「ヒューマン・ボイス」('20)
20世紀を代表する芸術家ジャン・コクトーが、恋人から別れを告げられた女性の心情を電話口での独白を通じて描いた、1930年初演の戯曲「人間の声」を、ペドロ・アルモドバル監督が独自に翻案して映像化した短編映画です。出演はティルダ・スウィントン。
「ティルダ・スウィントンの一人芝居」を堪能するという意味では![]()
でも、この役に彼女が合っているかと言われると微妙。
彼女が個性的な優れた女優であることは確かですが、少なくとも自分が演出家の立場だったらこの役に彼女を起用することはないでしょうね。
「パラレル・マザーズ」('21)
同じ日に母親となった2人の女性がたどる数奇な運命を描いたドラマ映画です。主演はペネロペ・クルス、ミレナ・スミット、共演はイスラエル・エレハルデ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ロッシ・デ・パルマ他。
主人公を含めた3人の母親、そして主人公の既に亡くなっている母と祖母といった母親たちの生き方とともに、スペイン内戦で処刑されて埋められた村人たちの遺骨発掘という2つの物語を一緒に描く意図は何となくわかります。
が、その2つの物語の絡め方があまりにぎこちなくて、観ていてすっきりと腑に落ちないのです。
好みで言えば、この映画よりも遺骨発掘の物語だけに絞った映画の方がはるかに観たいです。
「ブラックアダム」('22)
5000年の眠りから現代に蘇った破壊神ブラックアダムを描いたアクション映画です。主演はドウェイン・ジョンソン、共演はピアース・ブロスナン、オルディス・ホッジ、クインテッサ・スウィンデル、ノア・センティネオ、サラ・シャヒ他。
どんな人種にも見える独特の容姿をしているドウェイン・ジョンソンの個性は活かされているし、映画館の大画面で観るには充分な娯楽映画。
でも、中身は本当にすっかすかだなぁ (^^;;;
そんなことは百も承知の上で作られているんでしょうし、それを言うのは野暮なんでしょうけどね。
ただ、「破壊神」ならば「悪」として描かれるシーンがもっとあっても良かったと思うんですが、あっさり「正義の味方」になっちゃったのはかなり肩透かし。
「Never Goin’ Back ネバー・ゴーイン・バック」('18)
地方で暮らす、貧しいが天真爛漫な2人の少女が、次々と不運に見舞われながらも乗り越えていく青春コメディ映画です。主演はマイア・ミッチェル、カミラ・モローネ、共演はカイル・ムーニー、ジョエル・アレン他。
観る前からある程度は予想していましたが、それを遥かに上回るレベルで自分とは1mmも合わなかった、というよりも、それ以前に生理的にムリ。
主人公を含めた若者たちが、キャラクター造形にしろ、見た目にしろ、画面から匂ってきそうなほど不潔感で溢れ、見ているだけで吐きそうになるほど気持ち悪い。
この映画自体が「田舎者の貧乏人はこんなにアホで下品で不潔なんだぜ」とバカにして笑うために作られたようにしか見えないのも![]()
この若者たちはこれからもロクな人生を歩まないだろうし、数年のうちに犯罪絡みで殺されちゃうだろうなとしか思えませんでした。
「彼女のいない部屋」('21)
ある朝突然、夫と幼い子どもたちを残して家を出て行った女性の心情を描いた実験的ドラマ映画です。主演はヴィッキー・クリープス、共演はアリエ・ワルトアルテ、アンヌ=ソフィ・ボーエン=シャテ、サシャ・アルディリ、ジュリエット・バンヴニスト他。
胸の痛む話でした…。
初めは主人公の情緒不安定な部分が強調されていて「うわぁ…」という嫌悪感しか抱けなかったのですが、すぐに真相が明らかになると、その後はただただ切なく悲しい物語に。
夢や妄想、現実がシームレスに繋がっている上に時系列をシャッフルしているので、とにかくわかりづらいのですが、そのわかりづらさが主人公の現実を受け止めきれない心の混乱をそのまま表していて、その表現の仕方には「なるほど」という気持ちに。
基本的に辛い話で「面白い」映画ではありませんが、こういう表現の仕方は新鮮で、これぞまさに「実験映画」でした。
それにしても、夫役のアリエ・ワルトアルテは、この映画では「ワイルド化したブラッドリー・クーパー」に見えて仕方ありませんでした (^^;;;
他の作品では全く似てないんですけどね (^^)
「エンド・オブ・ハルマゲドン」('22)
堕天使の悪魔ルシファーをDNA操作で復活させようとするカルト集団の陰謀を食い止めようとする大天使ミカエルらの活躍を描いたチェコのホラーファンタジーです。主演はアリス・オア=ユーイング、共演はジョー・ドイル、イヴリン・ホール、ピーター・メンサー、ジョー・アンダーソン他。
地獄のシーンの画面が暗すぎて何が何だか全くわからなかったのは残念だけれど、映像は綺麗。作り手のこだわりもそこにあるんでしょうけど、本当にそれだけ。
ストーリーは雑で意味不明だし、娯楽映画なのに、観客が娯楽映画に期待するものを全くわかっていないテキトーな内容で観終わった後には不満しか残りませんでした。
「3つの鍵」('21)
ローマの高級住宅街の同じアパートに暮らす3つの家族が織り成す多彩な人間模様を描いた群像ドラマです。出演はマルゲリータ・ブイ、リッカルド・スカマルチョ、アルバ・ロルヴァケル、ナンニ・モレッティ、エレナ・リエッティ、アレッサンドロ・スペルドゥーティ他。
群像劇ではありますが、単に3つの物語を並行して描いているだけなので、群像劇の「醍醐味」だと思っている「一見無関係に見える物語が最終的に集約していく心地よさ」が全くないのは残念。
かと言って、3つの短編のオムニバス形式にするほどには、それぞれの話が独立した1本の物語として面白いわけではないし。
とにかく、中途半端。
観終わった後の満足感がないのは致命的。
そして何より、3つの物語それぞれの主人公に魅力がないのが![]()
もちろん理解はできるし、そういう人は確かに存在するので、あり得ないとは全く思わないですし、同情できる部分はあるのですが、好ましく思えるほどのものがないので物語に入り込めなかったんですよね…。
比較的好みの題材だったので期待値が高すぎたのかもしれません。
「ストーリー・オブ・マイ・ワイフ」('21)
ハンガリーの作家ミラン・フストの1942年の小説を原作とし、夫を翻弄する謎めいた妻を夫の視点からサスペンスフルに描いた恋愛映画です。主演はレア・セドゥ、ハイス・ナバー、共演はルイ・ガレル、セルジオ・ルビーニ、ロマーヌ・ボーランジェ他。
21世紀の今の時代の感覚からするとストーリー自体はありきたり。
ラブコメ風のかなりおかしな経緯で結ばれた2人の結婚生活を描き、結末も予想通りで意外性は全くありません。
それでもこの映画が成立しているのは、美しい映像と、何と言っても主演2人のハマりぶり。
レア・セドゥの秘密を抱えた謎めいた雰囲気と溢れ出る色気。
ハイス・ナバーの大柄で無骨な容姿に加えて穏やかで落ち着いた大人の雰囲気でありながら、少年のように澄んだ瞳が表わす脆さ。
主人公2人には理解し難いところが多く、共感もしづらいのですが、主演2人の魅力だけで3時間近い長尺を飽きることなく観ることができました。
「プアン/友だちと呼ばせて」('21)
余命宣告を受けた青年と、彼の頼みで彼の元恋人たちを訪ねる旅の運転手を務めることになった親友の友情を描いた青春映画です。主演はトー・タナポップ、アイス・ナッタラット、共演はプローイ・ホーワン、ヌン・シラパン、ヴィオーレット・ウォーティア他。
「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」('17) で一躍注目を集めたバズ・プーンピリヤ監督が、香港の名匠ウォン・カーウァイの共同製作総指揮で撮った作品。
過去の恋愛を感傷的に、そして親友との友情を美しく描いた青春映画かと思いきや、確かにその要素はありつつも、若さ故の過ちを美化することなく、ビターというよりもかなり辛辣に描いた物語でした。
若くして死を迎えることになった主人公は確かに気の毒なのだけれど、徐々に彼の過去のクズっぷりが明らかになることで物語の意図するところが別にあることがわかってくる展開は![]()
結局のところ、過去の恋愛に対する感傷など所詮は男の自己満足でしかないし、死を前にしてようやく贖罪の行動を取ろうとした主人公に対しては「今さら何て身勝手な!!」としか思えず。
そのため、救いを持たせたエンディングに対しては、「物語」としてはこういう終わらせ方をするしかなかったんだろうなと理解はできるものの、自分の好みとしては「それは安易じゃないかなぁ」と思えてなりませんでした。
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「LAMB/ラム」('21)
アイスランドの人里離れた山間の高原を舞台に、羊が出産した不思議な生き物をわが子として育てるようになった羊飼いの夫婦を描いたサスペンス映画です。主演はノオミ・ラパス、ヒルミル・スナイル・グドゥナソン、共演はビョルン・フリーヌル・ハラルドソン、イングヴァール・E・シーグルソン他。
静謐だが緊張感の張り詰めた空気感で、ホラー映画っぽく描かれたダークファンタジー。
同じストーリーでも見せ方をちょっと変えるだけでグリム童話のようなダークな童話になりそう。
どういう結末になるのかとワクワクしながら観ていたら「そう来たか…」という感じ。それまでの世界観とは違う展開なので確かに意外ではありましたが、正直なことを言えば好みじゃない。張られていた伏線はちゃんと回収しているし、辻褄は合っているけれど、むしろ安易に見えちゃったんですよね…。
出来が悪いとは思いませんし、むしろ高評価なのも大いに納得できるのですが、期待値が高かった分、自分の期待していた方向性とは違うオチにちょっとガッカリしたというだけです。