット・アドキンス、共演はアシュリー・グリーン・クーリー、ライアン・フィリップ、ワリード・エルガディ他。
→ Wikipedia「ネイビーシールズ ローグ・ネイション」
ストーリーはないに等しく、ただのシューティングゲームでしかないし、アクション自体も特に目新しいものはないのですが、とにかく「ワンカット」で撮った、その映像だけで充分に楽しめました (^^)v
厳密に言えば、一旦カメラを止めていることがわかってしまう場面が1箇所だけ中盤にあるのですが、それでも一応最初から最後まで「ワンカット」に見えますし、これだけのアクションの連続を「ワンカット」で撮る以上、相当に念入りなリハーサルを繰り返さなければ無理。その労力を考えるだけで、ある種の「感動」を覚えてしまいます。
ところで、最近はすっかり「アクションスター」となったライアン・フィリップが脇役で出演していて、てっきり「最後の最後に美味しいところをごっそり持っていくキャラ」かと思ったら、そうではなかったのはちょっと意外。出番も見せ場もそれなりにあり、目立つ印象的な役でしたけど、ライアン・フィリップである必要性はあまりなかったかな (^^;;;
「リーサル・バレット」('22)
ノリエガ将軍の独裁体制下、陰謀渦巻く1989年の中米パナマを舞台に、CIAの密命を受けて秘密工作活動に励む元海兵隊員の運命を描いた政治サスペンスです。主演はコール・ハウザー、共演はメル・ギブソン、マウリシオ・エナオ、ケイト・カッツマン、チャーリー・ウェバー他。
観る前からある程度予想はしていましたが、その予想をはるかに下回る酷い出来 (^^;;;
いくら1989年が舞台とは言え、登場人物たちのキャラクター造形にしろ、ストーリーにしろ、古臭いったりゃありゃしない。しかも単純に面白くない。
主演のコール・ハウザーが製作総指揮の1人に名を連ねていることからして、彼が子供のころにでも観たB級アクション映画を自分の主演で再現したかっただけなのかもしれないけれど、それにして何故この脚本、この出来で公開できたのか謎。
メル・ギブソンも最近はこの手のB級どころか、C級にも満たない酷い映画にばかり出ているけれど、かつての大スターとして、もうちょっと仕事は選んで欲しいなぁ…。
「ミセス・ハリス、パリへ行く」('22)
ポール・ギャリコの同名ベストセラーを原作とし、夫の戦死で失意の中にあったロンドンの家政婦が、ディオールのドレスに魅了されたことで、パリのディオール本店に向かって旅立つ姿を描いたドラマコメディ映画です。主演はレスリー・マンヴィル、共演はイザベル・ユペール、ランベール・ウィルソン、アルバ・バチスタ、リュカ・ブラヴォー、エレン・トーマス、ローズ・ウイリアムズ、ジェイソン・アイザックス他。
大人向けの童話。
大人向けなのでビターなところはあるけれど。
ディオールの宣伝映画みたいで現実味はないですが、こんなことがあったら素敵だよねと思える映画ではありました (^^)
それにしても、観る前は意地悪で傲慢な貴婦人役のイメージがあるレスリー・マンヴィルが、誰からも愛される、下町の気のいい家政婦を演じることに違和感がありましたが、観ていくうちに違和感はなくなったのは![]()
そして役に対してジェイソン・アイザックスが無駄にイケメンだったのも、ラストシーンでその配役の意味に納得 (^^)v
「ヴイナス戦記」('89)
人類が移民できるようになった未来の金星を舞台にした安彦良和さんの同名漫画を安彦さんが自ら監督して映像化したSFアニメーション映画です。声の出演は植草克秀さん、水谷優子さん、原えりこさん、佐々木優子さん、納谷悟朗さん、大塚芳忠さん他。
あぁ、なるほど…。
公開当時、あまりにヒットしなかったので、安彦良和さんがアニメーションから手を引き、漫画家に専念するきっかけとなり、しかも「封印」とまでは言わないまでも、長年にわたって気軽に観られる状態でなかったという曰く付きの作品。
そうなったのも大いに納得。
単純に話が致命的に面白くない。
この話でどうして制作にGOサインが出たのか謎。
しかも、主人公をはじめとする主要な登場人物に全く魅力がない。
確かに安彦さんの作品らしく、純粋に「アニメーション」としては素晴らしく、当時の手描きアニメとしては驚異的なレベルで「よく動く」。その技術力は見事としか言いようがありません。が、本当にそれだけ。
さらに21世紀の今の時代からすると、世界観の構築が雑だし、イマジネーションが貧困すぎて「古臭い」というレベルでは済ませられない酷さ。
とにかく、映像部分以外に観るべきところが全くないので、観る人はその前提で観るべきでしょう。
「犬王」('22)
古川日出男さんの小説「平家物語 犬王の巻」を原作とし、室町時代に実在した天才能楽師「犬王」をポップスターとして描いた、湯浅政明監督による歴史アニメーション映画です。声の出演はアヴちゃん、森山未來さん、柄本佑さん、津田健次郎さん、松重豊さん他。
ストーリーは大して面白くない。
重要なはずの要素を最終的に中途半端なまま放置してしまうなど、まとまりを欠いていて、「物語」の体裁をなしていませんから。
でも、そんなことなど、どうでもいいのです。
とにかく、ビジュアルのインパクトだけで充分過ぎるほど楽しめるのですから。
漫画家の松本大洋さんの原案によるキャラクターデザインは、はっきり言ってしまうと全く好みではないし、むしろ嫌い。
でも、その一見ラフなようでいて極めて繊細な線を、いわゆるアニメ的な線に変えることなく、そのまま動かしているのには、ただただ感服。
また、淡い色彩で統一され、まさに手書きの水彩画がそのまま動いているような繊細な映像には目が釘付け。
贅沢を言えば、この物語をミュージカルで表現するにしても、ロックやバレエのような西洋のものを流用するのではなく、もっと東洋的な工夫をしてほしかったなとは思いますけどね。
「クーリエ 過去を運ぶ男」('12)
生死も行方も分からない人物に荷物を送り届ける任務を請け負ったプロの運び屋を描いたアクションサスペンス映画です。主演はジェフリー・ディーン・モーガン、共演はジョシー・ホー、ティル・シュヴァイガー、リリ・テイラー、ミッキー・ローク他。
こんな筋の通っていない脚本でどうしてGOサインが出たのか、
そして、この出来でどうして公開OKになったのか、
そもそも、この脚本でどうしてジェフリー・ディーン・モーガンやミッキー・ロークといった有名俳優が出演をOKしたのか、
とにかく、全てが謎。
主人公が記憶をなくしていて、それが事件と深く関わっているというネタ自体は、新鮮味はないけれど悪くはない。
が、主人公を付け狙う殺し屋にしろ、中途半端な立ち位置のFBI捜査官にしろ、そしてラスボスにしろ、言動が支離滅裂だし、ご都合主義にしてもあまりに不自然で頭の中が「???」でいっぱいに。
「ジェフリー・ディーン・モーガンがカッコイイ」という以外、何もない映画でした。