「ドライビング・バニー」('21)
妹夫婦の家に居候しながら肩身の狭い日々を送る40歳のシングルマザーが、離れて暮らす幼い娘に会いたい一心から悪戦苦闘するさまを描いたドラマ映画です。主演はエッシー・デイヴィス、共演はトーマシン・マッケンジー、エロール・シャンド、トニ・ポッター、アメリー・ベインズ他。
主人公には同情すべきところが山のようにあり、確かに切ない話ではあります。
でも、冷たいことを言うようですが、冷静に考えれば、どう考えても、この主人公は「子供を養育するという意味での親」の資格は全くないです。
本人も認めているように怒りの感情を全く抑えることができない上に、その時の感情だけで、その場しのぎの適当な約束をしたり、嘘をついたりする…。
彼女は完全に精神的に病んでいる状態であり、そんな彼女に適切な治療を施すことなく、ただ罪を償わせるために服役させて、決められた期間の後に、そのまま社会に放り出すというのは、それ自体が社会の、もっと言えば政治の怠慢でしょう。
とにかく、観ていて感情の持って行きどころのない映画でしたが、エンディングに救いがあったのだけはよかったです…。
「魂のまなざし」('20)
北欧フィンランドの国民的画家ヘレン・シャルフベックの後半生を、当時50代の彼女が19歳年下の崇拝者の青年と織り成す悲恋を中心に描いた伝記映画です。主演はラウラ・ビルン、共演はヨハンネス・ホロパイネン、クリスタ・コソネン、ヤルッコ・ラフティ他。
切ない話だったなぁ…。
ヘレン・シャルフベックの80年以上の生涯のうち、ほんのわずか数年の出来事しか描いていないにもかかわらず、それでも、彼女がそれまでにどんな人生を歩んできたのか、そしてその後どんな人生を歩んだのかが、うっすらと透けて見えてくるのが![]()
女性差別が根強く残っていた時代に生きた彼女が、もしそんな差別がなければ、もっと自由に画家としての才能を活かし切れたであろうことを思うと、本当に切ない気持ちになります。また、19歳の年齢差も、男女逆であれば、ここまで苦しい恋にはならなかったかもしれません。いずれにせよ、この恋を経験したことが、のちの作品に大いに活かされたであろうことは間違いなく、それもまた芸術家という仕事の因果の妙を感じます。
ところで、当時50代だったヘレン・シャルフベックを演じたラウラ・ビルンは1981年生まれで、撮影時はまだ30代だったはず。さすがに老けメイクでも50代には見えませんでしたが、生活、というよりも人生に疲れている感じはなかなか![]()
一方、ヘレン・シャルフベックが想いを寄せるエイナル・ロイターを演じたヨハンネス・ホロパイネンは、確かにハンサムではあるのだけれど、20世紀初頭の人物に全く見えず、コスプレ感が強かったのはちょっと残念。
![[エイナル・ロイターの写真]](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a2/Einar_Reuter.jpg)
![[エイナル・ロイターを演じているヨハンネス・ホロパイネンの写真]](https://stat.ameba.jp/user_images/20230724/22/marc613/e8/ef/p/o0210033415316537657.png?caw=800)
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」4部作('07-'21)
人気アニメシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」を、新時代を開拓するための最新作として描き直した「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」全4部作です。声の出演は緒方恵美さん、林原めぐみさん、三石琴乃さん、山口由里子さん、立木文彦さん、清川元夢さん他。
「エヴァはやっぱりエヴァだなぁ」という感想。
思い入れはないし、テレビシリーズとこの4部作しか観ていない自分が言うのもの難ですが、感想は同じ。
「10代の時に観ていたらハマっただろうなぁ」ということ。
内容は理解できるし、熱心なファンが大勢いることも大いに納得できるけれど、自分自身がハマるまでには至らず。しかし「面白くはないが興味深くは観ることができる」映画でした。
とにかく、こういう「極めて個人的な小さな精神世界の話を壮大なSFとして描くスタイル」がもう素直には受け止められないのですが、そういう物語の構成には興味があるのです。
そして、テレビシリーズと比べると、「永遠の少年」だった庵野秀明監督が「ようやく大人になったんだなぁ」という気分にはなりました (^^)
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「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」('22)
48歳で早逝した世界的歌姫ホイットニー・ヒューストンの生涯を描いた音楽伝記映画です。主演はナオミ・アッキー、共演はスタンリー・トゥッチ、アシュトン・サンダーズ、タマラ・チュニー、ナフェッサ・ウィリアムズ他。
→ Wikipedia「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」
歴史に残る偉大な歌手の生涯を描くという意味では充分な出来だと思います。彼女の全盛期を知らない今の若い人やこれからの世代に向けた一種の「記録」としての価値もありますし、何と言っても彼女のヒット曲の数々を聴くことができますから。
ただ、彼女の晩年はあまりに悲惨ですし、その死も全く救いがなく、さらに、この映画では触れられていませんが、唯一の子である娘も数年後に22歳の若さで母親と同じような形で亡くなっていることを知っていると、この映画を観終わった後はただただ悲しい気持ちに…。
それにしても、タイトルとして何故「I Wanna Dance with Somebody」が選ばれたんでしょう?
ミュージシャンの伝記映画のタイトルにヒット曲のタイトルを使うのは普通ですが、このタイトルは内容に全然合っていないわけではないですし、何となく意図はわからないではないものの、イマイチしっくり来ないんですよね…。かと言って代案があるわけではないんですけど (^^;;;
「沈黙のパレード」('22)
東野圭吾さんのガリレオシリーズ第9弾(長編5作目)を映画化した作品です。主演は福山雅治さん、共演は柴咲コウさん、北村一輝さん、村上淳さん、吉田羊さん、檀れいさん、椎名桔平さん他。
原作は未読なので、偉そうなことは言えませんが、文字で読んだら印象が違うのかもという感じ。
とにかく、自分でも驚くほど、心が動かなかったのです。
もちろん、序盤で描かれる、被害者遺族の苦しみや悲しみ、そして事件を解決できなかった刑事の後悔や罪悪感は胸に迫るものがあり、これからどんな展開を見せるのだろうと大いに期待は高まったのです。ところが、その後は「あれっ? なんでこんなにあっさりさっぱりしてるの?」という違和感でいっぱいになり、急激に冷めていってしまったのです。最後に明らかになる事件の真相も、筋は通っているけれども釈然としないものがありましたし。確かに、誰もが予想する「復讐劇」にしないことで、絶望的に救いのない結末にならなかったのは良かったのかもしれませんが…。
ちょっと期待値が高過ぎたのかもしれません。
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「亡国のスパイ〜かくも親密な裏切り〜」('22)
冷戦時代に起きた史上最悪の二重スパイ事件を描いたサスペンスドラマ全6話です。主演はガイ・ピアース、ダミアン・ルイス、共演はアンナ・マックスウェル・マーティン、エイドリアン・エドモンドソン、カレル・ローデン他。
荒唐無稽なスパイアクション映画のノリではなく、リアルなスパイを描いた作品であることは当然わかっていましたが、それでも序盤は戸惑うばかりでした。
物語としての着地点が曖昧で、謎解き風な展開を見せながらも、そもそもの謎自体が何なのかも曖昧でよくわからなかったからです。
でも、終盤になってようやくわかりました。
これは実際にあった二重スパイ事件を題材にしていますが、ドラマとして描きたいのは事件そのものではなく、そこに関わった男たちの姿を通じて、階級社会における超エリート男性たちの傲慢さやそのコミュニティの異常な結びつきの強さ(≒悪事のかばいあい)を指摘し、批判すること。
だからこそ、主人公たちの対比となる架空の人物として、主人公を尋問する女性を登場させているわけです。この着眼点と脚色には大いに納得ですし、エピローグも![]()
とにかく、いわゆる「スパイもの」と思って観ると、かなり肩透かしを喰らっちゃうと思います。
「シン・仮面ライダー」('23)
「仮面ライダー」シリーズの庵野秀明監督によるリブート作品です。主演は池松壮亮さん、共演は浜辺美波さん、柄本佑さん、塚本晋也さん、斎藤工さん、竹野内豊さん、森山未來さん他。
好みの内容ではなかったけれど、最初から最後まで「興味深く」観ることができました。
池松壮亮さん、柄本佑さん、森山未來さんという「ヒーローアクションもの」とは無縁なイメージの役者を揃え、その個性をうまく活かしているとか、
21世紀の今の時代に初代の「仮面ライダー」をリブートする意味とか、
かつて「仮面ライダー」を愛した今の大人たち向けの味付けだとか、
とにかく、庵野秀明監督の描きたいことや見せたいことの全てを理解できたわけではありませんが、伝わるものは確かにありました。
ただ、あまりに好みから離れていたので「面白くはなかった」ですけどね (^^;;;
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「ドリーム・ホース」('20)
実話をもとに、イギリス・ウェールズの小さな村で暮らす平凡な主婦が村人たちに出資を募って馬主組合を結成し、そこで育てた競走馬が数々の奇跡を巻き起こしていくさまを描いたドラマ映画です。主演はトニ・コレット、共演はダミアン・ルイス、ジョアンナ・ペイジ、オーウェン・ティール、ニコラス・ファレル他。
「いい話」だとは思います。
でも、主人公たちが何かものすごく頑張ったわけでもなんでもなく、交配して生まれた馬が運良く競走馬として有能だったというだけで、頑張ったのは調教師や騎手だとしか思えないのに、そちらの功績について一切触れないのは、どうしても納得がいかず。
主人公とその夫の夫婦愛を描いた物語と思えば、嫌いじゃない話ですけど。
「L.A.コールドケース」('18)
1990年代に実際に起きた大物ラッパーたちの未解決殺害事件を追ったノンフィクションをもとに、事件の背後に潜む巨大な陰謀を追う2人組の運命を描いたクライムサスペンスです。主演はジョニー・デップ、共演はフォレスト・ウィテカー、ロックモンド・ダンバー、ニール・ブラウン・ジュニア、シェー・ウィガム他。
題材もいいし、キャストも充実しているのに、映画としてはどこにピントを合わせているのかわからず、散漫で中途半端。
おそらく、事件を追い続ける元刑事の「生き様」を描きたかったんだと思うのですが、それならば彼にもっとフォーカスした構成にすべきだし、もっと言えば、ドキュメンタリーにした方がよっぽど面白くなったんじゃないかなぁ。
とにかく「残念な出来」としか言いようのない映画でした。
「向田理髪店」('22)
奥田英朗さんの同名小説を原作とし、過疎化が進む地方の町を舞台に、さまざまな問題に直面しながら懸命に生きる人々が織り成す人間模様を描いた群像劇です。主演は高橋克実さん、共演は白洲迅さん、板尾創路さん、近藤芳正さん、富田靖子さん、根岸季衣さん他。
ものすごくわかりやすい「いい話」。
でも、安易に「昔は良かった」として、その時代のいいところだけを描いて、悪いところや問題点を完全に無視した綺麗事の物語と同様、単なる現実逃避。
この映画は元々そういう意図で作られているので仕方ないことはわかっていますが、それでも、超高齢化した人口減少社会と地方の閉鎖性という、現実に目の前で起きている問題を矮小化してごましているだけなのは、やはりどうしても気になってしまい、全く物語に入り込めませんでした。